『魔人の国』
『・・・・ン、・・・・ノン!、・・・・おいっカノン!』
ビビッドはカノンの頭の上で呼び掛けていた。
『えっ!?何?』
ビビッドは呆れたように、フッ~とため息を漏らす。
『お主、先程からワシが言ったことを考えておるな?』
『えっ?うっうん。・・・・だって、あの素材が利用出来れば沢山の道具が作れるし、この村の大きな資源になると思うんだ。』
カノンは先程買ったばかりの鎌を振り回しおもむろに道側の草をに刈った。
『・・・・お主。・・・・フッ~。
たしかに、あの魔の山を越えた先にドワーフの国 ガンヌマ国はある。だが先程も言った通りドワーフは魔人の国だ。』
『魔人・・・・。』
以前、アロンからこの世界の事を教わった時に聞いた。魔人の存在。人の姿に近いが人では無い存在。そして、何より魔王が治める種族。
人と魔人の歴史は決して浅い訳ではないらしい。大昔から世界の各地で交流、同盟、戦争が行われてきた。魔人の種族同士でも戦争は行われておりエルフ族VSドワーフ族の戦争の時は西と東で人間達もそれぞれの魔人側に付き戦争を行ったみたいだ。
※ちなみにこれは第一次聖魔大戦と言われている。
『ワシも実際には魔人に会ったことはないが、文献によれば魔人は魔物や魔獣、人間さえも奴隷にしている国もあると聞く。』
カノンは頷く。
『ドワーフの国がそのような国かも知れないのに、ノコノコ出向くのは馬鹿であろう。』
『でも!行ってみなきゃ、わからないし。』
ビビットは呆れた顔になる。
『お主ときたら・・・・よく聞け!ワシが知る限りのドワーフ族の事を教えてやる。』
ドワーフ族
古より武器や防具等、鍛冶・工芸に秀でた種族。その為昔から神の12人の従事者にも数えられている。実際、世界最強の武器とされるエクスカリバーやアルテミスの弓はドワーフ族の制作である。
容姿は背が低く筋骨隆々、男は髭の大きささ長さで権威を表す。
性格は温厚だが頑固で融通がききにくいとされている。
ドワーフ族の主国はガンヌマ王国 四方を魔の山に囲まれている。パスバイ街道が唯一繋がっている道である。正式な交易は確認されていないが個人の行商人がガンヌマ王国から各地に出向いている。
カノンはラビットの話を黙って聞いていた。
(流石にこやつもわかっただろう。魔人は危険すぎる・・・・語り継がれる第一次聖魔大戦の時の被害は莫大なものだったと聞く。)
~~~~~【第一次聖魔大戦】~~~~
創造歴750年
今から約1500年前 起こったとされる戦争
元々エルフ族とドワーフ族は友好的な関係ではなかった。大きな理由の一つにこの二つの種族は生きる糧が同じ事ということがあった。
エルフ族は魔人の中でも特殊な種族で生きるエネルギーを木々や草花等といった自然から吸いとっていた。
一方ドワーフ族はエネルギーこそ動物や穀物だったが生活の為に木々を伐採し様々な道具や武器を作り生活を発展させていた。
ここで衝突が起こる。生きる糧として必要なエルフ族と生活の為に必要なドワーフ族。
森を、木々を、鉱物を巡り因縁は積み重なっていた。
これに危機感を感じた当時のエルフ族長:トキトキは内密にドワーフ族長:ミンゾノと和睦を計っていた。
その矢先に事件は起こった。
ドワーフ族がエルフ族に戦争を仕掛けたのだった。
その戦争は人間も巻き込み世界を二つに分けた。
10年にも及ぶ壮絶な戦いの果てにドワーフ族は勝利した。
敗れたエルフ族は数人しか残らなかったと伝えられ滅亡したとも、どこか別の地でひっそり生きているとも言われている。
~~~【古代近代歴史書:著者 ケー】より抜粋~~~
『よしっ!決めた!』
ようやく諦めたか・・・とビビッドは胸を撫で下ろす。
『ドワーフの国に行ってみよう!!!』
『なんでやねん!!!!!!』




