☆ 第81話 女優M
テレビを見ていた祖母が、突然「あら。この人ったらまだこんなことしてるのね」と感心したように呟いた。その視線の先には新人ながら高い演技力があると話題の新人女優・Mが映し出されていた。
「ばあちゃん、この人はわかるんだ?」
最近の女優はわからないというのが祖母の口癖だったので、Mのことを知っているのは意外だった。
「わかるも何も、一緒に写真だって撮ってるよ」
そう言うなり、祖母は古いアルバムを引っ張り出してきた。そこにはセピア色を通り越して茶色に変色したモノクロ写真が張り付けられていた。その中の一枚を指で指し示す。
そこに写っていたのはMそっくりの女性と少女だった。少女の方は若かったころの祖母らしい。他人の空似かと思ったが、祖母は写真の女性の首筋を指し示す。そこには痣のようなものがあった。
「化粧で隠してるみたいだけど」
そう言って横目で見遣ったMの首筋にもうっすらと同じ痣がある。他にも江戸時代にそっくりな花魁がいたという噂もあり、祖母が子供の頃には有名な都市伝説だったらしい。
「ありゃ人間じゃないよ。狐狸妖怪の類だ」
祖母の言葉とMの顔は脳裏に焼き付いてしばらくの間消えなかった。