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『妖精の森』

アロンは周囲に気を付けながら先頭を進む。ガムルもすぐ隣を自慢の鎌を持って歩く。

静かな森だ。時々見かける生き物は初めて見る生き物だったがこちらを襲ってくるような様子はない。

この世界の生き物は大きく三種類に分類される。動物、魔獣、魔物。

魔獣、魔物に関しては専門家によると更に細かく分類されるらしいが一般的にはこの三種類で分けられている。

数は動物が圧倒的に多い。先程から見かける生き物も動物に分類される生き物だそうだ。

動物に関しては前世の動物とさほど変わらない。同じ種類や似たような種類の生き物もいる。ただ、厄介なのが動物と同じような見た目でも魔獣や魔物の場合があるそうだ。可愛い見た目でも決して、油断はならないのである。



かれこれ森に入ってから三時間位経つ。森には道が整備されているのだが、いつどこで魔獣が襲ってくるかわからず警戒を怠れない。自然と進む速度は遅くなり5時間経っても目的の場所まで辿り着けてはいなかった。三人の視界から生い茂った木々が開かれ大きな湖が広がる。



「二人とも一旦ここで休憩にしよう。」

アロンが背負っていた荷物を地面に置く。

ガムルは辺りから燃えそうな木々を広い集めている。


俺は湖を見てみた。

透明な水でとても綺麗だ。持っていた水筒に補給する。


向かいの岸で何かが跳ねた。

確かめようと目を凝らすがここからでは遠くて良く見えない。



「帰りの時間も考えるとあと、二時間であの場所までたどり着かないと陽が暮れてしまうぞ。」


ガルムは薪に火をつけながら話す。

あの場所というのは【賢者の蜂蜜酒】があるとされている場所だ。





村に良く来る商人の話である。ある男が長年の病気に耐え兼ね妖精の森で、さ迷っていたところ大きな岩で出来た城があったという。男はこんなところに誰か住んでいる人間がいるのかと中を確認したがそこには誰もいなかったという。男が帰ろうとした時どこからか甘い芳しい香りが鼻に伝わってきた。男が辺りを見回すと茶色い小瓶がテーブルに置いてあったという。その小瓶からは栓がしてあるにも関わらず芳醇で濃厚な蜂蜜の香りがしたという。


男はその香りに惹き付けられその場でそれを飲み干したという。

すると急に身体が軽くなり今まで感じていた痛みが無くなったという。男は急いで里に帰り、医者に見てもらったところ治療が難しいとされていた病気が治っていたのだという。


この出来事は去年の話ということだ。それを聞いた、たくさんの人間は妖精の森へと向かったがその多くは途中で出くわす魔獣や深い森に阻まれ引き返してきたという。なかには妖精を見た!という者までいた。


※この世界でも妖精は架空の生き物とされている。


「一刻も早く、持って帰らねば手遅れになってしまうかもしれん。」



ガルムは焦る気持ちを必死に押さえようとしている。もしかすると、アロンや俺に気を使っているのかも知れない。アロンはそっとガルムの肩に手を落とす。ガルムはそれに頷く。


15分ほどの休憩を取り終え湖の淵を沿うように進む。時々木漏れ日が湖に反射しキラッと光る。俺は歩きながら妖精の事を考えていた。



本当にこの森に妖精がいるのだとしたらどんな奴なんだろう。前世のゲームや漫画では妖精キャラはたくさん出てきたがいい奴だったり悪い奴だったり・・・・、どっちとも言えないんだよなぁ。


一瞬そんな事を考えていた。


その時だった。湖から凄い勢いで何かが迫って来た。アロンは道具屋に用意してもらった剣を強く握りしめ構える、ガルムは愛用の鎌を構える。俺はあわててナイフを取り出す。


湖から出てきたのはバカでかい蛙だった。


「こいつは・・・・・・、ブルーフロッグだ。」



あっ、たしかに青色だ。

二人は俺を護るように魔物と間に位置し対峙している。魔物はジーっとこちらを見ている。



アロンとガルムは同時にチラッと俺の方を見る。


(っあぁ、俺の出番か。)


俺は二人より前に出て話しかけてみる。


『こんにちわ。おじゃましてすみません。私達はあなたに危害を加えるつもりはありません。この先に用事があるので通して貰えませんか?』



蛙の表情は変わらない。


『・・・・あのぉー、聞こえてます?』



蛙をもっと近くで下から覗こうとしたその時だった。



『餌は王へ献上する』




ブルーフロッグの舌が鞭のように俺に向かって来る。

俺は寸前でそれをかわす。

地面にヒビが入っている。


あわてて、後ろに控えていた二人が助けに入る。



『おいっ!こら!いきなりはねーだろ!人の話聞いてんのか!!』


俺は青蛙に叫ぶ。


『餌は王へ献上する』


こいつ、さっきから同じ言葉しか喋りやがらねー。


蛙は舌を振り回しまた叩きつける。

ビタンっ!今の攻撃で土煙が舞うが幸い誰にも当たっていない。



「この、蛙めっ!」


ガルムが足下の下に向かい鎌を振り上げる。



『ギャヒー!』


蛙の下にガルムの鎌が突き刺さる。


蛙は慌てて湖へ逃げ込んだ。



「あっ!おいっ!待て!」


ガルムは必死に追いかけたが蛙はひとっ飛びで湖に飛び込むと水のそこ深くに泳いで行ってしまった。



「あの野郎!俺の鎌を持っていきやがった!」


ブルーフラッグの舌にはガルムの鎌が刺さりっぱなしのままだった。




アロンは自分の予備のナイフをガルムに渡した。ガルムは渋々それを受け取り懐にしまったが、その後も名残惜しそうに立ち止まっては湖を見ていたのだった。

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