☆ ☆ ☆第97話 黒猫
残酷な描写があります。苦手な方はご注意ください。
両親が寝静まると純は家を抜け出した。
時折走り去る車のヘッドライトを見送って、どこへ行こうかと思案していた時だった。
目の前を黒猫が通り過ぎる。その姿は純の家で飼っていたクロに瓜二つだった。興味を惹かれ、黒猫の後をついて歩くことにした。
黒猫は迷いなく住宅地を進み、しばしば純を確認するように振り向いた。猫に導かれるままたどり着いたのは、建設会社の廃材置き場だった。
黒猫がここまで誘導してきたのはなぜだろう、と周囲に視線を向けながら考えていると、重機や廃材の陰からぞくぞくと猫が集まりはじめた。
噂に聞く「猫の集会」というものだろうか。興味深く眺めていた純の目に入ったのは、黒猫の首輪だった。
赤い首輪に付けられたチャームに見覚えがあった。それは純の家のクロが付けていたはずの……――。
周囲にいた猫たちが一斉に鳴きだした。その姿は徐々に崩れ、血にまみれていく。
道端の小石を拾い、叩きつけるように猫の頭へ投げつける。猫は悲鳴をあげ、血を流して倒れ込む。そんな映像が頭をよぎった。
それはクロが純の部屋で粗相した後の記憶だった。クロはそのまま動かなくなり、道路に投げ出されたままの亡骸は翌日には車に轢かれ原型を留めていなかった。
川に沈めた子猫やエアガンの標的にして遊んだ猫。他の猫たちも、純が苛立ちを紛らわせるため手にかけてきたものたちだった。
「……な、なんだよ」
自分を取り囲み不穏な鳴き声をあげる猫たちに、純は思わず後ずさりする。
鋭い爪が月光に輝いた。
クロが純に飛びかかったのを皮切りに、他の猫たちも次々と純に爪や牙を向ける。
後に残されたのは、原型を留めない肉塊だった。