☆ ☆ 第87話 同窓会
「いやー……久しぶりに嫌なもの見ちゃった」
友人のA子がそう漏らしたのは、同窓会の帰り道だった。十年振りに会ったとは思えないほど盛り上がった同窓会だったが、A子が言わんとするのが何のことか予測はついた。
同窓会で久々に再会したYの様子が少々おかしかったのだ。
Yは去年の夏に夫と死別し、今は彼の残した遺産で生活しているらしい。夫の職業について詳しい話は聞けなかったが、彼女の服装を見るに死別してから一年以上経っても生活には困らない程度の遺産があるようだ。
しかし、A子の顔色を見るにどうやらそれだけではないらしい。彼女は昔から霊感があり、今はそれを活かすような仕事をしていると聞いていた。
私は気になったのでA子が見た「嫌なもの」について尋ねてみた。
「Yの旦那さんね、一緒に来てたの」
「……え? 一緒って……」
「Y、何か宗教でもやってるのかな。周りに白い人がいっぱいいたの」
A子曰く、その「白い人たち」が亡くなった夫の霊魂を取り囲んで逃げられないようにしているらしい。それは素人が簡単にできるような呪術ではなく、宗教団体のような大きな組織が裏で絡んでいる可能性が大いにあるのだという。
「まあ、今回は依頼を受けてるわけでもなんでもないから対処しないけどね」
そう言って苦笑したA子の顔には、淡い憐みの色があった。




