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鬼人の國 -風の英雄譚-  作者: 清涼飲料水
第4章「少年期 ウールヴヘジン編」
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第46話「好機」

 

 ガルとの戦闘を終えた俺は、その場で息を吐く。

 あの少女から借りた力を、使い過ぎた。

 マズいな、少し頭がフラフラしている。

 だが、ここで俺が戦場から離れるわけにはいかない。


「ヒバリ、いるんだろう?」


 俺はヒバリがいると何故か確信していた。

 彼女なら、そこにいると。


「はっ、私ならここに!」

「やっぱりいたか」

「申し訳ございません、アラシ様を疑ったわけではでは無いのですが……」

「いや、構わない」


 途中、完全に諦めかけたしな。

 今までの経験がなければ、俺は死んでいただろう。

 それにしても、やはり名前持ちは強力だな……。


「ヒバリ、戦況は?」

「ハッ、防衛班はアテラが率いて、三班と合同になっています。 シコロ殿達のおかけで、こちらがやや優勢かと」

「そうか、それなら……どうした?」


 ヒバリが、何やら変な表情をしている。

 まるで、初めて見る生物を見るような……。


「何か、俺がおかしいか?」

「いや、その、アラシ様の話し方が随分変わったような……」

「えっ!?」


 そうだ、アドレナリンが出すぎたのか、つい口調が荒くなっている。

 まずいな、素が出てしまっていたか。


「いやいや、つい声を荒げてしまいましたね、僕としたことが」

「私はそのままでも、よろしかったのですが……」


 勘弁してくれ、お前らにあんな偉そうに喋れないよ。

 それに、そんなキャラじゃない。


「それにしても、あの鬼は強敵でしたな」

「ああ、ガル、いやルー=ガルーだったな。 奴は、強者でしたよ」

「あれほどの鬼、そうそうおりませぬ」


 おっと、そんな話をペラペラ喋っている場合じゃない。

 俺は、消え入りそうな意識を集中させる。


「見つけたか?」

「え、どういう事でしょうか……?」


 フラフラの頭に、声が鳴り響く。


(大将が居なくなった今なら、行けるよアラシ)

「そうか、見つかったか」

「あの〜、アラシ様?」


 よし、この場はヒバリに任せよう。

 そう思い、俺は彼女に向かって指示を出す。

 彼女なら、この一言で理解できるはずだ。


「ヒバリ、この場は任せました」

「……! 承知、このヒバリが全身全霊をかけて、承りました!!」


 その言葉を受け、俺は足に風を起こす。

 このまま、突っ切る。


「はあっ!」

「お気をつけて、アラシ様!!」


 目指すは、奴らの総大将。

 ここで、叩かなくては、終わりはない。


「さて、どうすっかな……」


 ただ真っ直ぐに、走って考える。

 おそらくこのまま行けば、この場にいる最強の鬼にぶつかるだろう。


「おそらく、ガル以上……」


 最低でも、ガルクラスの鬼人。

 一騎討ちなら、勝ち目はあるだろうか。

 だがそれにプラス、名前持ちがいる場合は、かなり厳しいだろう。


「だけど、やるしか……!!」


 そんな事を考えていると。

 やはり、来た。


「名前持ちを一体、まあ合格点だな」


 彼なら、このタイミングを逃すわけがないと、思っていた。

 俺の父さん、天城 総一郎なら。


「アラシ、お前も風を読んだか」

「ええ、教えてくれました」

「そうか、よく理解した……流石は俺の息子だ」


 彼に言われ、俺は顔のニヤけが収まりそうにない。

 それを見抜かれ、父さんは俺をこづく。


「いってぇ!」

「油断するな、アラシ」

「殴ることないじゃないですかあ!」

「任務が無事終わったら、いくらでも褒めてやる。

 それまで、気は抜くな」

「……分かりましたよ」


 そう答える俺に、彼は満足そうに頷く。

 そして、俺に尋ねる。


「アラシ、この先にいるのはなんだ?」

「おそらく、今回の鬼で一番強いかと」

「ああ、おそらくこの先にいるのがウールヴヘジンだろうな」


 やはり、父さんもこの先にいる鬼が、ウールヴヘジンだと判断している。

 なら、やはりガルよりも強敵だろう。


「だがアラシ、その場にいる鬼は分かるか?」

「いえ、一人しか……」

「もう一体いる、それも最低でも能力持ちクラスだ」

「やはり……!?」


 やっぱり、もう一人いる。

 それも、能力持ちクラスか。


「お前は、そっちを相手しろ。 ……時間稼ぎで構わん」

「はい、なら父さんは……」

「俺は、ウールヴヘジンをやる」


 そう話していると、ついに辿り着く。

 砦からは遠く、先の戦場からも離れた場所に、ヤツらはいた。


「……!? ウル様、ニンゲンが!?」

「大丈夫よ、ライカ」


 そこには、二人の鬼。

 一人は、人間に近い見た目をした、女。

 鋭い爪と、牙以外には、特に狼のような要素は見当たらない。


「アラシ、()()だ」

「ええ、分かりますよ……」


 だが、その体からは力を抑えられていない。

 見ただけで分かる、他の強者と同じ物を持っていた。


「ライカ、大きい人間は私がやるわ。 あなたは、小さい方をお願い」

「はい、分かりました」


 ライカ、と呼ばれる鬼がおそらくもう一体の鬼だろう。

 ウルと呼ばれる鬼の力に隠れて、気づかなかった。

 それに、名前持ちのような力は見た目からは感じられない。

 見た目は人に近く、彼女のように爪などが生えているだけだ。


「アラシ、手はず通りにやる」

「ええ、任せて下さい」


 俺は父さんに言われ、ライカと呼ばれる鬼を相手する。


「カァッ!」

「ふっ!」


 鬼の攻撃をかわし、その場から離れる。

 なんだかコイツ、変だな。

 そう思いながら、俺は父さん達から距離を取る。


「逃げるな、卑怯者!!」

「何言ってんだ、お前は!?」



 ライカと呼ばれる鬼は、どこか今までの鬼とは別の印象を受けた。


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