『凱旋』
投稿のペースが遅くなっており申し訳ございません。リアルの仕事が忙しかったり腰痛で入院したりとにかくバタバタでした。ゆっくりではありますが更新を再開しますので宜しければ引き続きお付きあい下さい♪
空は灰色の厚い雲に覆われていた。今の時間ならば丁度夕日が綺麗な時間帯だが太陽は雲に隠れ薄暗く冷たい空気が辺りを包んでいた。
リサ達シザの村の人々はカノンがダークウルフに託した手紙を読み村から離れた丘へ避難していた。
村の人々は互いに手をとりながら押し迫る不安と寒さに堪えていた。
少し後ろには数頭のダークウルフ達もいた。
(カノン・・・・お願い、どうか無事で・・・・)
リサは必死に天に向かい祈りを捧げていた。
アロンはそんなリサに薄い布切れを掛けてやる。
「大丈夫だ。カノンならきっと上手くやってるさ。今頃どうにか話を着けているに違いない‼」
父親は明るく話しかけたが現実を考えるとあまりにも絶望的な状況にすぐに元気が無くなった。
風が強く吹いている。村の人々はこのいつ終わるかわからない状況に絶望していた。魔の山からは冷たく強い風が吹き彼等の気力を奪っているようだった。
・・・・・・・・その時だった。
村人の誰かが気付いた。
「・・・なんだ?あれは?」
「えっ?何あれ?黒い雲が動いている???」
魔の山から小さい何かが飛び出たのが見えた。
風がより強く吹きだした。
「なんだ?なんだ?」
「鳥か???あれ。」
「わからない、でもこっちに向かってきてないか?」
「いや、あれ鳥じゃないぞ。もっと大きい・・・・」
村人達がいっせいに気付き一気に静まる。
誰かが震えた声で叫ぶ・・・・、
「ド、ドラゴンだ~!!!!!!!!!!」
「うわー!!!!!!」
「っ!!!!!」
村人達は一気にパニックに陥る。ある者は一目散に逃げようとしたが腰がぬけその場でバタバタしている。
またある者は瞬時に終わりを悟り涙を流し神に祈りを捧げている。
まるで蜂の巣をつついた様に各々バラバラに動きあたふたしているだけだった。
「村の者よ!静まれいっ!!!」
アロンは岩の上に上がり大声を上げた。
「皆よ、落ち着け!まずはここから皆で移動しよう!子供と年寄りも連れていく!!手を貸せる者は介助してくれ。まだ、時間はある!!直ぐにここから離れるぞ!!!」
アロンは持てるすべての気力を振り絞って語りかけた。
一瞬、村の者は正気を取り戻した。
「だっ、駄目だ。もう、遅い・・・・。なんてことだ、もう、もう間に合わない。」
村の青年リヨンは空を指差した。
この距離でもハッキリ分かる。巨大なドラゴン。
そのドラゴンほ真っ直ぐとてつもないスピードで此方へ向かってきている。
アロンはその状況に膝がら崩れ落ちた。
(・・・・ばかな・・・・。こんなことが・・・・。すまない・・・・みんな・・・・。かあさま。)
そこにいた総ての人間は逃げるのを止め祈りを捧げていた。辛うじて祈ることをしらないダークウルフの群れだけが立っていた。
風が勢いを増し嵐のように四方から吹き付ける。
そして、その風を身に纏ったように巨大なドラゴンが舞い降りた。
先程までの暴風は無くなり異常な静けさがあたりを包んでいる。
村の人々は伏せ目の前のドラゴンを誰も見てはいない。アロンも目を閉じただただ祈りを捧げている。
ダークウルフ達は村人達の前に立ち塞がっているが威嚇等はしていない。彼等は威嚇でどうにかなる相手ではないと瞬時に悟った。
だが、最後の抵抗位はしてやろうと全てのダークウルフは隙を伺っていた。
静寂は時の流れを長く感じさせる。村人達は誰もが祈りながらもどれくらい時間が経っているのかさえ分からなくなっていた。
1分?5分?一時間程経っている気さえする。いつ自分の命が奪われるかわからない、そんな恐怖はやがて絶望へと変わっていくのだった。
「おーい!みんなー!大丈夫だった~???」
とうとう幻聴さえ聞こえてきた。どこか懐かしい声。
目の前のドラゴンから聞こえるはずのない声が聞こえる。
村人達は自分の耳を疑い顔を伏せたまま怯えていた。
一人を除いて。。。
「カノン君!!!」
リサだけがその声の主に気付いていた。




