『真の実力』
ギネは約束の場所へと向かっていた。その速さは風の如く山の動物達は真横を何が通ったかさえ分からない程のスピードてあった。
(普通ならばおらぬだろうな。・・・・だが、奴ならば・・・・。)
ギネは深い森の中を抜ける。
岩の上には、所々ボロボロになった衣をまとい、身体中にも傷痕がある少年が座っていた。
『遅かったな!よしっ。行くとするか!』
少年はついこの前見たときよりもみすぼらしい格好だったが不思議と大きく見えた。
(あぁ、やっぱりこの者ならば・・・・)
ギネはフッと笑った。
カノンはギネの背に乗り魔の山を移動している。今向かっているのは3人の眷族の長の一人がいる住みかである。
というのも、竜王は最初に見たあの時以降姿を現していなかった。今、実際に喧嘩をふっかけてきているのが3人の眷族の長の一人なのだった。
『それで、相手はどんな奴だ?』
カノンはギネの背に乗ったまま耳元に近づく。
『前も話したが竜王はともかく、眷族の長と呼ばれる3人もなかなかに強い。元々奴等の個々の強さでさえ魔の山でも最上位だ。』
カノンは何かを考えながら聞いている。
『ところでにギネ!共闘になるんだ。お前のスキルも教えておいてくれないか?』
ギネは走りながら少し考えていたが話だした。
『我のスキルは《疾風怒濤:ストムレス》だ。最大通常の5倍のスピードで移動することが出来る。』
カノンは『成る程。』と呟きまた何やら考え込む。ギネは不思議そうにカノンの様子を伺っていたが間もなく、目的の場所へ到着した。
到着した場所のはダークウルフが何体か待っていた。崖の上から見下ろした場所に眷族達の住みかがあった。
『この者達は我々の一族でも満足に闘える最後の5人だ。それで、どうする魔獣の王よ。一気に攻め混むか?』
カノンはちょっと恥ずかしそうに答える。
『ギネ・・・。あの、、、俺の事は魔獣の王ではなくカノンと呼んで貰えるか?その、、、以前の話は忘れて貰えるか・・・・。』
カノンは肩に乗って引いた顔で見つめているハムスターの視線を交わしながら呟く。
・・・・・・・・。ギネはよく分からないが頷いた。
『いきなりの奇襲というのはどうなんだろう?俺は実際に奴等に会ったことがないし・・・・。ギネの言葉を信じてないわけじゃないが先ずは奴等と話してみたい。もしかしたら、お前たちと同じように戦わず事が収まるかも知れないしな。』
俺はそう言うと颯爽と崖から飛び降り住みかへ向かった。
一瞬、ポカーンとしていたダークウルフ達も慌ててカノンを追いかける。
『ごめんくださ~い。』
カノンほ大きな声で叫ぶ。
すると、藁で出来た簡易な小屋からゾロゾロと出てくる。
姿は大きなトカゲ、それが二足歩行で歩いている。こいつはいわゆる蜥蜴人族か・・・・。
しかし、こうして見ると本当に・・・・なんというか・・・・。
いよいよ、異世界だなと感じてしまう。
『このなかに長はいるか!?いるならば、話をしたい。』
蜥蜴人族は一同に驚いた顔をする。
(あぁ、やっぱり皆この顔になるのね・・・・)
少し俺は安心した。
『おいっ!この人間、今魔物の言葉を話したぞ!』
蜥蜴人族達は今度はガヤガヤと騒ぎ出す。
『うるせいっ!お前ら黙りやがれっ!』
一番大きな小屋から最後に一際デカイ蜥蜴人族が出てきた。
その蜥蜴人族はゆっくりとカノンを方へ近寄る。
『俺がこの一族の長だ。何故、人間ごときがここにいる?それに・・・・。』
蜥蜴人族の長は少し後ろにいるダークウルフを一瞥する。
ギネ以外のダークウルフ達は牙を剥き威嚇する。
蜥蜴人族の長はフッと笑い視線をカノンに戻す。
『んでっ!?お前らはなんの用があってここに来た!?』
蜥蜴人族の長はニヤニヤしながら喋る。
カノンは一瞬ムッとしたが直ぐに答える。
『いや、なにね。こいつらダークウルフがお前達に住みかや食料を奪われたようなんだけど、同じ山に住む物達なんだからこれからはお互いのエリアに干渉しないように平和にやっていかないか?』
俺は出来る限りの笑顔で話す。
それを聞いた蜥蜴人族の長は笑いながらゆっくりと更に近づいてくる。
一瞬、カノンも笑い返した時だった蜥蜴人族の長は背中から大きな太刀を抜きカノン目掛けて振るってきた。
間一髪の所でギネがカノンをくわえ太刀をかわす。
『おいっ!いきなりどういうつもりだ!このやろう!』
カノンは先程まで笑顔だった蜥蜴人族の長に向かって叫ぶ。
『黙れっ。人間如きの分際で。この、最強種の眷族である我々が何故貴様らの言うことを聞かなくてはならない!貴様らなぞ我々の糧にしか過ぎぬのだぞ!』
(くっ・・・、最強種の眷族って、有名人の親戚みたいなもんだろ!?どんだけ、偉そうなんだよっ!)
『おいっ!他の奴等!お前たちだって好んで争いなんかしたくないだろ!』
カノンは他の蜥蜴人族達に問いかけるが誰も反応が無い。
『無駄だっ!我々の掟では族長の意思は一族の意思だ。故に俺が貴様らを喰らいつくすと言えばそれが一族の意思なのだっ!』
蜥蜴人族の長は太刀を俺とギネに向け叩きつける。
ギネはその太刀を避けたが太刀の衝撃波によりカノンとギネは吹き飛ばされた。
『グハッ』
『ヌハハッ!雑魚共めっ!すぐに小間切れにしてくれるわっ!』
蜥蜴人族の長はトドメをさそうとギネに向かい走り出す。ギネはまだ立ち上がりきれていない。
(しまった。まずい、あれは避けなくてわ・・・・)
しかし、思った以上にダメージは残っており体が動かない。
ヤバイ。もう、駄目だ。
そう思った時だった。
目の前にカノンが太刀を素手で受け止めている。
『おいっ!糞野郎。いいんだな。そっちがその気なら俺も本気を出すぞ。』
少年は先程とは違う表情で睨む。




