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鬼人の國 -風の英雄譚-  作者: 清涼飲料水
第2章「少年期 帯刀編」
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第25話「交戦」

 

「何だあ、まだガキじゃねえか……」


 目の前の赤い髪の鬼は、そう呟く。

 呆れたように、軽く一息つくように。


「紅炎、烈火を連れて逃げれるか?」

「無理だな、奴を斬るしか道はあるまい」


 目の前の、鬼を斬る。

 簡単に言っているんが、難しいだろう。

 髪に、赤くこびりついた血。

 そして、鬼が纏う雰囲気だけで自分より強いだろうことが分かる。


「……!?」

「アラシ、どうした?」

「変ですね、動きがありません」


 目の前の鬼は、その場から動きがない。

 間違いなく、烈火を守りながらでは全滅するだろう、強者。

 だが、俺は彼女を守ってみせる。

 今度こそ、目の届く範囲くらいは、守ってみせる。

 そう、固い決意を固める。

 なのに、やはり鬼は動かない。


「あー、どうすっかナ」


 やがて、重い腰を上げるようにこちらに目を向ける。

 そして、ついに動いた。


「まァ、殺してから考えるかな」


 次の瞬間、目の前に鬼がいた。

 ヤツは、右手に持っていた棍棒を振るうように横に薙ぐ。

 だが、俺は防御はしない。


「ぐおおっ!」


 何故なら、ヤツと俺の間に紅炎が入っている。

 彼は、鬼の棍棒を刀で受け止める。

 その時に、鬼に隙が生まれるのだ。

 それを見逃すことなく、俺は飛び込む。

 狙うは、首だ。


「天城流、一の型『疾風斬』!!」


 横に、必殺の一撃。

 その一太刀は、鬼の首に食い込む。

 そして、切断に―否、切断にまでは至らない。


「マズイッ!!」


 すかさず、左拳が飛んでくる。

 それをモロに喰らい、俺は吹っ飛んだあとに木に激突する。


「ぐはっ」


 背を打ち、息が出来なくなる。

 意識が飛びそうになるのを我慢し、すぐに立ち上がる。

 そうしていると、目の前に何かが飛んできた。


「うおおっ!?」


 紅炎だ。 紅炎が、吹っ飛ばされて飛んできた。

 彼にぶつかり、もう一度俺は木に激突する。


「痛い、紅炎」

「うぐ、すまん」


 一言詫びを入れると、すぐに目を鬼に向ける。

 奴はつまらなさそうに、あくびをしていた。

 ヤツは油断しきっている、そこを突ければまだ勝ち目はある。


「紅炎、貴方なら奴の首を切れますか?」

「いや、アラシの刀でも無理なら、俺の刀では到底無理だろう、ヤツの皮しか俺は切れていない」


 ヒバリが贈ってくれた刀なら、途中までは切断できた。

 だが、そこ止まりだ。

 ヤツの首を切断するまでは、至らない。


「アラシ、首を切れそうか?」

「タイミングさえ掴めれば、あと一本刀を貸して貰えますか?」

「ああ、頼む」


 紅炎から俺は一振りの刀を受け取る。

 硬いヤツの首を斬るには、あの技しかない。

 俺の今持っている、最高の技で勝負をかける。

 体力が残っている、今のうちに。


「アァ、どっちから死ぬか決まったカァ?」

「生憎と、まだ死ぬつもりはありませんので」

「行くぞ、アラシッ!!」


 紅炎が走り出す。

 それに続いて、俺も走り出す。


「おせェゾ!!」


 鬼が迎え撃つように、棍棒を振るう。

 まずは、俺がそれを受ける。

 二本の刀を使い、真正面から受け止める。

 すかさず、そのスキに紅炎が鬼の足を狙う。


「ムッ」


 嫌がるように、ヤツが後ずさる。

 それを逃さず、懐に飛び込む。


「ニの型、風車!!」


 縦に回転した二本の刀は、鬼の膝を切り裂くことに成功する。

 だが、まだ大したダメージは与えられない。


「何しやがる、テメェらァ!!」

「うおおっ!」


 棍棒を再度、振るってくる。

 だが、それも紅炎が受け止めようとする。

 紅炎はそれを受けて、体のバランスを崩す。

 それを見て鬼は笑いながら拳を振るう。

 だが、そうはさせない。


「おおおっ!!」


 無理やり紅炎と鬼の間に割り込み、左腕を斬りつける。

 それによって軌道がそれ、紅炎は狙ってきた拳をすんでの所で回避する。

 もう少しだ、あと少し、バランスを崩すことが出来れば。


「俺を、誰だと思ってやがル!!」

「知らねえよ!」


 棍棒を、さらにもう一度振るってくる。

 これまでより雑な、頭への一撃。

 これをもう一度防いで、次で決める。


「!?」

「あめェ!!」


 だが、違う事に気づく。

 棍棒を途中で止め、蹴りを放ってくる。

 しまった、避けることが出来ない。

 覚悟を決め、体を固める。


「クソッ、こんな所で……!?」

「アラシ、行けっ!!」


 だが、ソレに紅炎が割り込む。

 彼は刀を使い、蹴りを受け流そうとするが、失敗して直撃を受ける。


「死ね」

「舐めるな、帯刀を!」


 吹っ飛ぶと同時に、鬼の膝を紅炎は貫くことに成功する。

 それを受け、鬼が跪く。

 その瞬間を逃さず、俺はヤツに飛びかかる。


「これを、待っていた!!」

「チクショウがァ!!」


 ガラ空きの首に向かって、刀を横に薙ぐ。

 その刃は鬼の首に、食い込んだ。

 だが、これでは切断することまでは出来ないのだ。

 だが、今度は違う。

 もう一本の刀を振るおうとして、気づく。

 バランスを崩しながらも、棍棒を無理やり振るう鬼。


「しまっ!?」


 もう一本の刀で、それを受ける。

 鬼の一撃を受け流すことに成功するが、刀を手放してしまう。

 まずい、このままではもう二度とチャンスはないだろう。

 くそっ、紅炎も近くには、いない。

 どうする事も、出来ない……!


「アラシ、コレを使いなさい!!」


 空中に、刀が放られる。

 先ほどの声を聞いて、声の主がいるであろう、後ろを振り向いた。

 そこには、彼女がいた。

 赤い髪をたなびかせ、凛と立っている帯刀 烈火がそこに。


「ありがとう、烈火」


 空中でそれを受け取り、刃を振り抜く。

 狙うは、首に食い込んでいるもう一本の刀。


「四の型、『断空』」

「ガアァッ!!」


 止まっていた刀をもう一刀で押し込み、鬼の首を切断する。

 鬼の首が宙を舞い、目の前に落ちた。

 俺たちは、その日鬼と戦い、そして生き残った。

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