☆ ☆ 第73話 除霊
高一の冬、同級生の佳奈美に家に遊びに来ないかと誘われた。小中高と同じ学校で何度か同じクラスにもなったが、直接話したのはそれが最初だった。戸惑いながらも、私はその誘いを受けることにした。
約束当日。佳奈美の家には彼女の取り巻きのメンバーも勢揃いしていた。
「それじゃ、始めるわよ」
言うが早いか、佳奈美は部屋の鍵を閉めた。そしてグラスに注がれていた液体を私に掛ける。取り巻きたちもその行動をまねした。
「……っ、お酒!?」
「白坂さん、あなたに悪霊が取り憑いてるのが見えるわ。私が祓ってあげる」
取り巻きたちへのパフォーマンスのために、まんまとはめられたのだ。呆然とする私をよそに、佳奈美はお経を唱え始める。
しばらくすると、部屋の物がガタガタと動き出した。グラスは床に落ちて割れ、大きな音を立てて照明の電球が弾けた。
驚きのあまり取り巻きの一人が意識を失う。それでも佳奈美はお経を唱え続け、ポルターガイストは激しさを増した。
気が付くと佳奈美の様子がおかしくなっていた。声は低くなり、話している内容は不明瞭。目も虚ろで明らかに憑依された人間のそれだった。
怯えた取り巻きは悲鳴を上げ、部屋は阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。
「――……これだから自称霊感のある人って嫌なんだよなぁ」
ぼやきながらポケットの数珠を取り出す。部屋に溜まった雑多な霊たちを片付け、取り巻きたちに憑いていたものも剥がしてやった。部屋が落ち着くと、安堵からか彼女たちは次々と意識を失っていった。
翌日、佳奈美は学校を休んだ。まあ、霊感があって除霊もできる彼女のことだ。自分で呼んだものくらい自分で処理できるだろう。