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異世界転”世”(仮タイトル)  作者: 山本君
一章、妖怪退治してきた勇者の帰還
3/12

03、巻山と勇者

 二木神社の事が、一段落したし、アパートに戻ろうかね。


「さて、一旦帰るか」

『そうですね』

「「はい」」


 と、返事を聞いて、清姫さんと浄姫さんの事をどうしようと、今更なことに思い至る。

 いや、それよりも、これからの事とか、何も考えてなかったよ。

 どれだけ調子に乗ってたんだよ。


「清姫さん、浄姫さん。

 これからのことなんだけど、大分不便な事になると思うんだけど、ごめんね」


 まあ、暫くは貯金を下ろせば問題無い筈だけど。

 家とか狭いしなぁ。


「その辺は、心配ないかと」


 フォウさんが、こともなげに言い放つ。


「どういう事?」

「私達は食事も何も、特には必要ありません」

「普段は姿を消して、傍に控えております」

「一哉様のお邪魔にはなりませんから」

「ただ、少しお願いが」


 別に、ちょっと位と言わずに、お願いは言って欲しいかな。


「できれば、煙草は控えめにして頂ければと」


 あ、そういや、蛇避けなんだっけ? タバコのヤニ。


「勿論、というか、吸わないし」

「では、時折で構いませんので、甘味とお酒を……」

「俺も好きだし、構わないよ」


 パッと明るい顔になる二人……意外と子供っぽいのか?

 まあ、蛇は酒好きそうだけど。


「あとは……」

「……」


 二人が俯いてモジモジし始めた。


「何? 遠慮しないでいいよ」

「その……頂けると」

「お、……を」


 なんだか二人して、じりじりとにじり寄って来て、俺のシャツを摘んだかと思うと、浄姫さんに涙目で睨まれた。

 清姫さんは俯いたまま、俺に指先でのの字を書いてるし……地味に痛いんですけど。


「今のが察せられないとは、カズヤさんは鈍いですね。

 お情けを。 つまりは抱いて下さいということです」

「「…………!?」」


 フォウさんが、いきなりぶっちゃけた。 

 おうおう、二人の白い首筋が一瞬で朱に染まったよ。

 鈍い俺が悪いのか、デリカシーのないフォウさんが悪いのか。


「いえ、砂吐きそうなのを、傍で見てるとイラッと来たので」


 ヒデェ話だ。


「知りませんっ!!」「っ!!」


 二人してそっぽ向いたと思ったら、俺の影に飛び込んで、チャポンと沈んだ。


「え!?」


 自分の影の上で、軽く地団駄踏んで見る。


「普通に地面だよな……かなりビックリしたんだけど」

「いろんなタイプが居るので、いちいち驚いてても、仕方がないと思いますよ」


 さいですか、フォウさん。

 といったところで、二人がすねちゃったのか、話しかけても返事してくれない。

 なんか、睨まれてる気配がするので、傍にいるのは感じるのだけども。


「仕方ない。 さっきも言ったけど、一旦帰ろう」


 そして、鳥居の所に差し掛かった時。


「カズヤさん、隠れて下さい」


 え? と思ったが、咄嗟に体が動いて、鳥居の影に隠れる。

 正直、何方からの話か判らなかったので、正面から来る者と考えた隠れ方になった。

 果たしてそれは、正解だった様子で。


「此方で合ってるのかっ!! 蜘蛛切っ!!」


 なんか、凄い勢いで階段駆け上がってきた、小学生くらいの男の子と行き会わずに済んだ。


「なんだ? あの子……」


 身長140センチ有るか無いか位の、本当に子供子供してる子なんだが、片手に刃渡り80センチ位の、凶悪な雰囲気を持つ刀を握っている。

 それも、全く苦にしていない風で、至極使い慣れた様子である。


「もう、終わってるって? どういう事だよ。

 他に誰かが何かをしてるってことかよ」


 なんか、一人で……いや、あの視線からすると、もしかして刀と喋ってるのか?

 これは、俺がフォウさんと話している経験から思いついたことで、もしそういうことを知らない人なら、かなり危ない奴の認定をされるだろう。

 でも、刀と喋るような奴って。


「勇者ですね。 あれが」

「やっぱり」

「危ないタイミングでした」

「でも、これからどうするんだよ」

「幸い、気配は掴まれていないようです。

 まだ、あの二人の気配が濃密に残っているせいで、此方には気付いていないようですね。

 今は下手に動かないほうが良いでしょう」


 そして、そのまま息を殺して隠れていると、勇者くんも諦めたようで神社から引き返していった。


「残りは、百足と蜘蛛……きっと、やっつけてやる」


 最後に息巻いて放った言葉は、俺の背筋に怖気の走る、マトモな子供ではない怖さがあった。


「うわー、無いわぁ。

 あんなガキが、近所に居たとか怖いんだけど」


 隠れていた鳥居の柱に凭れ掛かりながら、脱力した俺は暫く動けなかった。


「ふう」


 暫くして、体がしゃんとしたので、階段を降りて、置いてあった自転車の場所に。

 そして、どこかに依る元気も無くなってしまったので、家に戻ることにした。


 家に戻り、近所のオバちゃんに貰った芋けんぴで、清姫さんと浄姫さんの機嫌をとったあと、これからどうしたものか、話しあうことに。


「勇者とか、本当に怖いんですけど」

「本気で殺しに来ますからね」


 あっさり言わないでよ、フォウさん。

 卓袱台囲んで、皆で芋けんぴとホットミルクで、お茶会なう。


「正直、勇者が変異の原因を片付けてくれるなら、それでいっかーとも、思ってたんだけど。

 なんか、ただ待ってると碌でもない事に、なりそうな予感がするんだよね。

 できれば、此方でさっさと片付けた方が、良いのかもしれないってね。

 下手に後手に回ってると、何時どこでカチ合って、何かの弾みで敵認定されたりとか、気が気じゃないよ。

 最終的には勇者を、どうにかしないといけないにしてもさ。

 俺としては、此方からも動いて、イレギュラーは、さっさと片付けたい。

 せめて、場所の分かってる百足は何とかしたいかな」

「そうですわね。

 巻山の長虫なら、今は身動き取れないですわ。

 多少痛めつければ、きっと一哉様の足元にひれ伏すでしょう」

「くすくすくす」


 ちょい、もしかして、なんか蛇さん達は百足さんに、何ぞ恨みでもあるんでしょうか?

 怖いんですが……芋けんぴを握り潰して欠片を飛ばさないでくれませんかねえ。


「昼飯でも食おうか。 ラーメンくらいしか無いけど」


 とりあえず、方針は決まったことだし。



 さて、俺は今、巻山の登山道を登っている。

 坊さんが大百足を封じたっていう所だ。

 なんで此処に来たかというのは、大百足の様子を見る為である。

 先ほど、何とかする事に決まったが、先ずはどういう状況かを、確認しようという事になった訳だ。

 今更ながらの話であるが、今回の勇者帰還による異世界転世の影響は、勇者を始めとして霊力を持つ者が現れる。

 そして、妖怪変化のような魑魅魍魎が、目覚めて出現するというものだ。

 ただし、出現するには元ネタなり何なりが必要で、この近辺については古戦場でもなく、開かれたのが最近ということも有り、呪いの沈殿や厄いネタが、そう多くは無いらしい。

 つまり、現地由来のモノは少なく、在っても先代勇者が変異期間中にはっちゃけたせいで、殆ど綺麗に片付いているそうだ。

 お陰で注意するべきなのは、その勇者が異世界から持ち込んだ、蛇、大蜘蛛、大百足という事になる。

 この三つについては、迷惑被った先代の基準点、つまり坊さんが頑張って動いたせいで、勇者の討伐を見ずに変異が終了。

 もしかすると、俺と同じように勇者に危機感を持った坊さんが、勇者をどうにかしちゃったせいという可能性もあるけど。

 そして、その三つの内、蛇については問題解決。

 まさか、押しかけ女房とかな話を、持ちだされるとは思わなかったが。

 ついで、大百足についてだが、こちらも巻山にて封印と言う、妖精さん情報が残っていた。

 謂れもあるし、間違いないだろう。

 こちらは力技というか、要石で頭を押さえて封印という手段を取っているのを見るに、交渉では上手く行かなかったようだ。

 最後の蜘蛛については、情報がないので良く判らない。

 なので、場所の確定している、大百足の方を見に行く訳だ。

 訳なのだが、実の所、すっごく後悔している。

 この山、ハイキングコースになってるくらいに、ソコソコ険しい。

 何の用意もせずに、いきなり登ってきたのを、道中の半分を越えたくらいで、間違いだったと気付いた。

 戻るか進むか、それを考えた時、もう一回ここまで来るのが面倒になって、結局あきらめて登っている。

 それが正解だったかは判らないが、二度と来たくないのは間違いない。

 できれば、今回で片付いてくれると凄く嬉しい。

 様子を見て、再度来るというプランを根底から覆して、これを最後にしたい。


「おお、展望台が見えてきた」

「要石は、一番奥の広場です」


 フォウさんの言葉に、足早に展望台へのルートを進む。

 スペースは三つあり、手前二つは山肌から張り出した、丸太で組まれた展望スペース。

 一番奥は、頂上を切り開いた、広場に成っている。

 その広場の中央、そこに石碑のように縦に突き立った岩がある。

 特に謂れや歴史は書かれておらず、ただ要石と書かれた、素っ気無い案内板が置かれているのみだ。

 俺は、その近くに立ち、視覚ではない感覚を広げる。


「おお、本気で百足が居る。 これなら、山を巻けるわ」


 山を透かして、存在を見る。

 なんか、デカイ上に長い。

 二木神社では、頭の方しか見えなかったんで、実際の大きさを掴めていない蛇さん達とは比べられないが、単純に山頂を中心とするトグロの先は、確認できなかった。

 要石の真下、広場の中央に頭が封じられているが、畳大どころでは無い。

 坊さんは、こんなモノを良くぞ封印できたもんだ。


「フォウさん、こいつをどうすればいいの?」

「要石に触れて見て下さい」


 言われた通り、要石に手を触れてみる。


『zzzZzZz』

「え、寝とる?」


 勇者が帰ってきて、目覚めてるんじゃ無かったのか。


「これって、放っといてもいいのかな?」


 封印されてて寝てるなら、触らない方がいいんじゃ?


「いえ、前回の封印では、消耗していたことが、成功要因の一つだったと思われます。

 今回、消耗のない状態で目覚めた場合、もしくは勇者と戦闘状態になった場合、封印が持つかどうかは不明です」


 まあ、頭しか押さえてないしなぁ。


「だとすると、俺がどうにかしようって話だよな」

「私達にお任せくださいませんか?」

「え? 浄姫さん?」

「おお、いいけど、どうするの?」

「こうするのですわ」


 浄姫さんと清姫さんが互いに手を合わせると、二頭一身の大蛇に変じた。こちらも山を巻くに余りあるサイズで、大百足に引けは取っていない。


「って、派手なことを!! 勇者が来るって!!」


 大蛇は、要石に巻き付くと、石碑サイズのそれを、あっさりと砕いてしまった。


「なにしてんの!!」


 俺の声を他所に、砕けた石碑からは強い力が発せられていた。

 それに意識を向けると、そこには見えるだけで一メートル以上の長さのある、真黒い輝きを持つ金属

製の何かが突き立っていた。

 もしや要石は、これを守っていたのだろうか?

 それは一辺が4センチ程の四角形な断面を持ち、一番先には小さくL字の曲げがあった。

 なんというか、イメージとしては槍だろうか?


「槍?」

「釘ですね」


 フォウさんの冷静な声が場違いに聞こえる。

 そして、その釘に俺が触れようとした時、足元から揺れと恨めしげな声が響いてきた。


「誰だよう、オレの頭の上で騒いでるのはー」


 なんというギャップ……聞こえて来たのは、何か年若いキャンキャンとした女の子の声。

 オレとか言ってて、本性が大百足で、これはないだろ。


「「此処であったが400年目、この長虫めが、とっとと死ぬか、一哉様の足元にひれ伏しなさいな!!」」


 姫さん達、性格変わりすぎ。


「うがぁああ、何が何やらだけど!!

 あぁっ!! 引き篭もりの年増の大蛇!!

 箱入り過ぎて、脳味噌腐ったんじゃないのさぁ!!」

「「やかましいのよ」」

「ちょっと乳がデカイからって威張るなぁ。

 五月蝿いのはそっちだろって、痛たたたた、釘、刺さってる刺さってる!!」


 唖然としながら、この大喧嘩を脇で聞いていると、何やら麓の方から木立を薙ぎ倒して、何かが此方に向かってきている。


「何ぞ?」


 朱い槍の生えた、装甲車じみた何か……。


「百足の尻尾ではないでしょうか」


 フォウさん、ちょっとは焦ろうよ。


「恐らくは大丈夫でしょう」


 そうですか?

 うぉお、揺れる。

 思わず立っていられずにしゃがみ込んでしまった。


「「させる訳がないでしょう」」


 大蛇が、迫ってくる尻尾に向かって飛びかかる。

 しかし胴体では、此方を囲んで守ってくれている。

 大蛇は二本の首で百足の尾を絡めとると、そのままギッチリと固めてしまった。

 お互いの動きは止まったが、広場周辺の木立が偉いことに成っている。

 揺れで、俺が動けないくらいになっていたのだから、あたりまえだが。


「おお、お見事」

「今のうちに、少し痛い目に遭わせておく方が良いのでは?」


 あくまで、冷静なフォウさんの言葉。


「例えば?」

「その釘を少し押し込んでみるとか」

「なるほど」


 俺は、釘の頭に平手を向けて、一発頭を叩いてみた。


「あいたたたたたた、刺さる刺さる、刺さってる!!

 お前、なんだよ、あとで覚えて、嫌々ごめんなさい、やめて釘叩かないで」


 途中、手を振り上げたら謝りだす大百足、意外と弱い。


「それじゃあ、俺の……なんだ? 奴隷? 下僕? 違うか、ペット?

 いや、大百足って何になるんだ?

 ああ、そうだ、使い魔的な物にならないか?」

「酷いのばっかだ、スッゴい嫌だけど、普通なら絶対嫌だけど」


 そう言いながら、要石の場所に人影が浮かび上がる。

 赤い髪をおかっぱにした、なんというか短パンスタイルの忍者っぽい装束を着た、褐色肌の元気少女の映像。


「えーと、どうしよう」


 俺が戸惑っていると、周囲を囲んでいた大蛇の体がゾワリと動き出した。


「「さあさ、こんなくぎはおしこんでしまいましょうねぇ」」


 平坦で感情の死んだ声の姫さん達が、大蛇の体で釘を押し込もうとしだしていた。


「たんまたんまたんま、浄姫さん、清姫さん、駄目だって、未だ返事聞いてない」

「「こたえはきいておりませんわー」」

「何が起こってんの!!」

「恐らくは先代基準点の僧侶が、巨乳属性が無かったせいで、両者に何か因縁が「そういうのは冷静に言われても俺困るから!!」生まれたのでしょうね」

「はやく、決めろ!!」


 どうしようもない中、俺は百足に叫んでいた。


「判った判ったから、何でもなるから、このヘビたち止めてーって、いったあああい!!

 なんか麓で胴体にささってるー、いったーい!!

 また、今度は切られてる!! なに、なんなのさ、今日は厄日なの?

 オレ死んじゃうの? いーやー!!」


落ち着け暴れるな、俺が立てなくなるからやめて、ぎゃあ崖崩れてる。


「カズヤさん、名前を聞いて、誓わせて下さい。

 その後で、釘を抜いて下さい」


 わ、判りましたよフォウ先生。


「おい、百足さん、お前さんの名前を教えろ!!

 それから、俺に誓え。 そしたら、釘は抜いてやる」

「わかったよー、オレの名前は千連(ちづら)。 奴隷でも何でもなるから助けてよ」

「契約完了」

「よっこらせぃ!!」

「痛い、こじるな、真っ直ぐ抜けよ!!」


 オレは、両手で釘を持って、一気に引き抜いた。

 釘の長さは、約二メートル。

 隠れていた先は、ざっくりと尖らされている。

 これだけの金属塊、普通なら持てる重さじゃない筈なのに、重さを感じず手に馴染む。


「これは?」

「例によって名前をつけて下さい。 それで、この封印釘は、カズヤさんの物となります」

「名前ねえ……黒い要石の釘かぁ」


 急に言われてもなぁ。


「そんなのどうでもいいだろ!! オレは逃げるぞ」


 悩んでたら、百足が消えて女の子が現実化していたらしい。

 そして、その女の子、千連は取るものも取りあえず、俺の影に飛び込んで消えた。


「え? 何?」

「「一哉様、失礼します」」


 今度は姫さん達が消える。


「因みに先程から、先だっての勇者の気配が此方に向かって、近寄ってきています」


 そりゃ、この惨状だしなぁ……山上なだけに。

 冗談を言いたくなるくらい酷いことに成っている。

 此処から見えるだけでも、展望スペースのうち山から張り出していた二つは完全に崩れている。

 百足の尾が突っ込んできた方面は、木立が左右に薙ぎ倒されている。

 要石は砕かれていて、揺れのせいで広場の石畳はボコボコに。

 恐らくは、見えていないところでも、勇者が切りつけた百足の胴体のあった周辺は、酷いことになっていそうだ。

 つまり、こんな所にいたら、碌でもないことになる。


「逃げよう!!」


 勇者くんは勿論だが、他の誰かとも鉢合わせしないようにしないと。

 こんな所に居たのがバレたら、新聞沙汰になってしまう。

 っていうか、上空にヘリコプターの音がするような。


「やべ、木立に隠れないとヤバイか……水滸」


 数珠を呼びだし、広場の登り口とは反対側で無事そうな木に巻き付け、それに捕まって斜面にぶら下がる。

 それと入れ替わりに、駆け抜けるような足音が広場に辿り着いた。

 間一髪、今日の俺はツイてるのかしらん。


「なんだよこれ!! 今日で二つ目だぞ、蜘蛛切!!

 いったい、どういう事だよ」


 俺が聞きたいよ、動きが早過ぎるだろ、勇者君。


「さっきの手応えで、倒したなんて思えない。

 誰かが何かをしたんだ……一体、あんな化け物を使って何を企んでいるんだ。

 やっつけないと……この街は僕が守るんだから」


 何も企んでないから、さっさと消えろ。


「ヘリコプターか、認識阻害もこっちじゃ弱いから、あんまり長くは居られないな。

 蜘蛛切、化け物の気配はないの?

 そっか、仕方ないな、行くよ」


 勇者くんは、広場を出て駆け出していった。

 どうやらあの刀は、人間の気配は探れないらしい。

 こんなニアミスは心臓に悪すぎる。

 少し間を開けたら、さっさとこんな場所はおさらばしよう。


「あ、フォウさん。 釘の名前、『黒要(くろがなめ)』でよろしく」


 さっきから握りっぱなしだった釘に、今更だが名前をつけた。

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