第34話「到着」
「……」
何だろうか、声がする。
誰の、声だろう。
「……シ」
ああ、誰だろうか。
もしかしたら、アイツかな?
「……アラシよ、聞きなさい」
ああ、やっぱりお前か。
何だよ、夢の中かこれ?
何しに来たんだお前、わざわざ予言でもしにきたか?
「これから行く所に君の、探し物がある」
……探し物?
何を言ってるんだよ、お前。
「僕からは、これだけしか伝える気はない……君は、どうするのか見せてもらうよ、一人の協力者として、ね」
おい、何を言ってるんだお前……おい!!
そこで、俺の意識は途切れた。
---
「……様!!」
また、声が聞こえる。
今度も、聞いたことのある声だ。
ていうか、この声の主はあの人だ。
「……アラシ様!!」
「……おはようございます、ヒバリ」
「アラシ様、お休みのところ申し訳ありませんが、お着きになりましたよ」
そう言われたので、ぼうっとした頭で先程の夢……白い少女が言った事は少し忘れて、周りを見回してみる。
今までこの世界で見てきた中で、間違いなく一番大きな門が目の前にあった。
「ここが、皇家の屋敷ですか……!?」
「ええ、王を護る五つの家系の長、皇家です」
ごくりと音を立てて、俺は唾を飲み込む。
そして、周りを再度見回してみると、ヒマそうに立っている父さんと目があった。
「アラシ、目覚めてすぐで悪いが、御館様のもとに挨拶に向かうぞ」
そう言われて、俺はすぐに姿勢を正して服装を整える。
「はい、行きましょう、父さん」
そう言って、俺とヒバリは父さんの後ろを付いて行く。
ちら、とヒバリの方を見ると何やら固まった表情をしながら動いている。
「どうかしましたか、ヒバリ?」
「いっ、いえいえ、このような場所に来るのはあまり無いもので……少し緊張をしているのです!」
「ああ、なるほど」
それもそうだな、この国で一番偉い人なんだろうしな。
ヒバリが緊張するのも、無理はないか。
そんなヒバリを見ていると、釣られて俺も緊張してくる。
「二人とも、そんな顔をしなくてもいい。 普段通りで構わん」
「そっ、そうですかね!?」
うーん、ヒバリはまだ駄目そうだな。
仕方ない、何かあったら父さんに頼る方向で行こうか。
そうこうしているうちに、門の前にまで着いてしまった。
門の前には、一人の青年が立っている。
不用心だな、こんな屋敷をたった一人で見張り番なんて。
「あー、ちょっと待ってくれます?」
青年は俺たちに声を掛けて、門の前で止める。
父さんが青年に対して、手紙を出しながら何やら話をしている。
「天城家当主、天城 総一郎だ。 連絡は行っているはずだが……」
「えっと……あ〜、来てましたわ! スンマセンね、天城様に失礼して!」
何やら軽い口調で、軽薄そうな笑みを浮かべている青年が、ちらりとこちらを見た。
すると、何かに気づいたように驚いた顔をした後。
「あっ!? 鷲宮センパイ!?」
ヒバリに、声を掛けてきた。
するとヒバリは、頭に?マークが付いたような顔をして、口を開く。
「えっと、どちら様だ?」
「だー、酷いっすよ!? 長谷ですよ長谷 涼ですよ!!」
名前を聞いて、ヒバリは納得が言ったような顔をした後、さらに口を開いた。
「長谷か、気づかんかったぞ! 久しぶりだな、訓練学校以来か?」
「そうっすねー、センパイはあまり変わってないっスね!!」
「そ、そうか……?」
どうやら、ヒバリの昔の知り合いらしい。
というか、こいつ中々のチャラ男だな……ヒバリはこんな奴とも知り合いだったのか。
「何してんのよ、このバカ犬!!」
「いってえ!?」
話をしていると、突然鎖が飛んで来て青年の頭に直撃した。
あれは、かなり痛いだろう。
食らった青年は、頭を抱えて蹲っている。
「天城様が今日来るって言ってたでしょうが!」
「だからって、今のあるぅ!?」
鎖の延長線上から、女性が歩いて来た。
そして俺たちの前で跪いて、頭を下げる。
「ご無礼をお許し下さい、私達は訓練学校を卒業してから、直ぐに戦場に出ていたものですから……」
「否、特に気にしていない。 それより、直ぐに頭を下げるな、門を守る兵士だろう?」
父さんは、頭を下げる女性に対してそう言葉を掛ける。
対して、その女性は父さんを真っ直ぐに見据え、口を開いた。
「仲間が無礼を働いた……今が、その時だと思いますゆえ、ご勘弁を」
「ふっ、そうか。 いい心構えだ、行く所が無くなったら天城の門を叩け」
「ハッ、お心遣い、感謝いたします」
答えに満足したのか、父さんは口を閉じて、ヒバリの顔を見やる。
「椋鳥、お前も久しぶりだな」
「……ええ、鷲宮先輩こそ、ご出世なさったそうで」
「よせ……毎日生きるのに必死だっただけだ」
彼女も、ヒバリの後輩なのだろう。
腰に刀を差して、腕には鎖が巻かれている。
なんだ、あの武器は……刀以外の武器を持っている人は、この世界では初めてだ。
そう思って、観察していると……。
「坊主、俺たちの武器は珍しいか?」
後ろから、声がした。
振り返って、そちらを見ると、長身の男が立っていた。
父さんより、少し高い身長で、髪は癖っ毛なのか散らかっている。
「いえ、初めてみる物だったので……」
「目をつける所が他とは違う、さすが時期当主ですね?」
「ふっ、俺の息子だからな……」
何故か、父さんがさも当然と言わんばかりに、ドヤ顔をしている。
「ハルさん、交代の時間遅くないっスかね?」
「黙ってなさいよ、あんたは」
なおも、言い合いをしている二人に対して、ハルさんと呼ばれる男は声をかける。
「二人とも、そろそろココを通さないと、隊長から怒られるんじゃないかな?」
「あー、そうっすねー」
「し、失礼しました!!」
そう言って、彼らは門を開ける。
そして、長谷が軽い口調で口を開きながら答える。
「それでは、天城様御一行、お通りになられまーす」
その言葉に続き、足を進める父さんが俺の方を向いて、口を開く。
「アラシ、門を通る時、違和感があるだろうが……気にせず通れ、分かったな?」
「……? はい、わかりました」
どういう意味だろうか、そう思ったが、とりあえず頷いておく。
そして、門を父さんに続いて通った時……ふと、違和感がした。
「……あれ?」
足を動かしているのに、前に進まない。
なんでだろう、もう一度足を動かす。
また、進まない。
「アラシ、気にするな」
そうしていると、父さんから声が掛かる。
なので、気にせずに前に進むために足を進める。
少しの間、続けているとやがて、足が前には動き始めた。
「あ、動いた」
「結界の一種だ、時間稼ぎくらいにはなるだろうな」
そういうことか、鬼が入らないように工夫を凝らしているのか。
「行くぞアラシ、ヒバリ。 少し、喋りすぎた。 御館様に詫びなくては」
「はい、総一郎様」
俺と、ヒバリは頷いて父さんに続いた。




