囀ル私ト陽~過去編
それからというもの私は心が空っぽになった。学校に登校する回数も減り、やがて登校をやめ自宅に引きこもり荒れた生活を送った。
皐月が小さい頃に綺麗と褒めてくれた黒髪は枝毛が生えごわごわになり、皐月が好きな音楽も聞かなくなった。そんなことをしたって無駄だ。どうせ皐月とはもう話さないのだから……。
そんな生活を始めて一年が経ったころ、皐月が家に帰ってこなくなった。このことによって心の中に少しだけ残っていた皐月への恋心は完全に消え、ただ虚無感が残った。
そんなある日、私はコンビニに出かけようと着替え始めた。のんびり着替えていると、家に備え付けられたインターホンが鳴った。私は面倒くさかったので居留守を使おうとした。しかし、インターホンが鳴りやまずうっとおしくなった私は思わず玄関に赴いてしまった。
「うるさいです。やめてもらえます……って、陽?」
そこに立っていたのは、小学校からずっと一緒のいわゆる幼馴染といえる関係である矢幡陽だった。
「久しぶり~。 元気だった?」
陽は袋を掲げると家の中に入ってきた。私は呆気にとられたが正気を戻すと陽の進行を止めた。
不思議そうな顔をする陽に私は仁王立ちをして質問をした。
「どうして来たの! いまさら何よ」
「なんでって、今日中学の卒業式だったから」
私が固まってしまった。なんで卒業式の日に来るのよ……笑いに来たの? あなただけ卒業してない「声、漏れてる」
「声漏れてるよ。 心の声が」
どうやら声に出てしまっていたらしい。私は慌てて弁解しようとしたが陽が遮るように言葉を続けた。
「お祝いをしに来た。 卒業祝いをね」
再び私は固まってしまった。思考が追い付かない。どういうこと……?
「な、なんで? あなたにも友達関係が「お前のお兄さんに頼まれたんだよ。 皐月さんに妹を祝ってやってくれとね」