☆ ☆ ☆第85話 おまじない②
残酷な表現があります。苦手な方はご注意ください。
思いのほか簡単に自分の思惑通りの行動を起こした同級生に、リナは驚きつつもこみ上げる笑いを隠しきれずにいた。
名前も知らない地味な彼女が、学年一の人気者であるケントと両想いだなんて許せない。そんな思いから、丑の刻参りに使う藁人形とひとりかくれんぼを混ぜたでたらめな「おまじない」をけしかけたのだ。
彼女は木に引っかかった人形の回収を、リナに任せて部活へ行ってしまった。どうやって人形を手に入れようかと頭を悩ませていたリナは、拍子抜けしつつも人形を回収して帰宅した。
人形は木の枝に擦れてところどころ糸がほつれていた。その足を、一本だけ鋏で切り落としてみる。歪になった人形に急に罪悪感が込み上げ、クローゼットの奥へ押し込んだ。
翌日、彼女は学校を休んだ。部活の途中で足を怪我したらしい。
思っていたよりも人形の効力が弱く、帰宅後にリナは残った足を切り落とした。
翌日は右腕、そのまた翌日は左腕と毎日一本ずつ手足を落としていく。あの日以来、彼女は学校に来ていない。
そして、とうとう切り落とすものがなくなった人形を見つめ、リナは薄く笑った。
台所へ向かい包丁を手に取る。これで人形の腹を裂くつもりだった。そこへ、母親が声を掛けてきた。
「リナ、あのお人形どうしたの」
気持ち悪い、と顔をしかめた母親にリナは詰め寄った。呪いは人に見られたら失敗だ。失敗すれば呪いは自分に返ってくる。
「……お母さんっ!」
人形を切りつけるつもりで手にしていた包丁は、気が付くと母親の胸に突き刺さっていた。