ちょこっと先取り
晴れ渡る青空に歓声がこだまする。
そこはその都市でも一二を争う大きさを誇る闘技場である。
コロッセオの作りをした、何千人収容できるのかというほどの大きさを誇る闘技場を、埋め尽くさん限りの観客が喜怒哀楽を叫び熱狂する。
そうした声を一身に受けるのは、中学生くらいの可憐な少女である。
腰まで届く軽くウエイブのかかった青い髪は穏やかな海を思わせ、ぱっちりとした目はまるでエメラルドの宝石のように美しい。
汚れを知らぬ色白の肌に漆黒のワンピースが映え、腕と足を覆う鎧のような装甲だけが彼女を戦士であるのだと主張している。
しかし、幼い体型に不釣合いな大きさの胸が多くの男性の視線を釘付けにしており、あまり意味はなしていないのである。
そんな舞踏会でダンスを踊るほうが似合いそうな彼女が、闘技場で無双しているのである。
最大連勝記録50勝に迫ろうかというほどの彼女の戦闘は、ひどく静かで単調である。
それでも観客が沸き上がるのは、彼女のその容姿と、傷一つつけられない彼女の圧倒的な戦力にある。
一つ一つが完成された美しさで行われる技は見るものを虜にし、無傷で佇むその姿には賞賛が贈られる。
「さぁ、ついに来ました50勝目をかけた大勝負。挑戦者は今話題沸騰の流れ者、ミルノート。そして、お相手はもちろんこの方。フレイムドラゴンのオリンポスくんだぁ」
そうして観客が待ちに待った大組合が始まろうとしていた。
方や大地に立つ小さな女の子
もう片方は空よりゆっくりと舞い降りてくる巨大な龍
見るからに勝負の余地もない采配ではあるが、今までの圧勝ぶりから、彼女ならばやってくれるのではないかという淡い期待が持てるのである。
「いま運命のゴングが鳴ろうとしています。果たして彼女はドラゴンスレイヤーの称号を手にすることができるのでしょうか。いざ、尋常に」
そして、決戦の舞台に火が灯る