夢とほんの少しの平和2
眠りについている彼女は夢を見ていた。それは彼女が無知であった頃、平和で守られていたころの夢であった。
そこはジュリア一人にとって、広すぎるぐらいの城で寂しく、楽しい場所ではなかった。魔王の城ということで、とてつもなく広く、仕えるメイドや城を守る騎士など様々な者が近くにいるものの、彼女には魔王ということで恐れをなし、近付く者がいなかった。そして、友人と呼べるものなどいなかった。ましてや彼女と同年代の者など更にいるはずもなく、彼女は孤独であった。だが、幼い彼女はとても純粋でそんな境遇にも特に気にすることなく、綺麗な庭で花を愛でたり、時折飛んでくるイグナーと呼ばれる小鳥のような生物と戯れたりと彼女は静かに城で過ごしていた。
そんな日常は変わったのはある青年たちが彼女のもとへ訪れた日の事。その日も特に変わったことをしていたわけではなく、いつもと変わらず綺麗な自慢の庭へ出て、小さな花を見つけては小さく微笑んでいた。
そんな彼女の後ろへ何人かが近づいた。彼女はそのことにすぐには気付かず、自分が庭の花を見る為にしゃがんでいたところへ、影が差したので後ろを振り返った。
「お初にお目にかかります、陛下。私は狛と申します。守護者として、ジュリア様を御守りする為に参りました」
銀髪の髪を持った青年が六歳頃のジュリアに跪いて、目線を合わせるとニッコリと中性的な笑みを浮かべた。ジュリアは少し驚いたように銀髪の髪を持つ、狛と名乗る青年を凝視した。彼女は「陛下」と呼ばれることに慣れていないらしく、自分が呼ばれたことに気付いていないようであった。すると、隣に深い緑の髪を持った女性もジュリアに跪き、軽く頭を下げた。
「ジュリア陛下、私は翠と申します。狛と同じく貴女を御守りする為に参りました。お役に立てることなら、なんでもいたします。」
彼女もニコリと優しく笑い掛け、貴女に話しかけているのです、というように戸惑うジュリアに対して自己紹介を続けた。そして、続けて、と言い、彼女の隣にいる2人を紹介した。
「こちらの2人も守護者ですが、ジュリア様の2つ下でこちらが紅、それから、蒼。失礼が多々あると思いますが、申し訳ございません」
ジュリアは翠の言葉などは聞いておらず、同じぐらいの年代ということに嬉しい様子で2人を見つめた。彼女にとっては初めての友人になれそうな2人なのである。紅と呼ばれた少女は長くて綺麗な赤の髪を持っており、チラチラとジュリアの様子を見ては目が合うと嬉しそうににんまりと笑みを浮かべていた。
蒼と呼ばれた少年は少女と同じく長い髪だったが、色は綺麗な透き通った湖を連想させる青色である。そして、長い髪を緩く後ろでくくっている。一瞬冷たい様な印象であったが、ジュリアと目が合うと少し恥ずかしそうに目を伏せた。翠は「最後に・・・」と黒髪で髪が肩につくかつかないかぐらいの長さの青年を見た。