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鬼人の國 -風の英雄譚-  作者: 清涼飲料水
第2章「少年期 帯刀編」
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第14話「彼女との出会い」

 

 扉を蹴破って、彼女はそこに立っていた。


 名は帯刀 烈火(たてわき れっか)

 赤い髪をショートカットにして、きつい印象を受ける三白眼。

 腰には木剣の他に、真剣であろう刀を差している。

 全体で見た時の、俺の感想は将来美人になることは間違いないだろう、といった感想しか出なかった。


 そんな彼女は、俺の方を向いて口を開いている。


「お父様、そいつ誰ですか?」


 先ほどよりも、口調は丁寧になっている。

 いや、なっているかは分からない。

 なぜなら、彼女はイライラした表情をしているからだ。

 そんな彼女に、父親であろう同じ赤い髪の毛の青年は、彼女に説明を始めた。


「烈火、こちらの少年はアラシ君だ、屋敷に滞在してもらう事になっている、仲良くするように」

「どうも、天城 嵐です、よろしくお願いします」


 先に挨拶をする。

 こういうのは、先に済ませてしまうに限る。

 後にすればするほど、しにくくなってしまうからな。

 さて、彼女はどうだろうか。

 そう思って、彼女の顔を見ると彼女はキッと俺を見た後に口を開く。


「そうですか、私は帯刀 烈火……よろしくお願いします、天城様」

「いえいえ、こちらこそ」


 そして、俺の腰にある武器を見て、ニヤリとしてもう一度口を開いた。


「天城様、剣術の心得がおありなのですか?」

「ええ、まあ……多少は、ですが」

「なら話は早いですね!」


 何が早いのだろうか。

 そう思っていると、彼女は青年の方を見て口を開いた。


「お父様、アラシ様の剣の腕前を見せてもらってもよろしいでしょうか?」


 おお、腕試しか。

 なるほど、よそ者などすぐに追い出してみせると、父親に実力で言っているのだな。

 俺としては願ったり叶ったりだ。

 この世界の他の分家の実力が知れる。

 そう思って、青年の方を見てみる。

 彼はまた苦笑しながら、俺を見て言った。


「烈火は気が強いんだ、すまないね」

「いえ、僕は構いませんので」

「へえ……なら、受けてくれるんだね?」

「はい、木剣でなら、ですが」

「それでいいわよ、行きましょうか」


 そう言って、彼女は踵を返した。

 付いて来い、ということか。


「じゃあ、僕らも行こうか」


 青年と玄道も付いてくるということだった。


 ---


 彼女が選んだ場所は、道場のような訓練場だった。

 畳で出来た、まさに訓練場。

 そこに彼女は、一人で立っている。


「アラシ君、大丈夫なのかい?」


 ボーっと立っていると、玄樹郎が心配そうに尋ねてくる。


「大丈夫なのか、とは?」

「ああ見えて烈火は強いよ、兄ほどではないが、彼女は帯刀家の血筋だからね」

「もしダメそうなら、止めてくださいね」

「はは、わかったよ」


 訓練場の畳の上に入ろうとした時に、男性の方に止められる。

 彼は怖い顔をしながら言った。


「この訓練、帯刀 玄道が見届ける、二人とも異論は?」

「あたしはないです!」

「僕も、特には」

「ふむ、わかった!」


 そう言って、彼は中央に陣取った。

 中央と言っても、少し離れている位置だ。

 そんなところに立って、彼は審判をしてくれる。

 いざとなれば彼が止めに入ってくれるだろう、それで少し安心感がでてきた。


「あんた、なにその余裕そうな表情」


 おっと、そんな顔をしていたのがバレてしまった。

 隠さねば、なんて言おうか。


「いえ、決して油断などはしてませんよ」

「ふうん、そんなのも今のうちよ?」

「はい、よろしくお願いします」


 そして、中央に構えてから男性の声で訓練は開始となった。


「両者中央にて……始めい!!」


 ゴングが頭の中で鳴り響く。

 その瞬間、烈火は猛スピードでこっちに向かってきた。

 そんな彼女を、俺は迎え撃つ。

 彼女は左上段の構え、対する俺は中段の構え。


「ゼェアッ!」

「ふっ!」


 彼女は、勢いよく木剣を振り下ろす。

 父さんやヒバリに比べると、遅い。

 だが、俺はギリギリの紙一重でそれをかわす。

 そして、その要領で反転して距離を取る。


「ふん、避けるのは上手いみたいね!」

「いやあ、まぐれかと」

「アンタ、ムカつくわね」


 彼女の一撃は鋭い。

 だが、避けられないほどではない。

 問題は、その後だ。

 彼女は、ガサツそうに見えてその実、木剣を振るった後の姿勢はあまりスキが無い。

 よっぽど鍛えられているのだろう。

 なるほど、自信は実力に裏打ちされたものだろう。


 その後数合、彼女が仕掛けてくるが俺はその太刀を全て見切った。

 彼女の木剣は、空を切る。

 だが、やはりスキは無い。

 そんな事を続けていると、彼女はイライラしていた。


「打ちあう気もないなら、意味ないわよ!」


 痺れを切らして、彼女はそう叫んでいる。

 うむ、そろそろこちらから仕掛けるべき時だな。

 よし、と俺は地面を踏んで前方に飛ぼうとした時、その時。


「ふむ、なにやら珍しい客人が居ますな」


 扉の方から声がした。

 目の前の少女、烈火がそちらを向いたので警戒しつつ俺もそちらを確認する。

 すると、そこには居た。


 他の帯刀家の者と同じ赤い髪を持ち、しっかりとした目力をしている。

 腰には烈火、彼女と同じように二本の刀を下げている。

 そんな彼は、俺を一瞥してから言った。


「お初にお目にかかります、帯刀家が次期当主、玄樹郎の長男の帯刀 紅炎(たてわき こうえん)と申します、以後お見知りおきを」



 それが後の帯刀家当主、帯刀 紅炎との初めての出会いだった。

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