第44話:意外な接触
正行・直樹・聖羅の上に立つ、巨大な企業・無明グループのトップである無明ゲンドウ。
彼との出会いは、美鈴達に色々考えさせる結果を生み出していた。
「とりあえずは敵…とまではいかないかもしれないけど、そういう風に思っていた方がいいのか?」
今の時間は昼休み。
昼食も終え、美鈴達三人は集まって話し合いをしていた。
「私には…悪い人達には見えないけど…あの女の子、私の事回復させてくれたんでしょ」
そう言う美鈴。
「でもな…」
ちょっと不安な顔を見せる清二。
「奴らが本当の敵であるならば、あの場に転送された時点で私達はやられている…それに、正行はともかく…あの兄妹からは敵対心は感じられなかったからな」
そう考える冷子。
「でも、あいつらは美鈴をあんな目に合わせたんだ…仲良くやっていくってわけにはいかないだろ」
清二がそう言うと
「これからの状況次第だ…巨大な無明グループに隠れるような形でES能力の事で動いていた。ESに関わることで何かが起きようとしているのなら、私達も無関係ではない…」
そう告げる冷子。
「少し難しいですね…」
ちょっと混乱してきている美鈴。
「とりあえずは美鈴をあまり一人にしないようにしていこうぜ」
「そうだな…さすがにあんなのをまたされたのでは、こちらが持たないからな」
「…何だかすみません…」
とりあえず謝っておく美鈴。
そんな訳で、今日の談義も終わり午後の授業も問題なく放課後を迎えた。
「あれ?冷子さんは?」
「何か、先生に呼ばれて職員室にいる。でも、何で冷子が呼ばれるんだ?成績は優秀だしな」
考えていてもわからないので、清二は美鈴と一緒に先に下校しようとしていた。
だが、そんな時
「美鈴、清二…」
教室を出ようとした二人の前に姿を見せた冷子。
「うわっと…どうしたんだ冷子…走ってきたみたいに…」
「帰ろうとしていた所悪いが…少し付き合ってくれないか?」
わけがわからないまま、冷子についていく美鈴と清二。
「向かってるのって…職員室?」
「何なんだろうな…」
そして、職員室の扉の前に到着した所で冷子が二人の方を向いた。
「何があっても騒いだりはするなよ、特に清二…」
「騒ぐなって…何があるんだよ、職員室に…」
興味を持ちながらも、何か不安がよぎっている清二。
「私は…大丈夫です」
少し気持ちが傾いてはいたが、そう答えきった美鈴。
「じゃあ、入るぞ」
冷子を先頭に職員室に入る三人。
「あっ!」
「!?」
入るなりそれなりのリアクションを見せる美鈴と清二。
「…どういうことだよ…冷子…」
「だから騒ぐなと言っている…私もこれからその理由を聞く所だ…」
そう言って前を見る冷子。
そんな三人の前には、あの無明ゲンドウの孫娘・無明聖羅が椅子に座っていたのだった。
こんな所での話も何なので、すでにみんなが下校して静かになった教室へと移動した四人。
「今日転入の手続きをしに来たらしい…私と清二、美鈴の名前を知っていたため…とりあえず私が先生に呼ばれて…と、言う訳だ…先生からは家の方まで見送ってほしいと頼まれた」
そう説明する冷子。
「ちょっと待てよ冷子。転入って言うのにも驚いてるけど…なんで…」
聖羅の顔を見ながらそう言う清二。
「すみません…お爺様の計らいという事で…この学校に通う事になりました」
そう告げた聖羅。
「そっか、明日から一緒にお勉強とかするんだね」
こんな風な雰囲気の事態ながらも、いつもと変わらない心でいる美鈴。
「私としては別にかまわない。無明ゲンドウの指示とはいえ美鈴を助けたのだからな…だが、どんな思惑があるのか…それだけは聞きたいものだな」
そう言う冷子。
「お爺様の話では…時が来ればこちらが動く…だが、それと同じくして動き出す物たちがいる…と」
そう告げた聖羅。
「それって何なんだよ…」
「単純に言いますと…敵…です」
「…確かにシンプルだな…それは私達にとっても敵、ということか?」
冷子が尋ねると
「貴方達…というよりは、ES能力者を対象として…ですね」
「…この街に能力者が集まっているのにも関係してるのか」
清二がそう言うと頷いた聖羅。
「大丈夫だよ聖羅ちゃん、私頑張るから」
何故か自信たっぷりにそう言う美鈴。
「美鈴さんなら問題なくできるはずです。この前の一件で、貴方は力のきっかけを手にしたはずですから」
「きっかけ?」
聖羅の言葉に疑問詞を浮かばせる美鈴。
「お爺様の精霊によって美鈴さんの潜在的なES能力が表近くに引っ張り出されているはずです…後は、美鈴さんの頑張りによりますが…」
そう説明する聖羅。
「…私達と戦わせる事…それは必要だったのか?」
「お爺様がどのあたりまでを望んでいたのかはわかりません…お爺様は精霊で完全に美鈴さんを支配したわけではありませんでしたから」
そう言う聖羅。
「…まだ詳しい話が聞けそうだが…これ以上聞いていると遅くなりそうだな…清二と美鈴はこのまま下校してくれ。私は聖羅を送っていく」
そう告げる冷子。
「それなら無用だ」
と、窓の方から声がしたので見て見るといきなり直樹が姿を現したのだった。
「お前!」
「…戦いに来たわけじゃない。聖羅を迎えに来ただけだ」
とりあえず美鈴が窓を開けて、直樹を教室の中に入れた。
「…」
何故か直樹を睨みつけている清二。
「とりあえずは聖羅には禁止にしている言動は一切ない。知っている事ならちゃんと答えてくれたはずだが…」
「確かにな…この前の事については一応納得はした…まだ検討中な考えもあるが…」
「お爺様の指示だから聖羅はお前達に預けておく…だが、聖羅は戦えるわけじゃない…それを覚えておいてくれ」
「お兄様…私だって…」
「帰るぞ、聖羅」
そう言うと、美鈴達を残して先に行ってしまった直樹と聖羅。
「完全に置いていかれてるよな俺達」
そう告げる清二。
「どうやら守らなければならない人が一人増えたな…だが、これで一歩以上近付けるだろう…真実についてな」
窓の外を見ながらそう告げる冷子なのであった。