『いざ、出発』
魔の山の西、深い森に三つの影が風と共に移動していた。
先頭を行くギネにまたがるのはカノンと幼女だった。
すぐ後ろを大鰐人族の長:シン
亀人族の長:ナルケン
がそれぞれ黒狼族にまたがり追随する。
「ビビッド!あとどれくらいかかる?」
カノンの上着のポケットからビビッドが顔を出す。
「ドワーフの国ガンヌマは魔の山を越えた東にあると聞く。だが、魔の山は果てしなく広い。恐らく、このスピードで進んでも一週間はかかるぞ。」
「えっ!?一週間も??そっか、結構かかるんだな。」
カノンは驚きとため息まじりの言葉になる。
「魔の山はこの大陸で最大の山だからな。すぐには越せぬよ。」
「はいっ!はーい!!!僕が竜になって皆乗せればひとっ飛びだよぉー!」
ブランはカノンの後ろから得意気に話しかけてきた。
「お前なあ!そんな事したら直ぐに皆に気づかれてしまうだろ!お前は只でさえデカイんだからどっからでも姿が見えるんだよ!」
カノンは半分あきれぎみにブランに話す。
「ブッー」
ブランはふてくされた顔で口を尖らせていた。
「頼むからお前は余計な事をせず大人しくしててくれよ。この前の事、忘れた訳じゃないよなっ・・?」
カノンはリサにお茶をかけられた後必死で弁解した。
リサはそれでも聞き耳をもってくれず目の前でブランを変化させてやっと許してくれた。
(リサはあぁ見えても意外と頑固で短気なんだよなぁー・・・)
カノンはあの時の事を思い度しただけでゾッと背筋が寒くなった。
『カノン殿、1つ伝えておくことがある。』
ギネが疾風の如く走りながら話しかけてきた。
『なんだ?』
『この魔の山は大きく分けて4つのエリアに分けられる。大まかに東西南北なんだが。』
ギネはチラリとブランに目をやった。
『東のエリアは元々我々が納めていたエリアでした。知っての通り以前ブラン様に奪われてしまいましたが・・・』
ブランは突然寝たフリをし、何も聞こえない態度をとる。
ギネはそれを見て苦笑いしていた。
『ウフォンッ!まぁ、それはいいとして、これから行くのは西の、エリア。この西のエリアは幻鸚鵡族が納めているです。本来ならこの幻鸚鵡族の長に話を通してからナワバリを通らせて貰うのが一番良いのですが今回はそんな時間は無いでしょう。このまま、突き通るつもりです。恐らく、やつらはそれに気付き何らかの攻撃をしてくるに違いないのです。』
『そうか。それで、その幻鸚鵡族はどんな魔物なんだ?』
ギネは少し考えた後喋りだした。
『普段は大人しい性格です。自分達の縄張りから出ることも殆どありません。しかし、自分達の領域に踏み込んだ者には容赦無く攻撃してきます。彼等はその、なんというか・・・とにかく頭が良いのです。』
それを聞きビビッドが疑いの眼差しをむける。
『勿論、我々が奴等にやられるとは思ってませんが思わぬ時間を喰わされるかも知れませぬ。用心に越したことはないかと・・・』
ギネは最後に少し此方を振り返った。
森が少しずつ静かになっていく気がした。




