表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼人の國 -風の英雄譚-  作者: 清涼飲料水
第4章「少年期 ウールヴヘジン編」
49/65

第42話「開戦」

 

 荒野の真ん中に、四人の鬼、狼男の姿があった。

 その後ろには、大勢の鬼の群れ。

 その場にいる鬼の全てが、この四人の狼男に従っているのだ。


「本当に、オレが大将でいいんだな、ウル?」

「ええ、私はそれで構わないわ、ガル」


 その中でも特に目立つ、艶やかな毛並みの二人の鬼。

 一人は体躯の大きな、いかにもな狼男。

 もう一人は、人と比べてもあまり変わらない大きさの見た目をしている。

 その姿は、普通の大人の女性とあまり変わらない。

 だが、その端々には、狼の特徴が見え隠れしている。


「貴様、ウル様にそんな口を……!」


 ガルと呼ばれた大きな狼男に、残りの二人のうち、一人が口を挟む。

 彼もまた、およそ狼男には見えづらい見た目をしている。


「黙ってろ、ザコが」

「なんだと?」

「いいから、ライカ」


 そうウルと呼ばれる鬼に言われ、彼は口をつぐむ。

 それを見て、最後の一人は鼻をふんと鳴らした。


「おーし、よく聞けお前ら!」


 そうして、ガルと呼ばれる鬼が立ち上がる。

 そして、後ろの鬼の集団に向かって、声を荒げて言った。


「もうすぐしたら、言ってた場所に乗り込む!!

 中の奴らは、殴って、引き裂いて、殺せや!」


 下品な笑いをあげる彼に、鬼達は声を上げる。


「オレ達の本能のままに、蹂躙しろ!

 人間共は、オレ達の食料(エサ)なんだからよ!」


 彼が叫んでいる横で、ウルと呼ばれる狼女は笑っていた。

 これから、どんな事が起こるのか、彼は知らないのだと。


 ---


「眠いっスね……」

「静かにしろ、長谷」

「しょうがないですよ、この夜中じゃあ」


 俺達は、寝ていた所を叩き起こされたのだ。

 その理由は、すぐに判明したが。


「どうやら、鬼が近づいて来たみたいですね」

「ようやくですな」

「ええ、砦からは三人とも、まだ出ないように」


 俺がそう言うと、三人は頷き、息を殺す。

 まずいな、まだ夜明け前だ。

 こう暗いと、鬼の場所が特定できないかもしれない。


「鬼の方が、夜目が効きますからね、マズイかもしれませんよ」

「かなり、慎重な奴がリーダーみたいだな」

「とはいえ、皆さんまずは手はず通りに行きます」

「ああ、まずは待機、だよな?」


 そう長谷に言われ、俺は頷く。

 まずは戦況を読みつつ、不利な場所に動く。

 そうしながら、鬼のリーダーを探すのだ。


「よし、じゃあ……」

「静かに、アラシ様」


 ヒバリに言われ、俺は口を閉じる。

 そして、耳をすまして気づいた。


「どうやら、始まったようですね」

「……ええ」


 鬼が、動き始めた。



 ---



 動きを開始した鬼を迎え撃つように、立ちはだかる二つの班。


「ポポポ、よろしく」

「ええ、油断なされぬように」


 防衛一班のリーダーは、鳩山。

 隣に立つは、防衛二班リーダーの金森。

 彼らの役割は、鬼を抑えつつ主力班に隙を突かせる。


「数だけの鬼、大したことはありませんよ」


 金森は、そう軽く口にする。

 そんな彼女に、鳩山は微笑みながら忠告する。


「ポ、やはり若いですなあ」

「年は関係ないでしょう」

「ポッポッポ、それは戦場で分かるでしょうぞ」

「ふん、減らず口を」


 鳩山と金森は、その場で振り向く。

 そして、やがて口にする。


「来ましたな」

「ええ、人にあだなす悪鬼共が」


 その数分後、戦場は動き出す。


 ---


「隊長、俺達はどうするんで?」

「どうもこうも、防衛班次第だね」


 主力第一班、リーダーはシコロ。

 サブリーダーに、板東。


「ああ、持ち堪えれますかねえ」

「彼次第だね」

「彼って、あのデカイ体の変な喋り方の?」

「ああ、金森だけでは厳しいね」


 そう言って、シコロは苦笑する。

 やはり、と板東もそれに続く。


「やっぱ、金森にリーダーは荷が重いですよ」

「それが総一郎の命だ、仕方ない」


 そう言って、二人はその時を待ち続ける。


 ---


「よろしくな、えっと、飛鳥だったか?」

「ええ、こちらこそ」


 主力第二班、リーダーは宇羅。

 サブリーダーに、飛鳥が続く。


「おお……」

「何だ、俺に何か付いてるか?」


 ジロジロと宇羅を見る飛鳥に、彼は疑問をぶつける。

 そう言われ、彼は笑って口を開く。


「いや、八咫鴉は噂通り持っているんだなあ、と思いまして」

「ああ、()()か」


 そう言って、宇羅は背中からある物を取り出す。


「鴉は、刀以外を扱うっていうあれ、本当だったんですね〜」

「俺の相棒はコイツ、ヌンチャクって言うんだ」

「これで、鬼を?」

「ああ、手っ取り早くぶん殴る!」

「あはは、それは凄いですね!」


 そう言って、二人は笑いを上げる。

 まるでこれから、戦場に向かうようには、見えなかった。


 ---


「さーて、俺はどうすっかなぁ」


 砦から少し離れた所で、一人の男が言葉をこぼす。

 その身には、すでに返り血がついていた。


「てか隠密班俺一人だけって、おかしくね?」


 佐伯はそう言って、鬼の死体を弄んでいた。


 ---


「そうか、奴ら動き出したか」

「ええ、そういえば天城様はどう動くんですか?」

「ん、俺か」


 現在砦に残っているのは、当主の総一郎。

 アラシの班、そして防衛三班のリーダーのアテラとそのメンバー達。


「俺は、基本動かん」

「ええ……」

「当たり前だ、俺は総大将だぞ、まあ戦況次第だな」

「そう言うものですか?」


 軽々しくそう呟く総一郎に、アテラは苦笑交じりに答える。


「ああ、本当は俺が出ないなら、それに越したことはないんだが……」

「まあ、そうですよねえ……」



 そう二人は、顔を合わせて語っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ