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『最初の試練』

かれこれ30分は悩んでいる。初めて異世界の人間を見つけた。遠目だったが女の子だった。声をかけようとしたが走ってこの家に入ってしまった。あれから、30分・・・なかなか、声を掛けられない。初めの言葉はなんて言えば良いのだ?いや、そもそも言葉は通じるのか?いやいや、初対面の人に話す方が問題だろ!?

そんなことを何度も考えながらドアの前を行ったり来たりしている。ここに来て最大の弱点のコミュ障が発動してしまった。


(ちくしょー、こんなことならまず神様に円滑にお話が出来るチート能力を頼むんだった。《大学のテニスサークルの副部長:グイグイクルモノ》とか、《近所の町内会班長のおばさん:グイグイクルモノ》とかあっただろ。そうだっ!《正月に会った時に昔オムツ変えてやったことあったんだぞ!って言う叔父さん:グイグイクルモノ》でもいいよっ!!!!)



悔やまれる。とても悔やまれる。




いつまでもこうやってても仕方がない!ここは、腹を括って行くしかない!転生して一世一代の勝負をかける!



ドンドンドン!


あっ!勢いつけすぎたか!!!???

心象が悪くなってない???



扉がゆっくりと開く。


一彦は精一杯ひきっつった笑顔をつくる。


「こっ、こんばんわ。お忙しいところ、やっ、夜分遅く申し訳ありませっせん。わたくし、みっ道に迷ってしまいまして。宜しければこちらに一晩とっ、泊めていただけませんでひょうかっ???」


扉の向こうにはおっかない顔をした男性がバカでかい武器を持って睨んでいる。



(ひゃっー!!!終わったー!!!!転生失敗でしょ!!すいません、神様!自分何も出来ませんでしたぁー!!!)


涙目になりガクガク震える。


男性は暫く一彦のことを睨んでいる。周りをキョロキョロ確かめながら。


「ふぅー、エリザ!リサ!もう大丈夫だ。」

男の顔が柔らかくなった。



ふぇ????



「いや、坊主すまなかったな!まさか、こんな時間に訪ねてくる人がいるとは思わなかったんだよ。びっくりさせてしまったか?こんなボロ家で良ければ遠慮せず入ってくれ。」


男性はなかば強引に俺を家に招き入れてくれた。

部屋の中はとても暖かい。昼間は暖かかったが陽が落ちるとガクンと気温は下がっていた。


「いやいや、さっきは本当にすまなかった!ところで、坊主!飯は食べたのか?よかったら丁度食事中だったからお前も食うか?」



ドキッとする。いやいや!初対面の人と食事???ハードル高いっす。いきなりRPGで裏ボス出てくるくらいハードル高いっす!!



「いやっ、僕はそんなにお腹が減ってはいないので・・・・」 


グゥーーーッ!!


・・・・・・っ!お約束のやつかい~~~!!!!

ベタなコントかっ!って位のタイミングである。

恥ずかしくて、カァーと顔が赤くなる。


「ハハハッ!そんなに遠慮することない。あまり豪華な飯では無いが、なかなか妻が作るスープは旨い。是非、食べてみてくれ。」

男性は豪快に笑い僕の背中をバンっ!バンっ!と叩く。


この男、自分より明らかに年下に見えるがなかなか好感の持てる男だ。・・・・・・誰かに似ている。

なぜか、さっきよりも気持ちが落ち着いている。



「どうぞ!こちらにお座りになって。」

奥様はスープをよそい、赤ん坊を抱き抱えた。


「あっ!すみません。ありがとうございます。」


席に着く。本当だ、スープの中身の具材はわからないがとても良い匂いがする。


「いっ、いただきます。」


まずは、一口頂いてみる。・・・うん、おいしい。味はコンソメスーブに似ている。具材も柔らかくとても食べやすい。おそらく、こちらの世界の野菜だろう。不思議な食感だ。弾力があったり、カリッとしたり。でも、すぐ口の中でほぐれてとろける。

これなら異世界でも暮らしていけるぞ!!



「ところで、坊主。こんな時間にこんなところで何をしていたんだ?このあたりじゃ見かけない顔だし。」


うっ!そうだ。料理評論してる場合じゃない!なんて答えればいい?異世界から転生してきましたなんて信じてもらえるのか?いやっ!神様が言っていたな、今まで異世界に転生をしたことがある者はいないって。だとすると、真実は信じてもらえないか・・・・。ここは、オーソドックスにいくか。



「実は俺、気付いたらここより少し先の草原にいたんです。どうやら、頭をぶつけたらしくて、記憶が・・・・まったく、思い出せないんです。」


夫婦は固まった表情で僕を見ている。



(しまった!!ベタすぎたかっ!!!なんだよ!記憶喪失って!

怪しさlevel99だよ!!!!何か、別なうまい言い訳を・・・・えーと、俺は王家の人間で・・・・権力争いに巻き込まれて・・・・実の弟に・・・・)



「そうかっ!聞いたことがあるぞ!たしかに、頭に衝撃を受けると記憶が無くなることがあるらしいが・・・・まさか、そんな不幸な目にあっていたとは・・・・」



「可哀想に・・・親御さんもさぞかし心配してるでしょうとも」



あれっ?信じてる????

意外だった。こんなありがちな展開でよく疑われなかったものだ。



「名前は何て言うんだ!?」


「あっ!俺はカズヒっ!ンムっ!」


(しまった!記憶喪失だった!何故に名前がスラッと出てくる!

不味い。これは不味い。何とか誤魔化さなければ・・・・俺は魔女に呪いをかけられていて・・・・記憶を七つの玉に封印されていて・・・・)




「まだ、頭の傷が癒えていないんだろう。しかし、名前が無いのは不便だな。そうだな・・・・【カノン】なんてどうだろうか?」


んっ?バレてない????どんだけお人好しなんだ。はなっからこの二人は俺を疑ってない。本当に可哀想な人としか思ってないのだろう。


「あっ!カノンで大丈夫です!ありがとうございます。」


良かった。ひとまずこれで信じてもらえた。


「俺の名前はアロンだ。宜しくな坊主。こっちは妻のエリザ!こいつは娘のリサ。このチビは息子のイロスだ。カノンはリサと同じ位の年齢だろう。良かったら仲良くしてやってくれ。」


「あっ!はい。」



えっ???ん????娘と同じ位の年齢???

あっ!まさかっ!



何故に今まで気付かなかったんだ???

明らかに俺は子供に戻ってるじゃないか!!!

普通なら目線や感覚で気付くはずだろ!!!神様の野郎、こんなこと一言も言ってなかったじゃないか!!普通に死んだときの年齢で転生したと思っていたぞ。

娘と同じ位の年齢???というと、小学6年生か中学1年生位か。。。


リサは僕にニコッと微笑む。


ドキッ!


コミュ障にはハードル高いよっ・・・・

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