『長の立場』
カノン一行は先程幻鸚鵡族の長と出会った場所まで戻っていた。
『なあ、ビビット。これで良かったのかな・・・・。何か僕たちに出来ること、・・・・なかったのかな・・・・。』
『小僧・・・・。わからぬがお主に出来ることは何もなかった。運命というのは時に変えようのない物なのだ。』
『そうですよ、旦那!こういっちゃなんだが、もはや手遅れだった。最後に旦那の優しさで死に目に会えたんだぁ、それこそ奇跡ってもんだぜ。』 シンは頷きながら会話に入ってきた。
『わが主よ。こいつの言う通りです。主の優しさであ奴等は救われたでしょう。』 ナルケンも俺を気遣ってくれているようだ。
『みんな・・・・』
『ご主人様は悪くないよ~。悪いのはあの長でしょー』
ブランはふくれっ面で腕組みをしていた。
カノンはそんな姿をみて少し穏やかな気持ちになっていた。
一行は先程はあんなに一瞬で向かえた道のりをゆっくりと元の場所まで戻ってきた。
『幻鸚鵡族の長よ!!!!約束通り【肥沃の種】は取り戻した。出てきてくれ!!』
カノンのすぐ後ろから声が聞こえた。
『ふんっ、そのように大声を出さずとも聞こえておるわ。どれ、見せてみろ。』
唐突に背後から声が聞こえた。
バッとカノン達は後ろを振り返えった。
(こいつ・・・・わざと驚かせてるじゃねーか?)
カノンは幻鸚鵡族の長に【肥沃の種】を渡した。
幻鸚鵡族の長はマジマジと【肥沃の種】を見る。
『たしかにこれは【肥沃の種】だ。だが、生気が失われておる。奴め・・・・・・・・・
それで、裏切り者の幻鸚鵡族は始末したのか?』
ギロリとカノンを睨む。
『いやっ!あいつは・・・ショーには危害を加えてはいない!!あいつは、おまえら一族を裏切ったわけじゃないんだ。ただ・・・・・救いたかっただけなんだ・・・・。』
カノンの眼にはうっすらと涙が浮かび拳には行き場のない感情が強く握りしめられていた。
『ふんっ。 結局はお主らが奴を始末することなど出来なかった言い訳じゃろ。まあ、最初からお主等にあやつを何とかできるとはまったく思っておらなかったがな・・・・・。』
『なんだと!貴様!主殿に向かいその言葉は!!』
ナルケンが槍を構え幻鸚鵡族の長に向ける。
『旦那!どいてください。奴はこの俺が。』
シンもギネも殺気だった眼で幻鸚鵡族の長を睨みつけていた。
ブランに至っては幼女から竜の顔に変化しつつあった。
『ふんっ、まぁ良い、【肥沃の種】は取り戻せた。約束通りこの森の呪縛は解いてやろう。早々に立ち去るが良い!!!!』
『まってくれ!ショウは・・・ショウの事はどうするつもりなんだ!!』
『奴はとうに一族を破門された裏切り者だ。次に姿を見せた時は一族総出で始末する。』
『違う!!!だからあいつは!!』
『人間の子よ・・・・・・立ち去れ!すべては我が一族のこと』
突然突風が吹き目の前が木の葉で覆われる。風がやんだ時にはすでに幻鸚鵡族の長の姿はなくなっていた。
『我が主よ、いきましょうぞ』
ギネはしばらく呆然としていたカノンに話しかけた。
カノンはギネの背に乗り森を後にする途中も悲しそうな表情で後ろを振り返っていた。




