『噂』
シザの村より南に少しいった所にピーク村があった。そこで二人の男が話をしている。
男の一人は赤っ鼻のひょろりとしたやせ男だった。その男は背の小さい太った男に話しかけていた。
「おいっ!アリドの旦那!シザの村の話を聞きましたかい??」
「あぁ・・・・噂はな。実はよ先日、あの村のマルコと定期開催の物々交換をしたんだが・・・・、奴め今まで見たことのない食べ物や魔獣の素材なんかをわんさか出してきやがった。しかもそのどれもが都にでも行かなきゃ手に入らないような一級品ときたもんだ・・・・。」
「・・・・。元々シザの村といやぁ酒には定評があったが他は目新しいもんなんか無かったはずでしたよね?」
「おぅ。おめぇさんのいう通りだ。変わったことといったら少し前に村長が死んでしまって新しく変わった位だな・・・・・・・・。あとは・・・・・・・・。」
「あの噂ですね。1週間位前に魔獣の大群がシザの村にむかったとか・・・・・・・・信じられない話ですがその中には龍もいたとか・・・・・・・・」
「まぁ、ドラゴンは嘘だろうが魔獣が何体かシザの村に向かったのは確かなんだろう。恐らく、その時の魔獣を誰かが倒したのか・・・・」
「あそこの村にはたしか元冒険者等はいなかったはず・・・・」
「おうよ。たまたま立ち寄った冒険者がいたのか・・・・それとも、村の誰かが倒したのか・・・・」
「まさか・・・・魔獣を倒せる奴があの村に???」
「いやいや、決していないとは言い切れんだろう。たしか、1年程前にもダークウルフの群れがこの辺りに出没したことがあったがあの村には被害が全く出なかったと聞いた。この村でさえ村長様がいらっしゃっても何人かは犠牲が出てしまったのに・・・・」
「えぇ、覚えていますとも・・・・。たしかに、村長様は元B級冒険者。それほどの腕を持っても・・・・それにあの時はたまたまラクウさん達の冒険者がいたにも関わらず・・・・ダークウルフを追い払うので精一杯でした・・・・。だからこそ、あの村にそれ以上の使い手がいるとは思えないのですが・・・・」
二人は長い間話をしていたが真実にたどりつくことは無かった・・・・
~~~~~~~~~~シザ村~~~~~~~~~~~
「うーん・・・・。」
シザ村の道具屋マルコは悩んでいた。
村の魔獣達が食糧として狩ってきた動物や魔獣だが食べれる以外にも素材として価値の高い部位が沢山あった。もちろん、魔獣達はそんなものは判らないのですべて貰ったのだが・・・・・・・・
昨日、隣のピーク村の奴に何かと物々交換してもらおうと思ったが余りにもこちらの物の価値が高くて同等に渡せる物が無いと断られてしまった。
だったらとこの素材で何か道具でも作ろうかと思ったのだが中々上手く進んではいなかった。
「はぁ~、どうしたものか」
カラン、コロン♪
道具屋の入り口が開き誰かが入ってきた。
「へいっ!いらっしゃい。おっ!カノン村長様じゃねーか。」
マルコはにやにやしながらからかうようにカノンに話しかけた。
「やめてくださいよぉ。こんな子供で・・・・只でさえ皆さんに迷惑かけているのに・・・・そんな僕が村長だなんて・・・・」
マルコはさっきのニヤケ顔とは違う笑みを浮かべる。
「そんなことねーよ、たしかに、一時は心配事の方が多かったが今のこの村の豊かさを見れば誰もお前の事を受け入れていない奴なんかいねーよ。現に、お前がアロンに代わって村長になると言ったとき、誰も反対を口にしなかっただろ?」
「それは・・・・」
マルコはカノンに待てと言わんばかりに手をかかげる。
「たしかに、アロンは立派な男だ。今も俺たち人間の代表はあいつだ。だがな、いくらあいつでも魔獣をまとめられるかというと無理があるにきまってらぁ。お前はお前がやれることを精一杯やればいい。足りないところは俺たち大人達が補ってやるよ♪」
カノンはちょっと照れながら感謝のお辞儀をした。
「ところで、何か用事があったんじゃねーのか?」
「あっ!そうだ!アロンさんから草刈り用の鎌を買ってくるように言われたんです。」
「はいよ。草刈り用の鎌な。どれどれ。」
マルコは背中の棚から箱を取り出す。
「はいよ。草刈り用鎌だ。大銅貨3枚だな。」
「はい。これで。」
カノンは銀貨2枚を手渡す。
「はぁ~、これみたいに簡単に作れれば苦労しないんだがな・・・・」
マルコは愚痴をいいながら鎌を渡した。
「どうしたんですか、マルコさん?そういえば、入ってきたときも何か悩んだ顔してましたね?」
「おっ!いやいやすまねぇ。すまねぇりつい愚痴が出ちまった。」
「何かお手伝い出来るかもしれませんし・・・話したくださいよ。」
マルコはさっきまで悩んでいた素材の使い道についてゆっくり話始めた。




