第42話:風の幻影(2)
「必ずお前を助ける」
清二はそう告げると、自分の周囲に水を発生させ自分を大きく包ませた。
「ダメだよ清二君。そんなの風で全て切り裂かれるよ」
そう言い放つ美鈴。
「だから・・・こうするのさ」
と、包んだ水が回転し渦を形成させていた。
「・・・」
じっと清二を見ている美鈴。
そして、清二の精霊・アクルも清二を信じて出番を待っていた。
「清二君面白いね・・・じゃあ、私の相手清二君にしてあげる」
冷子をターゲットにしていた美鈴であったが、清二の行動を見て興味が出たのかターゲットを清二に変更した。
(はっきり言えばこんな渦じゃ美鈴の風には通用しないと思うけどな・・・)
そんなことを考えていた清二。
「じゃあ、行くぜ!」
そう告げると突っ込んでいく清二。
「負けないよ」
自信があるからなのか、笑みを浮かべて竜巻の中心で構えている美鈴。
そして、清二が美鈴の竜巻にぶつかろうとした時何かが横から竜巻にぶつかってきたのであった。
「なっ・・・アクル!」
アクルの予想外の行動に驚く清二。
「清二の事は信じてる。でもやっぱり僕は清二のパートナーだから。清二に危険なことをさせたくない」
そう告げたアクル。
「でも・・・」
「心を落ち着かせて・・・僕がやろうとした事を君がやるんだ」
パートナーだからなのか、アクルの気持ちが清二の中に入り込んできていた。
「・・・わかった。美鈴は俺が助ける。たがら道を開いてくれ」
「了解した、清二!」
そう言うと水の力を全開にするアクル。
そしてその瞬間の力で、竜巻の壁に穴を開けた。
「このまま・・・」
と、再び水をまとい回転させると弾丸のように飛び出しエアルに激突したアクル。
「エアル!」
その直後竜巻は消えていき、同時に清二が水をまとい飛び込んできた。
「少し我慢してくれよな、美鈴」
清二はそう言うと自分の周囲の水を美鈴に放った。
「こんなの・・・!」
風の刃で粉砕しようとするが、形を成さない水は美鈴の攻撃を全て受け流していた。
そして美鈴を完全に包み込んでいく水。
「ぅっ・・・」
「すまない美鈴・・・だがこれで・・・アクル!」
と、いつの間にかアクルが清二の側にやって来ていた。
「おいおい・・・あんたの仲間やりすぎじゃないのか?」
戦いながら冷子にそう言う正行。
「私達は仲間を信頼している。だからこそ私も気にすることなくお前を相手に出来ると言うわけだ」
清二達の戦いの最中、幾度も氷の雷の力が激しくぶつかり合っていた。
「上手く・・・動けなくても・・・」
「清二!」
アクルは美鈴から強い能力の反応を感じ取っていた。
すると次の瞬間には、美鈴が全身から風の衝撃波を放ち周囲の水を吹き飛ばしたのだった。
「いつもの美鈴なら、まだこんなこと出来ないのにな・・・と、アクル・・・」
「問題ないよ、清二。仕組みはわかったよ」
そう告げたアクル。
「何の話をしてるの?私もエアルもまだまだなんだよ」
そう告げる美鈴の前に姿を見せるエアル。
「大変だろうけどエアルをおさえてほしい」
「精霊の相手は精霊がする。大丈夫だ、清二」
そう言うアクル。
「行くぜ!」
先手をとる清二とアクル。
「私たちだって・・・っ・・・」
と、突然美鈴の能力のバランスが乱れ始め上手く風の刃を形成できずにいた。
「チャンスだ、アクル」
一気にエアルの懐に潜り込み、自身と共に水の膜にエアルを取り込むアクル。
(最後の一撃だ・・・決めるんだ、清二)
そう願うアクル。
「最後の一撃・・・大きな力は必要ない・・・美鈴を助けられるだけの力を・・・」
と、清二は小さく水の力を発動させると右手の人差し指に集めて針のように細く伸ばした。
そして、未だ動きが不安定な美鈴の真横を通りすぎる瞬間、美鈴につけられていたアクセサリーを貫いたのであった。