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脳筋系自称TS女子による迷宮探索(仮)  作者: 脳筋女子支援の会雑用係4号
第一章「脳筋異世界に立つ」
10/13

お仕事選択なう

こっそりと投稿。

 迷宮ギルド一階は情報交換や食事処として賑わう場所であり、ある意味で迷宮ギルドにおいて最も重要と言える場所とも言える。

 初心者に迷宮とはどのような物かを分からせる為に調整された初級迷宮など、完全に攻略が終了した事で迷宮の管理権限を簒奪する事に成功した迷宮はともかくとして、それ以外の現存する迷宮はあらゆる意味で危険地帯だ。その様な場である為に情報は力となり、そして盾となる代物だ。

 同業者よりも早く迷宮の攻略を行う為に秘匿をするという考え方が一般的であるこの頃だが、しかし、情報が金になるという事も理解している者達にとってはそれは売買する事で得る利益の計算をする事で互いに利益のある──もしくは、どちらもが自分だけに利益が出る様に虚偽を交えた狐と狸の化かしあいと言うのも探索者にとってはちょっとした遊びの一つにしてビジネスでもある暇つぶしとなっている。

 そんな腹の探り合い、粗の探し合いをする探索者達の中、──説教をされている者がいた。

 説教をするのは二人いた。

 一人は希少種族である妖精にして、亜竜級討伐者の一人でもフェリエだ。愛らしいと表現されるその容姿だが、怒りに魔力を高める姿はまさしく貫禄のある探索者の一人である事が窺い知れる迫力を有していた。

 もう一人はギルドの新人受付嬢として活躍するフランドルだった。白いかんばせを朱に染めて、常に鋭い眦を更に高く上げた彼女の姿は小動物チックな姿をしていようとも十分な怒りを感じ取れる程、狂うかのように燃え盛っていた。

 対して、現在正座をして二人の間で説教を受けている女はと言えば、別段普段と変わらない無表情のまま、しっかりと二人へと視線を向けたまま美しい姿勢を維持していた。

 本人としてはしょんぼりとしているつもりなのだが、現実は残酷で、それはまるで二人の言葉を聞き流しているかのような、興味がないと態度で表しているかのような徹底した無表情だった。いっそ本人よりも叱られているのを遠巻きに見ている探索者やギルド所属のウェイトレスの方が緊張しているように見える。

 

「いきなり街で破壊工作をするとは何事だッ!?」

「スラムの一角が消えた事よりもお金の心配とか舐めてるでしょあんたッ!?」

「いや、金がなければ食事も出来ないので真剣だ」

「そこがふざけてるって言ってんのよおぉッ!!」


 そして何より天然で発言が色々と問題アレだった。最早挑発にしか聞こえないが、しかし当の本人は真剣だ。

 何故か、食に対してのみ異常な程に執着と言うか、妄執している節のあるジョン・ドゥと名乗る女は、街の一角で犯罪集団を消し飛ばした事よりも今日の晩飯の心配ばかり話して結局話は進まない。──何度も言うが、本人に悪気はないのだ。ただ質問者と、回答者の言葉の相性が致命的に悪いというだけで。

 一見すると不毛に感じる一方的な説教劇の裏には彼等なりの思いやりがある。

 分かり易く言うなら、常識がないのだこの女は。

 どのような無法地帯にいたのか、弱肉強食、食物連鎖、肉体言語を地で行く危険物。

 これがまだ見た目で危険と分かる要望ならまだ救いがあったが、これまた立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と言った超然とした美女である。

 下卑た男は黙ってはいないのは目に見えており、おまけに警戒心も薄い事も相まって美術品の形をした爆発物かなにかのようだ。

 これでは女、もといジョン・ドゥの為にはならないし、何よりもいつか巻き込まれる未来しか見えないフェリエとしては現段階で少しでも釘を刺しておきたい気持ちもあり、今回本気で怒りに身を任せて吠えるという演技をしていた。

 対してフランドルもジョン・ドゥの身を案じる思いが多少あり、いくら勇者が気絶して三日程起きれなかったという曰く付きの肉体改造を平然と戻ってきた化物とは言え、同じ女であり心配もするし、何よりも街の衛兵として必死に働いている姉の負担になりそうな輩はなるべく減らしたいフランドルとしても今回の件は目に余ったのだ。

 なのでいい機会だと、犯罪集団を破壊した事で生じた懸賞金の件を伝えるのは後回しに、しっかりと常識を叩き込むべき怒声を上げていたのだが。

 

「すまなかった、──ところで迷宮探索を行うので説明をお願いしたい」

「だからッ、──そう言う所が問題だって言ってるのよッ!!」


 どうにもそれは難航するようだった。



 ◆

 

 朝っぱらにギルドから呼ばれたと思ったら、いきなり説教をされたでござる。

 いや、まあね。一応私が悪いっていう理屈は分かるのよ。だってほら、人命云々は、まあ、置いておくとして。器物破損はいけないから。

 でもそれにしたってこちらは加害者側じゃなくて被害者側だし、そもそもゴングを鳴らしたのは彼方さんの訳で。

 私は悪くねぇ!! ──なんて言える訳もないんですよね、はい。

 なので釈然としないけれども一応謝りました。ええ、器物破損してすみませんでした。ただし死亡した方々の命に対しては謝らない。

 ……もったいなかったなぁ。財布抜き取ればどれくらいになったんだろう。少なくとも食事代くらいにはなった筈。

 まったく、迷惑を掛けるならそれ相応の物を遺して逝ってほしいものだ。私だって暇なわけじゃない。

 

 まあ、それはそうとそろそろ仕事の話をしよう。一回目切り出した時は更に怒られたけど。……なんでだろう。結局最後まで分からなかった。

 とにかくフランドルが座るカウンターに足を運んで、迷宮探索するからお金になる仕事をくださいと頼む。

 それに対して、青筋を浮かべたまま、無言で書類をいくつか選んで見せてくれた物は、読めないけど、多分迷宮について書いてあるんだろう。

 ……これ、なんというかアレだなぁ。文字と言うより記号っぽい。これなんて@みたいだし。

 まったく読めないよこんなん。せめてアルファベットでお願いしたい。もしくはグーグル翻訳をください。

 

「……すまないが説明してほしい」

「……別にいいけど。やっぱりあんた字が読めないのね」

「ああ、異国の言葉は難しい」

「そのくせ普通に喋れるのね」


 ……はっ。

 そう言えばどうして文字が読めないのに言葉が理解できるんだろう?

 深く考えた事なかったけどめちゃ不思議、と言うか本当になんで? 神様から色々と籠と言うか、寵愛とかもらってるけどそれが関係してたり?

 まあ、別段困る事じゃないから気にしなくてもいいよね? 考えるな感じろ、──それが世界のマイルール。

 

 とまあ、割と重要そうなどうでもいい話は置いておくとして。

 問題は現在説明されている三つの迷宮の詳細を聞いてどれにするかだ。

 

【洞窟型】螺寒の氷窟(推定LV5パーティ/防寒装備必須)

採取可能アイテム/解けない氷、不凍液、ユキノシダケ、etc

出撃魔物/イエティ、雪童、氷の低位精霊

※現在洞窟最奥まで辿り着いたパーティなし(食料問題、防寒対策が原因)


【森林型】熱帯雨林(推定LV4パーティ/防水装備必須)

採取可能アイテム/パラメッツ、アメットクラブの血、吸水樹、etc

出撃魔物/ピラニヤン、マングローパー、スライム、etc

※現在森林最奥まで辿り着いたパーティなし(磁石無効、森林の移動が原因)


【塔型】崩落灯台(推定LV15パーティ)

採取可能アイテム/灯の欠片、ルドガーダケ、薬草、etc

出現魔物/ガイスト、コールゴーレム、雷の上位精霊(逃走推奨)、etc

※現在塔内部4階以上まで辿り着いたパーティなし(危険度に対して利益が少ない事が原因)



 ……すいません、これ選択肢が全て死亡フラグに見えるのは気のせいでしょうか?

 と言うか推定レベルの単位がパーティ、私ソロ。──やめろ、二人組作ってだけは本当に勘弁してください。

 そもそもレベル届いてないから。あからさまにレベル差が激しいから。

 これはアレですか。遠回しに嫌われてる?


「すまないが、進める理由を教えてほしい」

「フェリエが有能だって言ってたから塩漬けされる迷宮を押し付ける為に進めたわ」


 よかったッ!! 嫌われている訳じゃないらしい。

 それなら此処でポイント稼ぎ頑張ろう。ポイント稼いで仲良くなったら頭撫でても怒られないかもしれないし。

 何より可愛い子に頼られるってすっげ嬉しいからしょうがないね。


「成程、──<崩落灯台>から行くとしよう」


 ちなみに理由は金がないから。防寒装備、防水装備? そんなの用意する余裕なんてない。むしろそんなの用意する余裕があるのなら私はご飯を食べたい。

 でもお金も残り少ないので今回は食べません。大丈夫、絶食しても1日は割と持つ。一日5食食べないと死ぬデブとは違うのだよ、デブとは。──まあ、そんなの戦争大好きな樽体系(バレル)・サイボーグだけだと思うけどね。実在したらびっくりだ。

 

「……進めておいてアレだけど、あんたレベルいくつなの?」

「2だ」

「馬鹿なの」

「否定は出来ない」


 生憎とテストのいい点が最高で85点だしな。ちなみにこれ小学校の頃です。

 基本的に身体を動かす方が好きだから勉強なんてあんまりしてない。問題ない、だって家神社だし。

 神社を維持するのに全力を尽くせば問題なかったよ。ただし人前に出るなって前置きをされてたけど。──なんでだっけ?

 何というか、相変わらず記憶があやふやだけどまあ、今はいいや。

 

「まあ、最初にレベル聞かなかった私も悪いか。別のに変更するからちょっと貸しなさい」

「いや、コレでいい」

「はぁ? 死にたいの?」

「いや、──強くなればいいだけだろう?」


 何故か目を見開いたフランドルから離れ、転送ポータブルに移動する。

 さてさて、今回はどんな場所なんだろうか。食べ物があるといいんだけどなぁ。

 

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