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『岩の城の決戦』

森の夜はとても静かだ。時折、鳥の羽ばたく音が聞こえるが冬の時期という事もあり虫の声もまったく聞こえない。部屋の暖炉では薪に火がついており時折バチッと何かが弾けている。



急に地鳴りが響き始めた。先程まで静かだった森では沢山の動物達が逃げ回っている。岩の城に巨大な蛇が到着する。蛇はなれたように扉を壊し、部屋へ飛び込んできた。



『ビビッド!どこだっ!隠れてないで出てこい!非力な小ネズミめっ!』

その大蛇は部屋を見渡す。


部屋の隅からハムスターがゆっくりと出てくる。



『さぁ!今日も【賢者の蜂蜜酒】を取りに来てやったぞ!さっさと出すが良い!』

大蛇はハムスターを睨み付ける。






ハムスターはゆっくりと、しかしはっきりとした声で答える

『もう、お前に【賢者の蜂蜜酒】は渡さん。お前は、すでにこの森の王になれたではないか?。』


大蛇は鬱陶しい表情で見下げる。



『だまれっ!この小ネズミが!貴様は黙ってあれを差し出すだけで良いのだ!俺に逆らうというのなら貴様ら一族もろとも食らいつくしてやるぞ!』



激しい殺気が部屋中に立ち込める。


ハムスターはビクビク震えながら喋りはじめる。




『今だ!さっさと、やれ。人間。』





大蛇はそれを聞いたが、こいつ何を言っているんだと思った。



シャンデリアの上からアロンとガルムが飛び降り、剣とナイフを突き立てる。



アロンの剣は右目を、ガルムのナイフは鼻の頭に突き刺さった。


『グォッ!』


大蛇が頭を激しく振る。アロンとガルムはその力で部屋の壁に打ち付けられた。

「クハッ!」二人はすぐに立ち上がれない。


大蛇も突然の攻撃と痛みにその場でもがいている。



ビビッドは杖を掲げ何かを呟いている。




『おのれ!糞ネズミが!調子によりよって!ましてや、人間どもの力を借りるだと!?貴様、それでもこの森の元、王かっ!?』



ビビッドは少し眉をピクッとさせたが詠唱をやめない。


大蛇は体勢を整えるとビビッドめがけ大きな牙をむき噛みつこうとした。


俺はすかさずロープを切る。



すると、天井の大きなシャンデリアは大蛇めがけて落下する。


グシャリ!


大蛇に直撃だ。



『今だ!ビビッド!』




ビビッドは大蛇に向け、杖を掲げる



『燃え尽きろ!ファイヤーボール!』


バランスボール程の大きな火の玉が大蛇に向かって飛んでいく。


ドンッ!ボワラッ!


大蛇と、シャンデリアは炎に包み込まれた。




俺は急いで二人の元へ駆け寄る。



良かった、二人とも大きな怪我はしていない。


「どうだ?やったか?」



目の前には何かの塊が炎に包まれ燃えている。



「大丈夫です。成功ですよ!」

俺は二人に笑って伝える。

アロンとガルムもほっとした表情で微笑んだ。


ビビッドが後ろから近づいてくる。


『ありがとう、人間達よ。癪だがお前達のお陰で助かった。』


俺は振り返る。



『ビビッド、約束は守ってくれるのだろうな?』


ビビッドは少し微笑む。


『フンッ!見くびるな。約束はちゃんと守ってやる。』



俺は安心し、二人にもそれを伝える。二人とも安心した様子だ。

四人は大仕事を終え、変な連帯感で結ばれた気がしていた。



その時だった!




燃えている塊から赤い瞳が光り、炎に包まれたシャンデリアがこちらへ飛ばされて来たのだった。



危ない!四人は間一髪シャンデリアを避ける。



目の前には炎に包まれた大蛇がこちらを睨んでいた。






『貴様らっ!許さんぞっ!必ず殺してやるっ!』



大蛇は炎に包まれながらこちらへ突撃してくる。



俺はビビッドを拾いあげ、急いで出口に向かう。



「アロンさん!ガルムさん!ここは一旦逃げましょう!」




急いで四人は城の外へと逃げだす。


大蛇はフラフラになりながらも俺達を追っかけて来た。




庭に出る。後ろからはまだ、追っかけてきている。



「アロンさん、ガルムさん。ここで迎え撃ちます!」



ビビッドとを地面に下ろす。



『ビビッド!さっきの魔法をもう一度撃てるか?』



ビビッドは答える


『少し時間が掛かってしまうが大丈夫だ。』


『わかった。どれくらい掛かる?』



ビビッドは少し考える。


『次は三分あれば大丈夫だ!』



城の中から炎に包まれた大蛇が出てくる。

その目はすでに暗くなっており意識があるのかさえ、わからない。



あの状態ならば三分ならいけるかもしれない。そう思った矢先だった。



突然、大蛇の背中が割れ何かが飛び出した。・・・それは、、、









一回り小さくはなっているがそこには先程の大蛇が立っている。

火傷の傷はおろかアロンとガルムが最初に与えた傷も治っている・・・・・・・・。




「・・・・・・・・何だとっ?」


アロンが絶望的な表情でそれを見る。




『小賢しいネズミ共めっ!この屈辱晴らすには、貴様らの命だけでも足りぬわっ!』

大蛇の目が大きく見開かれ四人を睨み付ける。





今のは


大蛇のスキル《脱皮:セカンドチャンス》であった。

瀕死の状態時に発動し全てのステータスが半分になるが今までのダメージを全回復するというものだった。



(しまった・・・・。)

俺は正直、後悔した。相手が蛇とわかっていたのだから、この脱皮についても予測出来ていたはずだ。油断か、緊張からなのか・・・・・・・・。俺は苦虫を潰したような表情になる。



ゆっくりと大蛇は近づいてくる。




だが俺は大蛇へ向かって走り出す。



「アロンさん!ガルムさん例の物を準備しおいてください!」



俺は走りながら二人へ叫ぶ。



大蛇は一瞬、驚いた表情だったが小賢しいとばかりに大口を開け、牙を向く。




その時だった、カノンの体が青く光りはじめた。

すると、カノンの走る速度が急に速くなる。

カノンは驚く。明らかに体が軽くなり速度があがった。体中から力も溢れてくる。





大蛇の最初の一撃は呆気なくかわされた。

大蛇は混乱しながらもカノンを見つけ、食いつこうとする。

カノンはとっさにその口へナイフを投げつける。

大蛇の口にナイフが突き刺さる。大蛇が天を仰ぐ。その瞬間にカノンの正拳が腹に突き刺さる。


大蛇が10メール程吹き飛ばされ大木にぶつかる。



『ばかなっ!』

大蛇は何が起こったのかわからなかった。

ひ弱な人間の少年に噛みつこうとしたら気付いたらここまで吹っ飛ばされていたのである。




目の前の人間の少年がゆっくりとこちらへ向かってくる。

その時、大蛇は産まれて初めて恐怖というものを感じたのであった。







俺は今の自分の状態を確認する。

もしかして、これが神様からもらった恩恵というやつか???


そう、カノンはスキル《神体強化術:ジンガ》を無意識に発動していた。このスキルは身体能力の大幅アップである。

実は《身体強化術:シンガ》という、似たようなスキルもある。


詳しいことは明かさないがこのカノンの《神体強化術:ジンガ》はそれよりも遥かに上位のスキルだった。



カノンは未だ自分の身体を確認している。



(なるほど。これなら、この大蛇相手でも・・・・いけるっ!)



俺は走りだす、


大蛇は慌ててカノンに向けて、尻尾を振り上げる。



ばたん!!!!!!!

カノンに直撃する。



(やったぞ!当たったぞ!)

大蛇が安心した時だった。



『そんなものかっ?』



慌てて尻尾の下を除くとカノンは片手で尻尾を防いでいた。



!!!!!!!!!!


瞬間、カノンはその尻尾を掴み振り回す。

ハンマー投げの様に遠心力を使い、大蛇を空に高く放り投げた。



ドスンッ!!!!

大蛇が叩きつけられる。フラフラになりながら、すぐにカノンを探す。


(いっ!一体何者だ!あの人間の少年は?あまりにも強すぎる・・・・・・・・。人間がこの森の王より強いだと!?


それに、やつは確かに魔獣の言葉を喋った。まるで、あの御方の逆ではないかっ!?)

慌てて周りを探すが先程の少年の姿はどこにも見当たらない。




カノンはすでに大蛇の後ろへ周りこんでいた。

左手を突きだし右手に力をためる。身体中が青く光る。






そらばだ!森の王よっ!







ペチンッ!

カノンの渾身の正拳が大蛇の背中へ突き刺さった。









しかし、大蛇はなんともなっていない。

カノンは目を丸くする。


あれっ?????



もう一度力をためる。イメージはあの漫画!

さぁ、解き放て!俺の一撃!!!!



ペチンッ。




大蛇も目を丸くしてこちらを見ている。




あれれっ?????もしかして・・・・・・・・時間切れっ!?





テヘペロっ。



大蛇の尻尾が俺を吹き飛ばす。



グワッ。5メール程吹き飛ばされた。


とっさに、両手でガードしたがたぶん両腕の骨は折れてるだろう。



(やばいっ!どう考えても今のは俺がフラグ立ててしまった結果だろう・・・・・・・・)



大蛇は一直線に俺に向かってくる。



『人間のゴミが!この俺に勝つだと!?貴様はここで、噛み砕いてやるわ!』



やばいっ!やばい。これは本当にやばいっ!

その時だった。アロンとガルムが大蛇を挟むように平行して走っている。手には中瓶を2本ずつ持っていた。



「二人とも!今です!それを大蛇の顔に投げてください!」


二人は頷き、大蛇へ目掛けて投げつける。




ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!



全て大蛇の顔に当たった。



『なっ!なんだこの匂いは?????グハッ!喉が焼ける。鼻もげるようだ!』







瓶の中には木酢液が入っていた。






皆さんはご存知だろうか?木酢液とは炭を作るときにその煙から抽出出来る液体である。家庭菜園等をやっている方にはお馴染みであるがこの液は虫の寄せ付けを防止してくれる。

実はこれ、蛇にもよく聞くのである。本来は木酢液は薄めて噴霧するものだのだが今回は魔物相手で効くかどうかもわからなかったので原液のままぶっかけたのである。



大蛇は苦しそうにもがいている。



『今だ!ビビッド!』



ビビッドが正面で杖を構えた。


『今度こそ、これで最後だ!喰らえー!ファイヤーボール×3倍!』



小さな光が大蛇に向かう。その光が大蛇に触れたとき大爆発が起こった。



『おっ!おのれ!小ネズミども!貴様らは!いずれ、我が王がっ!!ぐっ、グワラベッ!プハッー』





ドカーン!!!近くにいた俺達もかなり吹っ飛ばされる。













気がつく。先程まで、大蛇がいた場所には大きな穴が空いている。近くには大蛇の肉片が散らばっている。



俺はウェッ!と思いながらアロンを探す。


いたっ。アロンも気を失っているようだ。


「アロンさんっ!アロンさんっ!起きてくださいっ!」

頬を軽く叩く。


「うっ、うーん、どこだっ!?どうした?」


良かった。アロンが気付いた。



「大丈夫ですか?」


アロンは周りを見渡して思い出そうとしている。


「そうだ!あの大蛇は?どうなった?」


俺は無事、退治出来たことを伝える。

ガルムを気が付きこちらへ歩いてきた。


やっと、終わった・・・・。まわりは瓦礫だらけだ。俺もアロンも、ガルムも傷だらけである。


三人はその場で倒れこみ空を見上げた。


空はすでに明るくなってきており、もうすぐ夜が明けようとしていた。


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