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守りたいモノ  作者: 狗月
4/4

夢とほんの少しの平和4


―――

 彼女は水に落ちていくような錯覚に陥った。深い深い水底へ誘われているようだった。いくら足掻いても落ちていくばかり・・・・・・。それが気持ち悪くて飛び起きてしまった。


「ッ、ハァ・・・ハァ・・・。」


 ジュリアは、急に飛び起きたせいか、心臓がバクバクと激しく脈を打ち、少し息苦しく感じた。ゆっくりと深呼吸を何度か繰り返し、息を整え、気持ちもだんだんと落ち着いてきたようであった。

 夢の内容はうまく覚えていないが、気分の悪い夢ではなかったはずだが、なぜ、こんなにも苦しいのだろうか、彼女は心の中でそう呟くと、考えていても答えが見つかるはずもなく、気分の悪さを振り払うように、ベッドを降りては窓辺に立ち、カーテンを勢いよくシャッと開けると、心地よい朝日が部屋の中へと入る。両手を精一杯伸ばし、背伸びをすると、コンコンッと、軽くノック音が静かな部屋に響いた。


「ジュリア、おはようございます」


 ドアの外から彼の凛とした声が聞こえた。ジュリアは返事をしようと口を開いたが、何やらひらめいた様に口端を吊り上げて笑みを浮かべた。


「・・・・・・・・・・・・」


 いつもなら明るい声が聞こえてくるはずだが、部屋の中から返事がないことに多少の不安を覚えた狛は失礼します、と声を掛けながら、勢い良くドアを開けた。すると、ゴンッと何かがドアにぶつかる鈍い音がした。まぁ、なんとなく予想のついた彼は呆れたような目線をぶつかったであろうものへと向けた。彼の予想通り、ジュリアはドアに頭をぶつけ、痛みに耐えつつ頭を押さえしゃがみこんでいた。


「どうしてそうなったんですか?声掛けたのですから返事をして下さい。心配して入って来るのも、予想出来るでしょう」


 彼は呆れたような口調で一気に言うと、慣れた仕草でジュリアに手を差し出した。彼女は彼の手を借り、立ち上がっては少し拗ねたように口を尖らせつつ言った。


「だって、狛のこと驚かせてみたかったんだもん」


 狛と言われた彼はクスクスと笑いながら、何とも愛らしい答えに更に笑みを深めた。


「はいはい。まぁ、怪我しない程度に頑張って下さいね」


 ジュリアはこの狛の余裕あり気な物言いがあまり好きではなかった。自分が子供だと言われているように聞こえるからである。まぁ、彼女自身も狛が自分の事を馬鹿にしているなどと思ったことは一度もない。彼の性格、そして第一守護者である彼の立場上しょうがないことである。

 守護者とは魔王を守る者、字の通りである。守護者は魔王が即位した年に種族の中で力が強い当主、四名選ばれる。選出方法は魔王の城の一角にある、『選昌の間』という部屋があり、その中心には水晶がある。その水晶に魔王自身が触れると、四つの色を持つ羽が舞い降りてくる。その色で今回の守護者を選出するのである。

 種族にはそれぞれ、色が与えられている。ちなみに狛は『白』、翠は『緑』、紅は『赤』、蒼は『青』、黒玄は『黒』。

 お気づきだろうか?普通は四色の羽根が下り、選出される。今回、ジュリアの場合は五色の羽根が舞い降りたのである。それは、魔王に、魔界に、試練があるという証拠。どうして、試練であるかというと、『黒』の種族が守護者として選出された魔王はすべて災難が降りかかり、魔界に混乱をもたらしている、そういった記録が残っているのである。


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