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  ☆  第7話 赤鬼

 彼が越してきたのは、私が小学校三年生のときだった。


 彼は大人しく、目立つのが苦手なタイプだった。そのせいか、クラスのガキ大将は彼をからかいの対象にした。たちの悪いいたずらも何も言わず、ただそれに従う。

 不憫に思ってはいたが、標的がこちらに向くことを恐れて止めることはできなかった。

 そんな彼が、一度だけ反抗した日があった。




 あれは確か、雪がもうすぐ降るとか降らないとか言っていた頃だ。

 その日、彼は新しい服を着てきた。当時流行っていたアニメのキャラクターの絵がプリントされた、なんてことないトレーナーだった。でも、彼はその服が大層気に入っていたらしく、熱心にプリントを見つめていた。


 ガキ大将の家はあまり裕福ではなく、着ているものはお下がりばかりだった。よほど羨ましかったのだろう。図画工作の時間に、偶然を装い彼の服に絵の具を付けたのだ。


 故意であったことは、ガキ大将の意地悪い笑顔から見て取れた。

 気付いた者たちが顔をしかめる。そこからは瞬く間の出来事だった。 


 彼がガキ大将に掴みかかったのだ。先生に止められてもなお、ガキ大将を殴り続けた。

 そんな彼など、今まで誰も見たことがなかった。幼い私には、その時の彼の表情が鬼のように見えてとても恐ろしかったのを鮮明に覚えている。


 彼のことを思い出したのは、きっと小学校のクラス会があったせいだろう。彼はクラス会には参加していなかったが、聞くところによると警察官をやっているという。

 彼は赤鬼と言うあだ名で同僚や後輩達からも恐れられているという話を聞いたとき、私は苦笑しながらも妙に納得してしまったのだった。

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