囀ル私ト兄~過去編
私は、鈴宮凛音。今年で18歳となる。
両親共に仕事で忙しく、全くといっていい程構ってはもらえなかった。
そんな私の面倒をしてくれたのは、二歳年上の兄 皐月だった。
皐月はとても優しく、いつも泣いてばかりいた私のことを助けてくれたり慰めてくれた。そのため、私も皐月のことを信頼していた。
歳が経つにつれ、私は自分の中に一つの感情があることに気が付いた。そしてそれは皐月と家の中で顔を合わせると胸を締め付けてくる、茨のような感情だった。そのうち私はこれが友達が話していた恋心だということに気が付いた。
それからというもの、妙に皐月のことを意識してしまい段々と会話もぎこちなくなっていった。
しかしそんなことが続き、とうとう私はこのぎこちない空間が嫌になった。嫌になったというより、耐えられなくなってしまったのだ。
そしてある日とうとう私は聞いてしまった。
「お兄ちゃん、私のこと好きー?」
そう皐月に聞いてみた。すると皐月はにっこりと笑い、
「うん好きに決まってるじゃん。なんで?」
と聞き返された。単純な私は皐月に面と向かって「好き」と言われ有頂天になった。しかしその夜よくよく考えてみれば、あれは妹として「好き」と言っているのであって女としては見ていないということに気が付いた。
私は悲しくなった。その日は枕がびっしょりと濡れてしまうほど泣き、いつの間にか眠っていた。
年は流れ、私は中学に上がった。しかし、皐月への気持ちは変わらずむしろ昔より締め付けが激しくなっていた。
ところが事件は突然起きた。
私が中学二年生になった頃から皐月は私を避けるようになった。
理由は分からなく、話しかけても生返事が返ってくるだけだった。
私は初めて避けられた時、それは酷く泣いた。自分には覚えが無く、もしかしたら何か皐月の癪に障ることをしてしまったのではと思った途端に泣き出してしまったのだ。
それと同時に私は自覚した。
ーーこれで私と皐月の関係は崩れてしまった、と。