『村の発展』
暗闇の廊下を松明の灯りが所々照らしている。
廊下の壁や天井には高価そうだがどこか不気味な装飾が施されている。
その廊下を早足で歩く者がいた。
フードを被りランプを持っているが一目で人間では無いことがわかる。
フードからは牛のような2本の大きな角が飛び出ており後ろにはトカゲのような尻尾が出ている。
その男は更に装飾が所狭しと施された扉の前で一息ついた。
「ハァーハァー・・・・」
コン、コン・・・・。
「アークデーモン族長ナベタワでございます。お入りしてもよろしいでしょか?」
「・・・・入れ。」
フードの男は扉の前でフードを脱いだ。
その男は動きこそ人間であるが姿形は別の生き物であった。
ナベワタは王座に座っている男の遥か前でひざまずく。
「ご報告でごさいます。遥か東の魔の山を越えた村に地龍が出現したとのことです。」
王座に座っている者は脇に置いてあるグラスを持ち中身を味わうように飲む。
「続けろ。」
ナベワタは一瞬ビクッと震えたが話を続けた。
「偵察をしていたミニデーモンの話によれば地龍とその眷族達は近くに住む人間達の村に進行したとのこと。村の人間程度では地龍相手に何も出来ないでしょう。」
王座に座っていた者は「フッ!」と笑うと残りのグラスの飲み物を飲み干した。
「いずれ、地龍も我が支配においてやろう・・・今は好きにさせておくがよい・・・・。」
ナベワタはその言葉に歓喜していた。
「御意に!魔王様!」
~~~~ 一方シザの村では ~~~~~
シザの村では現在大きな変化が起きていた。
衣:基本魔獣達はあまり服に関して気にはしていなかった。
武器や防具等には気を使ってはいたが魔獣達は身なりに関してはさほど関心が無かった。
人間達から見れば魔獣とはいえ同じ村に住んでいる以上そのままにしておけず使わななくなった衣類を仕立て治して分け与えた。
魔獣達は食べ物のお礼だと言われ村の人間と同じ服や靴を渡され試しに使ってみたが、これが思いの外魔獣達からは評判が良かった。今まで気にしていなかったがいざ着てみると中々快適である。龍の眷族達は保湿が保たれて良いと。今まで腰パンだけだったが皆、自分なりのお洒落を披露しあっていた。
流石にダークウルフ達は服を着ることはなかったが(そもそも四つ足の着れる服が無かった・・・・)村人の証に全員首輪をつけて貰った。
(この世界では首輪=下僕や奴隷 といった意味合いは無いそうだ。)
なので、単なるファッションなのだがダークウルフ達も今までファッションなんて気にしたことがなかったのでそれなりに盛り上がったようだ。
食:相変わらず魔物達は森や川から沢山の獲物を狩ってきた。そのおかげで村の食生活は激変を遂げる。
今までの野菜を中心とした村の伝統料理の他に魔獣達のオリジナル料理が加わりちょっとした革命がおきたのである。
カノンの感覚だと今まで食べていたのは昭和の初期の料理。
今食べているのは平成の時代の料理と言っても過言ではない。
住:魔獣達は自分達の住む家を器用に作っていたがとても頑丈で機能性に優れたものだった。一通り魔獣達の家が出来ると村の人間達の家にも作業が及んだ。
破損しているところを直したりより強度の高い物に変えたり・・・・。
まぁ、こんな感じでシザ村は人間と魔獣が共生する非常識な村となっていくのだった。
~~~~~~~~~~少し時は遡る~~~~~~~~~
今、シザの村では会議が行われていた。出席者は
魔獣の王???:カノン
人間の代表:アロン
龍王:モーグイ(ブラン)
蜥蜴人族の長(新任):ガハ
大鰐人族の長:シン
亀人族の長:ナルケン
黒狼族の長:ギネ
魔栗鼠族の元長:ビビッド
の8名。この8人は村の評議員のような立場となった。
集まった理由はこれからこの村で共に暮らしていく上で決めなくてはならないことがある。それを、とりあえず掟として今から決めていこうという訳である。
基本はカノンとアロンが思い付くまま決めていった。大きな反対は全くなかった。というか、龍王と同等の立場にあるカノンに逆らえる者などいなかったのである・・・・
1、如何なる理由があっても村人同士争ってはいけない。
2、村の長はカノンとする。
3、何かあったときは評議員の話し合いで決まること。
1に関しては魔獣が人間を襲わないか心配だったが今村にいる魔獣達は人を食糧として見てはいなかった。※中には糧として人間を食らう魔獣もいるとのこと。
どちらかというと人間を害獣として認識していたそうだ。
まぁ、前世でいうと農家さん達が嫌がる猪とか猿とかと同じ感覚なんだろうな・・・・。
まぁ、話が通じるとなれば認識も変わるものである。もちろん、ブランから其々の眷族の長達にはきつく念を押して言ったが・・・・
2に関しては最後まで断った!
現在のシザの村の長であるアロンさんを引き続きと言ったが本人から強い拒否※「絶対に駄目だ!!!!」があった為なしくずし的に自分で決着した。当分は通訳としての代表者と思おう。
3は今後のこともあるのでとりあえずの評議員として結成された。
かくして今まで存在しなかった人間と魔獣が共に暮らす異常な村:シザの村が誕生したのであった。




