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鬼人の國 -風の英雄譚-  作者: 清涼飲料水
第1章 「幼年期」
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第1話 「失われた世界」

 

 眼が覚めると、女性が俺の顔を覗き込んでいた。

 透き通るような黒い髪、すっとした鼻に綺麗な瞳。

 間違いなく、美女と呼ばれる者だった。


(ここは病院か?)


 そう思い、少し首を動かして、その女性の隣を見る。

 そこには一人の男がいた。

 黒い帽子を被り、黒い軍服のような服装に身を包んでいる。


「よかった…お前まで死んでしまったらと思うと…」


 男は、そう言いながら、目の前の俺を抱きしめる。

 なんだこいつは、そう言おうとしながら気づいた。

 体がうまく動かせない。

 なんだこれは。

 事故か何かの後遺症か?

 そう思ったとき、目で自分の体を見た。


 小さい。

 見るからに小さいのだ。


「あの、ここはどこですか?」


 俺がそう聞くと、彼は絶句していた。


「ああそうか、鬼の襲撃のせいで記憶が…」

「旦那様、まだ嵐様は小さいです、ゆっくりと体と心を休ませましょう」

「ああ、そうだな…今は生きていてくれるだけで十分だな」


 そう言われた俺はまた、眠くなってきて眠りについた。



 ---



 俺が目覚めてから、1ヶ月がたった。

 そしてようやく飲み込めてきたのだ。

 俺は転生したのだ。

 この世界に。

 最初はビックリしていたのだが、少しずつ受け入れるしかなくなったので現在は普通に生活している。


 そして自分がどんな人物なのか、少しずつ分かった。

 どうやら俺は、少しばかりデカイ家の息子らしい。

 現在5歳で、天城(あまぎ) (あらし)という少年らしいのだ。


「どうしました、嵐様」


 話しかけてきたのは、どうやら俺の従者との事らしい、鷲宮(わしみや) 雲雀(ひばり)さんだ。


「いえ、なんでもありません」


 俺がそう言うと、そうですかと言い、ヒバリはまた無口になる。

 この1ヶ月で俺は疑問になったことがある。

 ヒバリの格好は俺の父らしい人と同じ軍服を着ている。

 気になったので聞いて見ることにする。


「ヒバリさん、なぜそのような格好なんですか?」


 俺がそう聞くと、ヒバリさんは怪訝そうな顔で答える。


「嵐様、ヒバリと呼び捨てで構いませぬ」


 そう言われ、俺は言い直してもう一度。


「ヒバリはなぜ軍服を着ているんですか?」


 そう言った時にヒバリはキリッとした表情で呟いた。


「我々は鬼狩りの一族ですから」


 そう言って、優しそうな顔をして、俺の前で続ける。


「総一郎様に、話をしてもらいましょうか」



 ---



 俺は、ヒバリに連れられて父親の離れに向かう。

 その途中の庭で信じられない光景を見た。

 父親が袴姿で棒を振っている。


『刀』だ。

 刀を振っているのだ。

 そう見ていると、父親は振り向いた。


「おお、嵐…どうしたのだ?」


 ビックリした表情だったが…すぐに嬉しそうに笑顔になった。

 その父にヒバリはこう言った。


「総一郎様から、鬼狩りの一族の話をしてあげて欲しいのです」


 父は、しばらくしてから頷いた。



 ---



 父親の離れに入り、ヒバリは部屋の隅に立っている。

 不思議に思っていると、父は話を始めた。


「嵐よ、我々は代々鬼狩りの一族なのだ」

「えっと、どう言うことですか?」


 俺がそう言うと、父は続ける。


「一度、世界は滅びたのだ」


 …は?

 何言ってんだこいつ?


「今我々が住んでいるのは第1首都『東京』、我々の先祖が奪還した場所だ」


 世界が滅びた?

 第1首都?

 混乱している、意味が分からない。


「私はな、その首都を奪還した一族の子孫であり『天城』家第9代目当主なのだ」


 父の話は半分以上が理解できなかった。



 ---



 俺が呆然としていると、父は話を止めてまた続きは今度にしようと話を終えた。

 ヒバリは俺と共に歩いて部屋まで連れて行ってくれた。


「嵐様、少しショックを受けたでしょうが…我々は負けてはいないのです」


 別の事にショックを受けていると勘違いしているヒバリをよそに、俺は考えていた。


(えらい世界に転生しちまったな…)


 鬼に支配されてた世界…化け物がいるんだろうか。

 第1首都ってことは第2首都とかもあるんだろうか。

 そんなことを考えて、1日を終えた。



 ---



 朝早く俺は、父親の離れの近くの庭で人を待っていた。

 その人物は俺に気づくと、声をかけてきた。


「嵐…どうした?」


 父だ。

 不安そうに俺へ声を掛けてきた。

 そんな父に俺は発言する。


「父さん、僕に戦う術を教えて下さい」


 俺は、この世界で戦う道を選んだ。

 見た感じ俺がこの一族の長男っぽいし、いつかは鬼と戦うことをしなければいけない時が来るだろう。

 そんな時に瞬殺されるような雑魚だったら一族も困るだろう。

 それに、もう人を守れないのはゴメンだ。


「俺は、お前がもう闘う道を捨てたのかと思っていたが…違ったんだな」

「父さん、僕はもう目の前で何もできないのは嫌なだけなんです」

「お前…記憶が?」


 なんだ?

 どうしたのか、父は不安そうな顔をする。


「全部は思い出してないようだな」


 ほっとしたような顔をして、俺に向き直る。


「分かった、だが俺は一族の当主として忙しい立場にある…当分はヒバリをお前の教育係に任命する」


 どうやら、ヒバリさんを俺の育成係にするらしい。

 あの人、剣とか教えれるんだろうか。


「わかりました、では僕はこれで」


 俺はそれだけ言って、自室に戻ろうとした時ー


「嵐!」


 父が呼び止める。


「天城家の男なら、ただ強い人間にはなるな…国を守るべき一族の誇りに誓い、強くなれ」


 そう言って、父は部屋に戻って行った。


 俺は強くなる、この一度失われた世界で…今度こそ、誰かを守れるくらいに。



 ---



 ちなみに、部屋に戻ったらヒバリさんに道着に着替えさせられて、修行と言ってボコボコにされた。

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