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異世界転”世”(仮タイトル)  作者: 山本君
一章、妖怪退治してきた勇者の帰還
1/12

01、勇者になった朝

 勝手な話で申し訳無いのですが、色々と指摘が有り、一章をガッサリと改稿しました。

 ほとんど別物とかしておりますが、今日の内に一章は上げてしまいます。


 旧一章は、二章を開始する時に削除します。

 あまり無いとは思いますが、保存されるならそれまでに願います。

 二章も繋がりの関係上、新しく入れ替えることになりますので、そのうち削除します。

 誠に申し訳ありませんが、ご了承願います。

「勇者さまっ、どうかこの世界をお救い下さいっ!!」


 は? うぇ? 勇者様? 誰? 俺?

 夜食に円盤焼きそば作ってたら、突然何かに話しかけられた。

 やばい? とうとう俺も電波拾うような、上級ダメ人間の仲間入り?

 いやいや、きっと何かの間違いだろう。

 これには何かの仕掛けが有るはず。

 となれば、此処は冷静に対処するのだ。


「そういうあんたは誰?」


 今気づいたけど、こういう時に冷静なのは、本当に凄いやつか、ラノベまみれな思考のダメな奴な気がする……うん、駄目な方だな。


「わたしは、この世界の意志の遣い。

 もし、世界の意志を神と呼ぶのなら、天使と呼ばれるでしょう」


 天使さんか……声はすれども姿は見えず。


「じゃあ、天使さんで。 その天使さんが、俺なんかに何のよう?

 勇者様って、なんかの間違いじゃない?

 俺って、こう言っちゃなんだけど、一般人よ。

 パンピー、判る? 工業高校出て、フリーターやってるだけの。

 世間的に見ると、碌でもない方からカウントできるような奴なのよ。

 趣味に走り過ぎたら、生活費削ってヒィヒィいっちゃうような甲斐性ないやつが、世界系の話なんてとてもとても」


 なので、お引取りいただけると嬉しいですよ。


「いいえっ、貴方こそが勇者様なのです!!」


 言い切られた!?


「なんで、俺が勇者なの?

 どういう基準で選ばれたってのよ。

 才能とか、特別なんて言葉は、縁がないんだけどさ」

「貴方は世界の起点となる基準点なのです」


 基準点? 何それ?


「なんか大袈裟だけど」

「そうですね、先ずは……あ、三分経ちますよ、お湯を捨てないと」


 おっと、焼きそばがふやける。

 お湯を捨てて、と。


「わるいんだけど、先に食っちゃっていい?」

「どうぞ、お気になさらずに」


 天使さん、いい人だ。


 ……

 …………

 ………………


「ごちそうさまでした」


 手を合わせて、ゴミを片付ける。


「それでは、よろしいですか?」

「あ、はい」


 やっぱし、夢じゃなかったか。


「そうですね、基準点云々の前に、お話をしましょう」

「ん?」

「貴方は異世界転生や異世界憑依、あるいは異世界転移という言葉を知っていますか?」

「そりゃ、お話の中のことでいいなら、良く知ってるよ」


 はやりのジャンルだし。


「いま、こうも流行っているという事に違和感はないですか?」

「ファンタジーなんて、そんなもんじゃないの?

 輪廻転生とか生まれ変わりなんて、昔から良くあるネタじゃない?」

「そうですね、1980年台からこちら、転生という言葉が流行り始めています。

 ですが、それはただの流行りというだけではないのです」


 なにやら、熱の篭った天使さんの言葉だが、胡散臭いことこの上ない。


「まさか、実は本当にそういうことが起こっているからとか、言わないよな」

「いえ、本当に起こっているのです。

 西暦2000年から此方、特に顕著になっています。

 その数は2000件をこえており、今も月に2、3件は勇者召還と、それに類した事が起こっています」


 多いな!! って、それ大事じゃないか?


「そんな大変なこと、尚更俺には関係ないんじゃないか?」

「いえ、貴方じゃないと駄目なのです!!

 異世界に呼ばれそうな、特殊な因子も素質も幸運も不運も意志も動機もとくにない、現世引き篭もり気味の、なぁなぁで生きてる貴方じゃないと!!」


 舐めてんのか!! おれだって、ハーレムとかチートで俺TUEEEEEできるなら、異世界行ってやるよ!!

 多分……あれ? 面倒くさいか?


「なんか、当たってる気がしないでもないけど……それと勇者に何の関係が」

「あなたは、程々に生きてて楽しめる、この世界が好きなんですよ。

 だからこそ、この世界を壊そうとはしないし、守ろうとしてくれる筈です」


 そういう風に言われると、何か良い奴みたいに聞こえる不思議。


「でもさ、この世界を守るって、守らなきゃいけないのは、問題抱えてる異世界とかじゃないの?

 問題はあるけど、この世界は概ね平和だろ?」

「先程も言いましたが、毎月数件も居世界に勇者が旅立っています。

 それが、総て帰ってくるわけではないとしても、幾らかは使命を達成して帰ってくるわけです」


 ハッピーエンドでいいんじゃない?


「それらの帰還者は、果たして只の人間足りえるでしょうか?」

「人間じゃないの?」

「只の人間は、魔物を瞬殺したり魔法が使えたりはしません。

 そして、他の世界の因子を持ち込んでくるような存在は、この世界にとっては害悪なのですよ!!」


 ちょっと、天使さん、怖いですよ。


「更に言えば、戻ってくる時に時間をいじって、出発時と同じ時間座標軸に、イレギュラーな時間的操作をされた存在が帰ってくるのは、害悪を越えてテロ行為です!!」


 ハッピーエンドの為のご都合がバッサリだ。


「そして、何より恐ろしいのが、異世界の因子を持ち込んだことに依り、この世界が居世界の理に歪められる『異世界転世』です」

「な、なんだってー!?」


 そんな事が? いや、確かにアニメとかでも他所の世界の厄介事が、こっちの世界の破滅の危機とか招く原因って話はあるけど。


「異世界転世が起こると、文字通りに世界が異世界に転換されてしまいます。

 規模は勇者の力や、持ち込んだ因子に依りますが、最低でも一つの街。

 下手をすれば一地方が、異世界の要素に染まってしまうのです。

 そうなれば、異世界の魔物が現れたり、ダンジョンが湧いて出たり、一般の人々に変なスキルが生えてきたりします」


 頭の中に、近所がオークの集団に襲撃されたり、近所の学校やら地下鉄の駅がダンジョンになって、そこから怪物が湧いてきたり、平和な日本で安心してたら、近所の不良やらヤクザが剣技やら魔法やらで抗争して人死とか、色々なことが浮かび上がってきた。


「それって、かなりやばいんじゃあ?」


 嫌な汗が吹き出てくる。


「だからこそ、貴方の力が必要なんです!! 勇者さまっ!!」


 もしかして、これって、まじめにヤバイ話?

 この世界を守るためには、受けないとって事?

 割りと、ラノベの主人公とかって、「勢いとノリでやってるんだろ」って、思ってたんだけど、当事者になると、なんか強制力と逃げ場のなさというか、ハシゴの外されっぷりが半端ないわ。

 最初の焼きそばの件とか何だったんだよ、ゆるい雰囲気で初めて、急にそんな身近な危機に持ち込まれたら、俺はどうしていいのか……。

 大体、本当かどうかも判断できないし、嘘ならいいけど、でも本当だったら……。


「なぁ、天使さん。 天使さんに誘われて勇者に為った人って、他にも居るの?」


 居るなら、多少は信ぴょう性が……というか、たくさん居るなら、俺じゃなくても。


「そうですね、基準点として選ばれる人は少ないですが、少なくとも日本だけで現在3人いますよ。

 貴方に了承していただければ、晴れて4人目の勇者様です」


 微妙にリアルな数字が。

 昭和ライダーの時代なら、全国規模カバーできる数字だけど、平成ライダーの時代なら、活動範囲が一都市とかだからな、全然足りない数字だ。

 そんなに居ると思うべきか、それだけしか居ないと思うべきか……。


「それで、もし勇者になったとして、俺は何をすればいいのさ?」

「それは簡単な話です。

 異世界の勇者の持ち込んだ因子を回収、ないしは勇者をぶっ飛ばすんです。

 この世界を守る勇者として」


 どうやって? 殺しとか、俺に出来ると思うなよ。

 絶対無理だからな、普通の喧嘩でも、よっぽど切れないと殴り合いにはならないぞ。

 それに大体だ!!


「ちょっと待とうか、天使さん。

 この世界に置いとくと危ないような危険物を、唯の一般人がどうしろってのさ?」

「大丈夫です。

 その為の力は用意しますし、回収した因子や倒した物の幾らかは、貴方の力にすることも出来ます。

 それに元々、基準点は異世界の因子の影響は受けないので、転世変異には抵抗力が有るのですよ。

 というよりも、転世変異中に影響を受けないということは、力を持っていないと異端として狩られますよ」

「え!?」

「ある意味で私は、貴方を救いに来たんです」


 ちょっと待て!! 最低限、俺に選択肢がある話じゃなかったのかよ!!

 ここで、全部聞かなかったことにして、逃げる選択肢が潰されたぞ。


「それにもうすぐ勇者が、この辺りに帰ってきます……そう長い間、思い悩む余裕はないですよ」


 本当に待てよ!! 心臓が痛い、胃が痛い、汗が止まらない。


「ちょ、くそっ……一つ教えろ!!」

「なんです?」

「俺が勇者になって、異世界の力を手に入れたからって、それを理由に排除とか無いよな!!」


 そんなことだったら、冗談じゃない。

 使い捨てとか、最近のアニメでもありがちな話だ。


「それは勿論。 勇者になって貰うためのメリットですよ。

 いえ、正直に言うと、勇者は異世界の因子を回収・隔離してくれる、大事な存在ですよ。

 回収すればするほど、強くなり効率も上がる。

 そして、回収した異界の因子は、こちらの世界の勇者に取り込まれた時点で、こちらの世界には無害ですからね。

 ぶっちゃけると、生きた危険物処理場ですよ」


 ひでぇ、無茶苦茶だ。


「そんな事を言って、集めさせるだけ集めさせて、処分とかじゃないだろうな」

「そんな事しませんよ。

 強くなった勇者は大事ですから、強くなれば長生きして、長く使えるんですし。

 安心して下さい、寿命で死ぬまで、お付き合いしますよ」


 全く安心できないよ!!

 どこに安心の要素があったんだよ!!


「更にというのは変ですが、勇者には綺麗な妖精をサポートに付けますよ。

 彼女達は、勇者の為に働くのが使命。

 好きにして貰って構いません」


 言われて、脳裏にイメージが浮かぶ。

 黒髪ストレートロングのスレンダーな姿。

 まだ、大人に成り切れていないような儚さと、怜悧な美貌が同居している、まさしく妖精といったイメージだった。


「マジか?」


 唐突過ぎて、頭の回転が止まった。

 今の俺には望むべくもないような、高嶺の花だ……それが?


「可愛がってあげてくださいね」


 俺の心を読むかのような、天使さんの声……。

 いや、俺は了承とかしてないし、未だ決めてもないぞ!!


「でも、決めないと、変異によっては何も出来ずに死にますよ。

 ファンタジーで良くある、第一犠牲者のモブになりたいんですか?」


 逃げ場がない。

 くそ、悩む場所もない。

 それでも、考えがまとまらない。

 こうしているのが凄く辛い。

 さっさと、決めて楽になってしまいたい。

 どうせ、選択肢は潰されてるんだ。

 思い切ってしまうほうが楽だ。


「くっそ、やるよ、やってやるよ!!」

「有難うございます。 それでは、加護を与えますので……」

「うん?」

「覚悟して下さい」

「なに!?」


 瞬間、俺の中のブレーカーが落ちた。

 人間、耐え切れない苦痛や何かを受けると、意識が落ちるってのを実感した。

 覚悟したからどうにかなるってもんじゃ無かった。

 脳みそに手を突っ込まれて、何かを繋げられてる感覚とか、どう耐えろってんだか。

 いったい、どれ位の時間が経ったのかわからないまま、俺はいつの間にか終わっている地獄に感謝した。


「おはようございます。 気分はどうですか? 勇者様」


 目覚めた俺に、天使さん――俺にとっては、悪魔よりもヒデェ存在だ――の声。

 眼を開くと、そこには今まで見えていなかった、天使の姿。

 金髪碧眼、ギリシャ神話の時代を彷彿とさせる白い薄衣に身を包んだ、紛うことなき天使。

 その翼、頭の光輪、あどけない容貌と、真逆の妖艶な体。

 目を奪われるというのは、このことかと実感する。


「私が見えますか?

 勇者様には、異界の因子に対応する感覚と、ある種のマジックポイントを付加しました。

 使い方は妖精に任せれば大丈夫ですから、安心して下さい」


 何の罪もないような、なんとも総てを許してしまいそうになる、微笑みを浮かべる天使だが、さっきの苦しみは許しがたい。


「駄目ですよ、私は忙しいのです。

 それに、異世界の女神とか精霊なら好きにして構いませんので、私のことは諦めて下さいねー」


 チラリと浮かべた考えを読まれたのか、それだけ言って、天使さんは姿を消した。


「くっそ、いつか覚えてろよ!!」


 俺には、そういって毒づくことしか出来なかった。

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