プロローグ
世界が誕生してから現在、驚くほど平和になった。
だが、それは幾度となく繰り返されてきた強者の闘いの歴史。
その強者の屍の上に、また別の強者が立っているに過ぎないのだ。
「例えば、この世界の話をしようか」
この世界には、人々から現在、神と呼ばれる生き物しか存在しなかった。
だけど、今は人間と呼ばれる生き物は数え切れないくらいに増えている。
「それは、人間を育てた神がいたからなんだよ」
現在、その神はこの世界には存在しない。
そんな危険な人物は、世界にいてはならないから。
「そんな理由で、彼は追放された」
だがその人物は、とても優れた人材だった。
実は彼が育て上げた人間は、彼の命令にだけ従った。
「神に育てられた人間。 それは、もはや神に近い存在だった」
そんな人間は、育ての親を追放した神達を、決して許しはしなかった。
成長し、力をつけ過ぎた人間は神と同等の力、そして権利を持っていた。
「だけど、私達も腐っても神。 たかが一人に、全滅はされまいよ」
それは人間の行った、初めての戦争。
その戦争で、神は半数以上が姿を失った。
それでもなんとか、神はその戦争に勝利し、彼らの世界を守ったのだ。
「だけど、それは始まりに過ぎなかった」
始まりの人間は、すでに子供を作っていた。
誰が、いつ、産み出したのかは分からない。
「だが、そんな人間の子供に神は手を下さなかった」
怖かったのだ。
半数以上の同族が体を失い、魂のみになった姿を見て。
神に初めて訪れた、恐怖の種。
「やがてそれは芽吹き、世界中に人間は溢れ返る」
それは、問題を先送りにしているだけとも思わずにね。
その問題は、代を変えて、やがて続いている。
そのツケを払う時が、ついに来たのだ。
「さて、私は出掛けるとしようか」
神々を代表して、その男は立つ。
ノアの箱船は、必要ない。
何故なら、選別は、他でもない我ら自身が行うのだから。
「ちなみに私は、もうここに戻るつもりはないよ」
そう呟き、男は扉を開けて言い放った。
終わりを求めて、旅立って行く。
「さあ……私を終わらせてくれる者は、現れるだろうか」
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俺は、17歳。 住所は大阪で現在は高校生。
普通に生きて適当な高校に入り、やる気もなく生きてきた。
今日も友人達と普段となんら変わらない日常を過ごしながら、何をしようかと考えていた。
そして、帰ろうとして下駄箱を開けた時に気づいた。
手紙が入っているのだ。
白い封筒に、封がされてある。
俺は友人達を先に行かせて1人で手紙を開ける。
そこには放課後屋上で待ってますと書かれてあった。
俺は歩きながら考えた。
友人のイタズラではないだろうか?
いや、クラスの女子かもしれない。
色々考えながらも、俺は少し気分が上がっていた。
これが本物なら告白されるかもしれないという気分はかなりドキドキした。
そう考えると、自然と足が早くなった。
結論から言うと、告白とは違ったのだが。
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俺は、今屋上の扉の前で立っている。
この先に女の子が居るかもしれないのだ、緊張はするだろう。
ドキドキしつつ、その時俺に疑問が湧いてきた。
あれ?
そもそも屋上がなんで開いてるんだ。
そもそも屋上は普段締め切られている。
人がいるはずがないのだ。
少しやめたほうがいいかもしれないと思いつつも、好奇心のほうが勝ったのだ。
俺は、ドアノブに手を掛ける。
少しの抵抗を感じるも、鍵はかかっていない。
俺は扉を開けたて中に入った。
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屋上に入り、目を疑った。
そこには、目の前のフェンスがこじ開けられていた。
そしてその先に、少女がいたのだ。
今にも、飛び降りてしまいそうな状態だ。
その少女は、ビックリした表情で口を開けた。
「あ、あなた誰ですか…?」
俺が聞きたい。
そう思いながら、刺激させてはマズイと思いながら答える。
「いや、下駄箱に手紙が入ってたんだよ」
そう素直に答えると、彼女は泣きそうになりながら答える。
「あ、入れる場所間違えたんだ…」
どうやら間違えたらしい。
そして、その言葉を聞いてももう取り返しはつかない。
この場面を見てしまったのだ。
もう見て見ぬ振りはできないのだ。
「なあ、なんでこんな事になってるか少しだけ教えてくれないか?」
俺がそう言うと、少女は少しずつ話始めた。
1年の時にイジメられていたこと。
それは2年になっても続いていること。
その中心が俺のクラスにいることなど。
「もう、死んじゃおうかなって…」
彼女がそんなことを呟いた。
「それはダメだ」
「えっ…」
イジメは絶対許される行為ではない。
イジメられる方にも何か理由があるのかも知れない、だが悪いのはイジメている方だ。
話を聞いた感じでは彼女は悪い子ではないだろう。
「俺が、力になるよ」
「それ、ホント…?」
「男は、嘘をつかないぜ」
そう、昔から言われている。
適当に生きても、弱い者には味方をする。
それは昔から決めているのだ。
「とりあえず送って行くよ、明日からも迎えに行くわ」
「う、うん…」
今日から、彼女を守ってやろう。
どんなことがあっても、イジメは辞めさせてやる。
どんなやつが相手でも絶対に逃げはしない。
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帰り道を一緒に歩きながら、明日のことを話している時に彼女が突然こう言った。
「あ、こっち近道だよ」
そう言って路地裏に入った瞬間に気づいた。
車が走ってきていた。
車両禁止の路地裏にだ。
俺はとっさに彼女に覆い被さり、身を守る。
ああ、クソッ!
せめて彼女だけでもー
俺は金属の塊と電柱に挟まれ、意識を喪った。
活動報告などで色々書いていこうと思いますので、よろしくお願いします!