『魔獣と人』
ブランの背に乗り村の皆の所に向かっている時にブランが上機嫌で歌っている。決して上手くはない・・・・。
『これからは御主人様と一緒に暮らしていける~♪前みたいに遊んでもらえる~』
『っておいっ!ブラン!お前、まさか俺と一緒に村で暮らすつもりか???』
ブランはニコニコしながら答える。
『勿論だよ!こうやってまた会えたんだから前の世界と同じように一緒にいるよ♪』
(いやいや、無理だろ・・・・。俺は良くても村の人達が許すわけがない・・・・。)
『ブラン、今のこの世界では一緒に暮らすことは難しいんだ。俺が時々あの洞窟に会いに行くよ。だから・・・・、』
『嫌だよっ!!!!』
ブランは両手で自分の耳を押さえながら飛んでいる。
『ちょっ!ブラン!お前!聞けよ!』
カノンは必死でブランを言い聞かせようとした。
『竜王様が望まれるのであれば我々眷族もお供致します!』
一緒に乗ってきた亀人族の長が膝まづき忠誠をアピールしている。
隣で包帯巻きになっている、大鰐人族の長も頷いていた。
(いやいや!無理!無理!無理!ドラゴン一匹でも不可能なのにその他の魔獣なんか村に連れてけないでしょ!)
『あのなぁ~、お前ら。そういう問題じゃないんだよ。こんなに沢山の魔獣が来たら人間達は怖がるだろ・・・・。』
『んじゃあ、僕だけでいいよっ!』
!!!!!?????
『そんなっ!りゅ竜王様っ!!!』
『お前が1番怖がられるんだよ!!!』
ブランはまた両手で耳をふさぐ。
駄目だ。こいつ、俺がなんて言おうがついてくる・・・・
どうしようか・・・・。アロンになんて説明すればいい???
ビビッドの時でさえ皆あんなに慌てていたんだ。今度はドラゴンも・・・・なんて言ったら・・・・。
んん~・・・・。駄目だ、どうなるか想像もつかない!
とりあえず、言うだけ言ってみよう。どうしても駄目だとわかればこいつらも戻っていくだろうし・・・・。
アロンは夢を見ていた。
前村長である母様が花畑の中で椅子に座りくつろいでいる。
アロンはあなたのように村人達をまとめあげ立派な村を作っていくと誓う。
前村長はひきつった表情でアロンに話しかける。
「アロン・・・・頑張れ!こりゃあ、ワシでも無理じゃ・・・・。」
ハッと目を覚ますと家の自分のベットだった。
なぜここで休んでいたんだろう?直前の記憶が全く無い・・・・。
今朝起きたときにカノンが居なくなっていて・・・・そして・・・・
アロンは思い出そうとしながら井戸で顔でも冷やそうと外に出た。村の広場の方で賑やかな声がする。
(・・・・賑やかだな。何をしているのだろう?後で見に行くか・・・・。)
桶で冷たい水を汲み顔を洗う。
横からタオルを渡された。
「おっ!ありがとう。」
アロンはタオルを受取り顔をふく。
「助かったよ、ありが・・・・っ!!!」
タオルを渡したのは亀人族だった。
「うっ・・・・うわっー!!!!魔獣!!魔獣っ!????」
アロンは逃げようとするも腰が抜ける。
突然後ろに気配がし大きな影がアロンを包む。
アロンは恐る恐る後ろを振り向く。
巨大ドラゴンが興味深く後ろから覗いていた。
フッとアロンは気絶した。
夢の中で母様がいる。
「なっ???」
あぁ、そういうことか・・・・。
『Δειётф・・・・バカ!だから、お前は大人しくしてろって言っただろ!』
アロンがゆっくり眼を開ける。
エリザとリサが心配そうにアロンの側についていた。
奥でカノンがドラゴンに説教をしている。ドラゴンは頭を下げ申し訳なさそうにしていた。
「大丈夫ですか?あなた。」
「お父様。」
アロンはどこか現実味を感じないまま起き上がった。
「あぁ、大丈夫だ。心配いらない・・・・、そうか、そうだったな・・あの時、魔獣達がやって来て・・・・」
「お父様、3日も眠っていらっしゃったので心配しましたわ。」
「なにっ!そんなに休んでいたのか??そうだ!あの魔獣達はどうなったんだ!?」
「それは・・・・」
リサがカノンに視線をむける。
カノンがリサの視線に気付き急いでアロンの元に駆け寄った。
「良かった、アロンさん!すみません、あいつのせいで・・・・お体は大丈夫ですか???」
心配そうにカノンは話しかけた。
「あぁ、すまないな。迷惑をかけた。ところで、あの後どうなったのだ?」
カノンは事の次第を話始めた。
まずアロンが気を失ってしまったので、とりあえず皆で村に戻る事にした。
もちろん、村人達は怯えながら移動する訳だが・・・・
移動中カノンは村人達に事の次第を説明した。
皆、信じられないと言った表情で聞いていた。代表のアロンが気を失っていたので、どうするかは副リーダーのガムルに任された。
本音を言えば魔獣と暮らす事など容認出来るはずが無い。しかし、今、魔獣の気を損ね折角助かった村の皆の命を再び危険にさらす事は出来ないと渋々承諾した。
村の人達もガルムの考えを理解し仕方がなくその決定に従った。だが心の中ではこの状況が一刻も早く終わることを願っていたのだった。
その日、魔獣達は一旦自分達の住みかに戻った。しかし、その夜には一族皆引き連れシザの村に戻ってきた。
勿論、蜥蜴人族達もいた・・・・。
更におかしなことにギネを代表とするダークウルフ達も一族引き連れシザの村に舞い戻った。ギネは正式にカノンを主と認めたため今やダークウルフ達の長はカノンになっているという。
ということで、
ドラゴン・・・・ 1体
蜥蜴人族・・・・ 200体
大鰐人族・・・・ 100体
亀人族・・・・ 100体
ダークウルフ・・・・ 200体
がシザの村で暮らすこととなった。
勿論、全員村に入れる数ではないのでとりあえず
村の東に蜥蜴人族
村の西に大鰐人族
村の南に亀人族
そして北にダークウルフ達の居住区とした。
さっそく、魔獣達は各々動き始めた。
蜥蜴人族達は意外にも手先が器用であり森から木を切り出しては魔獣達の家を作り始めた。
その家はこれまた意外にも立派で村の人間の家よりも綺麗で頑丈そうだった。
次々と建っていく立派な家をガルムとマルコが興味深く見ている。最初は何かおかしなことをやらないか見張っていたのだが、その作業や出来上がりを見ているうちに興味が押さえられなかった。30m離れていたのが段々と近くなりついには家の中まで見学している有り様だった。
「あなた達!何をやってるの!!!」
ガルムとマルコは共に妻に怒られていた。
「いや、そのなんだ・・・・あいつらのあまりにも見事な手際についついな・・・・。いやいや、すみません。」
「でも、ガルムの旦那の言う通りだ。あんな技術今まで見たこともなかった。それに、あいつらの手際の良さっていつまたらもう・・・・」
「そうなんだよ!なっ、マルコさん。それに、あいつら俺たちが近寄っても何もしやしねぇ。むしろ、中まで案内してくれたんだぜ!何を言っているか言葉はわからねーが今度は俺の家も直してくれるみてぃだし・・・・。」
「あんた!!!!!そんな、夢物語みたいなこといってるんじゃないよ!!!」
二人はますますショボンとしていた。




