『裏切り者』
時間が無い・・・・例の幻鸚鵡族が【肥沃の種】を何に使うのかわからないがタイムリミットは今宵の満月が出るまでだ。
最早かたわれ時。残り時間は2~3時間ってところか・・・・。
『ギネっ!急いでくれ!あの山の頂点にショーっていう幻鸚鵡族はいるはずだ。』
一行はひときは大きな大木がそびえ立つ山の頂点を目指していた。
『しかし、カノン様。奴から【肥沃の種】を取り戻す算段はあるのですか?』
後ろからナルケンが話しかけてきた。
カノンはギネにスピードを落とし横に並ぶよう指示する。
『あぁ。それは俺も考えていたよ。幻鸚鵡族の固有スキル《音量:ボリューム》はたしかに厄介だ。長のレベルだと音を消し気配を完全に消せるまでだった。だけど、長の話ではショーって奴はそれ以上らしいからな。』
先程、去り際に幻鸚鵡族の長から言われた言葉だ。
『ひとつだけ忠告してやる。奴は・・・ショーは・・・一族始まって以来の天才と言われた者じゃ・・・今となっては天災か。ふぅ、奴の力はすでに我々一族すべての者を凌駕しておる。くれぐれも楽に倒せる等とは思わぬことじゃ・・・。』
あの時の幻鸚鵡族の長の表情は今までとは違う悲しいような寂しいような表情だった。
『まずは、話し合いだ。もしかすると条件によっては上手く交渉できるかもしれないしね。』
ビビッドは手を頭に当て呆れたようにカノンを見上げていた。
~~~ 闇夜の中大きな木の頂点に黒い鳥の影が空を見上げていた。 ~~~
・・・あと、少し。
・・・・あと、少しで・・・は、甦る。
・・・今夜・・・は今夜こそ・・。
すでに陽は落ちてしまった。
月は満月。月の光がカノン達の足元を強く照らしている。
もしかすると、すでに時は遅いかもしれない。
満月はカノン達を追いかけるように背より迫る。
『カノン様、着きました!』
不思議にも山頂には木々が生い茂ってはいなく開けた草原にとてつもなく大きな大樹がそびえ立っていた。
おそらく、この木がショーという幻鸚鵡族がいる場所に違いない。
カノンはギネの背から降り、大樹へ向かう。
シンとナルケンもその後に続いて行く。
『ようこそ!皆様!!!』
いきなり大きな声が響き渡る。思わずカノン達は耳を塞いでしまうほどだった。
『おっと、これは失礼。お客様等滅多に来られない場所なので興奮してしまいました。』
大樹の頂点に大きな鳥のシルエットが現れる。
闇夜に隠れその姿を未だに確認は出来ない。その時、冷たい大きな風が草原に吹いた。
徐々に雲で隠されていた月夜が現れ月光がその姿を照らし出す。
その鳥が月光に照らされた姿は七色に輝く美しい姿をしていた。
おもわず、カノンは見とれてしまった。
前世でオウムは何度か見てきたが断トツでこいつが綺麗だ。
勿論、動物と魔獣なので根本的に比べれるものでは無いだろうが本当に美しい。
『おいっ!カノン!何をボーっとしておる!』
カノンは自分の胸ポケットから聞こえる声でハッと我にかえる。
『あっ!ごめん。えっ?それで、なんだっけ?』
ビビッドは大きなため息をつきカノンへ話す。
『奴から【肥沃の種】を奪い取るのだろ!?姿が見えとる今が好機じゃ!距離を詰め隙あらば仕留めるぞ。ギネ!シン!ナルケン!お主らも油断するなよ。』
後ろにいるギネ、シン、ナルケンも無言で頷く。
カノンはショーを見つめながら歩き話かける。
『突然の押し掛けすまない。一つ聞くがお前がショーか?』
幻鸚鵡族は全体を見回しカノンへ視線を戻す。
『えぇ。その通り。私がショーです。・・・・・私を知っているということは長から何か命じられて来られた?そうではないですか?』
ビビッド達、魔獣はその言葉に驚く。こちらの、目的はすでに相手に感ずかれているということ。今、姿を消され逃げられたら奴を仕留めるどころか見つける事さえ困難だろう。
ここで、逃がす訳にはいかない。
臨戦態勢をとろうとしたときカノンが割って入るように話す。
『そうだ!お前の持つ【肥沃の種】を奪いに来た!』
その真っ直ぐしたカノンの答えに魔獣達は絶句し固まった。
ショーも意外な答えに驚きを隠せず固まった。
暫くしショーがニコリと微笑み答える。
『そうですか。わかりました。では、お返し致しましょう。』




