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『嵐が過ぎ去り』

陽は沈み辺りは真っ暗になっている。

アロンと俺は家に向かって歩いている。

家には灯りが灯っていない。



コンコン。

「エリザ。たった今戻ったぞ。」


すぐに扉が開く。エリザがアロンに抱きつく。


「・・・・あぁ、あなた。良かった無事で。」

余程心配だったんだろう。アロンの胸に顔を埋めて泣いている。


リサもアロンに抱きつく。


「お父様!!!良かった。本当に良かった。」

リサも泣いている。


そうだよな。心配したよな。良かった。無事にアロンをこの家に戻す事が出来て。僕は彼女達を見て微笑んだ。


リサが直ぐにこちらを見る。

僕はニコっと笑ってみせる。


リサが僕の元へ駆け寄る。


あぁ、リサ良かった・・・・って!!!!


ビタンッ!



僕はリサにおもいっきり、ぶたれた。


(・・・えっ????えーっ????ぶたれた???今、ぶったよね???親にもぶたれたことないの・・・・っ!!!)




ビタンッ!



返しの掌の裏でまたぶたれる。



(駄目だ。これ駄目だ。余計なこと考えるのやめよう。)



「ばかっ!カノン君のばかっ!心配したんだから。死んでしまったらどうするのよっ!」


リサは大泣きして、ポカポカ僕を殴る。


「ごめんね。リサ。」


リサは殴るのを止め僕と抱擁する。


しばらく、女性二人は興奮しながら泣いていた為俺達は彼女達を落ち着かせながら宥めた。



「でも、本当に良かったですわ。お二人とも無事で。お二人ともお怪我はされてませんか???」

やっと、落ち着いたエリザが二人に尋ねる。



「あぁ。見ての通り傷ひとつ付いてないよ。これも、すべてカノンのお蔭だよ。」


エリザとまだ少し興奮気味のリサも驚いた様子で俺を見る。


「カノン君のおかげ????」

リサは涙の後を吹きながらアロンに尋ねる。



「実は、ダークウルフとは戦っていないんだよ。詳しい訳は今からカノンに説明してもらいたい。カノン、いいかい???」

俺は頷く。


「実は・・・・」


俺は事の顛末を話始める。

魔獣の声が聞こえたこと。

魔獣が飢えに困っていたこと。

魔獣と交渉したこと。

魔獣が約束を守り引き揚げたこと。


それらを、3人に説明した。ただ、


自分が異世界から来たこと。

転生者で前世の記憶があることは敢えて言わなかった。



3人は驚いている。とくに、女性二人は口を開けてポカーンとしている。


あっ!魔獣と一緒だ。


アロンは頬っぺたを掻きながら困惑の表情を浮かべた。


「いやはや。何というか。ちょっと普通では信じられない話だな。しかし、さっきの事を思い出すとそれで納得はいく。いや、いや、本当に信じられない話なんだが・・・」

気のせいか、アロンの俺を見る目に少し畏怖が感じられた。



女性二人はまだ、口を開けたままだ。



「俺も未だに信じられません。ですが、皆さんを救えたのならこれ程嬉しいことはないんです。」


アロンはそれを聞き安堵した表情になる。


エリザとリサはそれでもまだ今の話を半信半疑に捉えていた。


「でも、まずは二人が無事だったことに感謝しましょ。昼間の料理が少し残っているわ。今から暖めるので夕食にしましょ。」


4人はやっと、笑顔になった。


その時やっと、イロスが目を覚まし起きてきた。


「ママ、おちっこ。」


4人はイロスへ駆け寄った。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日、村の中心には全ての人達が集まっていた。

村人達は昨日の話をしている。道具屋のマルコ、仕立て屋のフッコは興奮しながら身ぶり手振りを交え村人達に話をしていた。

ガムルは腕を組み目をつぶり黙って座っている。


そこへ、俺とアロンが到着する。先程まで大騒ぎだった広場は急に水をうったような静けさになる。


アロンは皆の中心へ歩いて行く。


「皆!昨日は大変だったな。今、こうして誰一人、傷つかず乗り切れたことはまさに神のご加護としか言いようがない。」


皆、黙って聞いている。



「すでに昨日起こったことを知っている者もいるだろうが改めて説明させて貰いたい。」



アロンは昨日俺が話したことも含め皆に丁寧に説明した。一通りの説明が終わったあと最後にこう言った。


「これで、この村の危険は無くなった。また、今日から頑張っていこうじゃないか!!!」



その時、誰かが呟いた。


「本当にその子は大丈夫なのかい?もし、魔獣と通じていたら・・・・」


その一言を皮切りに皆が声を出し始めた。


「その子がいい子なのはわかっているよ。でも、魔獣の言葉を話せる子なんて、本当に安全なのかいっ?」


「何を言っている!彼はこの村を救ったじゃないか。これからもこの村を守ってくれるに違いないよ。」


「私はこの子が魔獣を呼び込まないか心配だ。」


「皆、何を言っている。この子は魔獣とは関係ないんだろ。」


「いいやや、しかし、昨日、ダークウルフ達はこの子に頭を垂れたそうじゃないか。」


皆が各々の意見をぶつけ合う。普段は温厚な村の人達も目くじらを立て大声を、あげている。



「静かにっ!!!!!!」



ガムルがその体に似合わない大きな声を出す。

一斉に皆、静かになる。



「村長様から御言葉があるそうだ。」



リサに支えられながらゆっくり村長が歩いてくる。

そして、椅子に腰掛け穏やかに喋る。



「村のみなよ。よく、お聞き。みなが心配する気持ちはよくわかる。だか、その子は危険ではないよ。彼はいずれ、人と獣を繋ぐ者になる。その時、世界に光がもたらされるだろうよ。」



皆は互いに顔を見合わせている。



ガムルが前に出る。


「聞いたか!皆の者よ!この子が未来の勇者である!!!」








・・・・・・・・「うぉーーーー!!!!」

「勇者万歳ー!!!!!」


村人全員が両手を上げ歓喜している。








(えっ???ちょっと待ってよ!!!俺、勇者なの???)



頭が大混乱のままリサに目をやるとこっちを見ながら小さく口の前で拍手をして微笑んでいた。


俺は少し照れてしまった。

あれを見るまでは・・・・・・・・








リサの横では村長が椅子に立ち、両手を突き上げ「勇者、サイコー!!!!」と叫んでいた。

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