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  ☆  第71話 逆罰(サカバチ)

 神社の境内に一人の男が佇んでいた。財布の中身に視線を落とし、硬貨を握りしめると賽銭箱に投げ込んだ。がらんがらんと鈴を鳴らし、手を合わせて(こうべ)を垂れる。

 この場面だけ見れば、ごく普通の参拝者と変わらない。男が口にした願いを除けば。


「明日までに百万……いや、せめて五十万」


 借金に追われた挙句、藁にも縋る思いで神頼みをしに来たのだ。今のご時世、こんなことをする人間がどこにいるだろう。――と、男の表情が変わる。

 自分の他に神頼みをする人間がいないなら、神様が気まぐれを起こして助けてくれるかもしれない。


「神様仏様お犬様、猫でも狐でも狸でも何でも構いやしねぇ。借金返してパーッと遊べるくらいの金を恵んでくれ!」


 躍起になった男は、より激しく鈴を鳴らして怒鳴り散らすように願を掛けた。すると、男の家がある方角で目が眩むほどの閃光が瞬いた。次の瞬間、轟音が鳴り響きそれが落雷だと知る。慌てた男は飛んで帰ったが、そこで待っていたのは落雷の衝撃で炎上する自宅だった。




 駆け付けた消防の努力も空しく、男の家は全焼した。不幸中の幸いは周囲の家に被害が出なかったことだろう。

 惨状を見た借金取りは返済期限に幾分かの猶予を設けてくれ、その間に火災保険がおりたのでどうにか借金だけは返すことができた。とはいえ無一文になったことには変わりない。

 苛立ちをどこにぶつけようかと考えた時、真っ先に浮かんだのはあの神社だった。




「救いを求めて来たのに、逆に窮地へ追い込まれたぞ。どうしてくれる」


 責め立てるように言った男へ神主は微笑んで返す。


「うちでお祀りしている神様は嫉妬深い方ですので」

お題提供:電咲響子さま

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