おっきいトカゲのステータスはいかほどか
長く、本当に永い道のりだった
まさか木を伐り倒すのに筋力五百越え必要とは思わなかったんだ。
精巧な歯車作るにしたって技量五百くらいからだったし、組立ても何がいけないのかすぐにばれるから何度も試行錯誤しなきゃだし、組んだパーツで試しにおばあちゃんと組手すればボッコスカやられるし、散々だったぞ
あのおばあちゃん体感、絶対ラスボススペックだった。最後の組手の時でさえ息一つ切らしてないんだから化けものだよ。
そのおかげかいいスキン作れたけど、他二つは素材的にあの村じゃ断念せざるを得なかったからなぁ。
やっぱり重量級で強い感じっていったらドラゴンをモチーフにしたいよねぇ。OPのあのドラゴンが印象的過ぎてもうそれしか考えられん。
でもそうするとどうしても龍の素材が欲しくなっちゃうんだよねぇ。あと、純粋にマナタンクが足りない。おばあちゃんが言うには龍から取れる龍鋼石があればいいタンクになるっていうけど、龍殺しはさすがに前半のうちには無理でしょぉ。
それっぽい骨組みはできてるんだけどどうしても重量出すぎて動かせなくなっちゃうし。軽い部材つかっちゃうと装甲脆くて意味がなくなっちゃうからなぁ。
というか、翼で体覆ってブレス系の攻撃防ぐのやりたすぎて欲張って翼付けたのが痛手なんだよなぁ。いい皮膜系の素材が手に入るまでお預けにしようかな。
軽量級に忍者スタイル作ったのもあるけど、こっちもなにか物足りないのよねぇ。いっそ路線変更してみようかな。他二つが範囲ないからこっちに広範囲殲滅攻撃搭載できるようにしようかなぁ。
でも、魔法ってどうやって使うんだろう。広範囲攻撃っていったら魔法だけど、魔法のまの字も見てないんだよなぁ。いや、この体魔法に向いてないっておばちゃん言ってた気がする。
あれ、それじゃぁ、うちは魔法が使えないと。どっかに抜け道ないのか探さないとなぁ。でも、機甲種いないみたいだから人伝だとまず無理だろうから書庫かぁ。さすがにこの世界で本の虫になるのは遠慮したいなぁ。やっぱりこっちも保留かなぁ。
やっぱり色々とネックな部分が出てくるなぁ。先に行けば行くほどありそうでなんだか怖いよ、ほんと
たしかに、その代わりのいいところもあるからつり合いはいいんだろうけどもね。
それにしても、ここ数日は森の中の獣道歩いてるはずなのに誰も突っかかってこない。食べるところないから襲う価値もないってことかな。
でも、そこの藪とかに気配はあるな。こんなレベル10の子から隠れる理由はないだろうから、あるとすればヤバイ捕食者が近辺を荒らして回っているのかな。
でも不自然に折れた枝とか踏み荒らされた道とかないから既存の生き物の大きさから遺脱してないはずなんだよなぁ。
なんか、程よく木漏れ日が入って、そよ風吹いてていい気温の性か気が抜けちゃうなぁ。
一人旅で危ないんだからもっとシャンっとしなきゃいけないのにこれはまずいな。
そもそもがここ一週間何事もなく平穏なのがいけないんだよ。始まりの町近辺だからって手抜きすぎじゃないのかな。もうちょっと敵と戦うとか、アクシデントが起こるとかしても罰は当たらないと思うんだけどな
あ、森開けた。いやぁなにもなさ過ぎて退屈してたんだよ。見るものもなかったし。
これで少しは風景の変化で楽しめるかなぁ。
あれ、なんか向こうの方で戦闘音が聞こえるぞ。怒声と金属音が聞こえるからそこまで遠くないな。
少し様子見て、この辺の戦闘能力計っておこうかな。ここまで来るのに戦闘なくて数値化できてなかったから丁度いいかな。
ではでは、ふむふむ。あれはトカゲかな。尻尾に棘が多いからあれが真打かな。7メートルかな、大きさで人間なら蹴散らせそうだね。どっしりした体格で、結構つややかな鱗だな。色合いが若草色でちょっとイメージと違うけどいいサンプルになりそう。
んで、対してるのは4人組か。大楯結構ボロボロになってるけど、受け流し上手いな。ひっかき傷大きいし、純粋にこのトカゲが格上なのかな。
アタッカーの剣士君の剣は短剣か。といっても鱗に阻まれてまったく剣が通ってないけどね。あれ、結構すばしっこいけど、もしかして盗賊とかそっち系の斥侯ポジションだったかな
後ろの二人は、これまた典型的な恰好だなぁ。黒ローブにとんがり帽子って魔法使いですかね。横の子は神官服っぽいからヒーラーかな。役割的にはいいメンバー揃ってるのかね。
お、ツララが飛んでったぞ。あれが魔法かぁ。いいなぁ空中の魔法陣とか青白い光とかすっごいファンタジーって感じ。きれいだなぁ。
でも、まるで歯が立ってないね。全部鱗に阻まれちゃってる感じかな。全然攻撃のステータス足りてない感じだね。なんでこんなのと戦ってるんだろう。ってあぁ、見つけた。
向こうに馬車がいい勢いで走って行ってるからあれが原因か。護衛受けてこんな魔物に遭遇してしまったと。世の中運って大事だよって認識させるのはいいけど、こんな世の中じゃその代償が命になっちゃうのかぁ。なんかいやだなぁ。
見たところオオトカゲくんの動きも十分見える範囲だね。だいたい素早さ200近辺かな。
攻撃とか防御の数値はさすがに測れないけど、ほかのステータス3倍とかそんな子が初めの方で出るわけないだろうからいけるかな。よし、やろう。
気配沈めて、初手にあの白くていかにも弱点だよっていうお腹殴っちゃるかな。
あ、魔法使いと目があった。そのまま静かにねぇ。お、今まで一番派手な魔法じゃないか。何も言わないでそういうことしてくれる人って好きだよ。大きい氷塊に手をふるった今だ。
怒ったトカゲが反対の手で反撃して無防備になったどてっぱらに一発きつい一撃をくれてやろう。
-サイドチェンジ-
彼女らはついていると思っていた。つい先ほどまではっであるが。
少し遠出の依頼のため辺境の森まで赴いたが、普段人気のない森だったからか、自生の秘草を見つけたのである。
帰り道も丁度旅商人にご同伴でき、あとは危険のない聖宮の森沿いの街道を帰るだけであった。だがそこへグラスコーリザードが現れたのである。森からすごすごと出てきたそいつはお腹が空いていたのか、こちらを見つけるなり躍りかかってきたのだ
昼間は背丈の高い草陰等で擬態して眠る。そんなやつが街道に出張ってくることは本当に稀なことである。
馬よりも早く野を走るそれから逃げられるはずもなく、同伴していた彼女らは死地に赴くしかなかった。
ギルドにて銀級の位を与えられ、金階級間近といわれていた彼らも金階級の怪物にはどうしようもなかった。
その巨躯から振るわれる爪や牙は容易にこちらの武具を傷つけ。逆にこちらからの攻撃はその表皮に阻まれ傷一つつけられない。
さらには、タンクの受け流しの達者さと、斥侯の陽動のおかげで決定打をなんとかいなしている状況に見かねた商人は、見切りをつけて馬を走らせ逃走するしまつ。
そうして商人が逃げていく音を聞きながら、死がそこまで迫ってきていることを幻視した。
そんな彼女らに手は差し伸べられる。
かの魔物へ忍び寄るように、人影が近づいてくるのである。
それを見つけた魔法使いは路線を変更し、今自分の打てる限りの魔法を唱えるのであった。
氷の玉を射出する魔法『アイスコフィン』は殺傷能力に乏しいものではあった。しかし、その大きさからオオトカゲには脅威に映ったようで、目の前の二人を放置しその腕を振るって氷を砕いた。そのまま遠くから飛んでくる攻撃に嫌気がさしたのか、魔法使いに詰め寄りその腕を振り上げた。
がむしゃらに突っ込んでくるとは思っていなかった魔法使いは体を丸め衝撃に備えたが、大きな打撃音と地響きはしたがいつまで経っても何事もないことを不思議に思い、視線を上げる。そこには海のように美しい髪をなびかせる少女がいた。
一瞬トカゲのことも忘れてその美しさに惚けてしまったが、すぐさま現状を思い出し視線を周囲に向ける。
少し遠くで仰向けに転がっているトカゲを発見した。口からだらしなく舌が覗いているところを見ると気絶、いや、あのお腹のへこみ具合から絶命しているようだ。
たしかに、グラスコーリザードは打撃系の一撃に弱い。だが、一撃で、しかも急所の頭部でなく、腹部でとなるとなかなかに難しい。もっというならば、素手でというのは聞いたためしがない。それをあのように小さな子が行ったことがにわかに信じがたい。
「えっと、大丈夫ですか?」
どうも、気が抜けたためか座り込んでいた魔法使いを心配したのか、そう口にしながら手をさしのばしてくる彼女は綺麗な少女であって、やはりあんなことをしでかした人にはどうにも見えないのであった。