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『魔の山の異変』

狼の声がした。その声は以前聞いたことがある声だった。

俺を呼んでいる。彼はこの村の近くではなく魔の山の麓から呼びかけてきた。


俺とビビットはその声のする方へ向かう。


魔の山は麓とはいえ不気味な様子を醸し出している。時々吹く風は魔獣の笑い声のようにも聞こえる。


『小僧、恐怖は相手に付け入るスキを与えるだけだぞ。』


肩にのっているビビッドが囁く。

カノンは頷き颯爽と歩きだす。


その魔獣は太陽を背にまるで大きな影のシルエットのように佇んでいた。


『来たか、魔獣の王よ』

そのダークウルフは以前あった時より一回り大きくなっているような気がした。


『久しぶりだな、ギネ。この前は約束を守ってくれてありがとうな。』


カノンはギネに初めて笑顔を見せる。


ギネはフッと笑ったように見えた。


『こちらこそ、あの時は助かった。おかげで一族、誰一人欠けることなく冬を越せたからな。』



『ところで・・・・・』

俺は少し険しい表情でギネに問いかける。


ギネも少し表情を強張らせる。

『あぁ、実は今この山で起きていることを其方にも知ってもらいたかったんだ。』


俺はその場に胡坐をかき座り込む。俺の肩ではビビットが偉そうな態度でギネを見ている。

ギネは一瞬ビビッドに視線が止まったがかまわず話し続けた。


『実はこの前の我々の行動とも関係があるのだが、ある魔物がこの山に住み着いた。』


ギネは悔しそうな、そして恐ろしそうに話始める。


『名は竜王モーグイ。魔物の中の頂点に君臨する種族の王だ。やつは眷属を引き連れ突如この山へ現れた。住処を追われた我々は食べる物も休む場所も無く彷徨っていたのだ。』


俺は黙って聞いていたが内心はバクバクだ!!。


(竜?ドラゴン???えっ?ドラゴンは魔物なの?えっ!?魔物はこのあたりにいないんじゃ・・・・・・え?魔物の頂点??)


ヤバイ・・・俺の中のキャパがすでにオーバーしている。


『落ち着け!小僧。』


表情に出してはいなかったはずだがビビットには分かったらしい。


『続けよ、狼!』


ギネは一瞬ムッとした表情になるが話し始める。


『竜王の力は次元が違う。一族皆でかかっても竜王一匹に全滅させられるのは必至。それに眷属のやつらもなかなかに強い。』


ギネの話では竜王の他にも眷属の長と呼ばれる3体の魔物がいるそうだ。そいつらは一体一体すらギネに相当する程の力を持っているのだという。ダークウルフの群れは最初こそ勇敢に立ち向かったが戦士の半分以上を眷属に倒されてしまった。

ギネは悩んだ。ここで勇敢に立ち向かい一族全員死滅の道を辿るか。誇りを捨て、逃げることを選び子供逹を守るか。


ギネは後者を選んだ。

これはダークウルフにとって、とても稀な選択だった。ダークウルフとは戦闘を好み、誇り高い魔獣なのだ。






『・・・・魔獣の王に頼みがある。』


嫌な予感がする。


『奴等は住みかを奪っただけでは飽きたらず今、また我々の全てを奪おうと攻めてきている。』


カノンは黙って聞いている。



『魔獣の王よ。これは、我々だけの問題ではない。やつらは、いずれ、お主の郷へも攻めこむぞ。』


俺は目を開く。


たしかにらギネの言うことが本当ならその可能性は高いだろう。だが、俺が手を貸したところで果たしてドラゴン相手に戦えるのか・・・・・・・・。



『少し、時間をくれ。』

俺は立ち上がる。



『時間は差し迫っている。三日後に迎えに来る。それまでに決めておいてくれ。』

ギネは風のように去っていく。


俺はビビッドを懐に入れる。



本格的に修業が必要だな・・・・・・・・。


異世界に来て初めて戦うことを決意する。


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