☆ ☆ 第69話 砂場②
※こちらは「第68話 砂場①」の後日譚となります。未読の方は先にそちらをご覧ください。
件の落とし穴の話は、ほんの少し前まで記憶の中に埋もれていた。
私の実家へ行った際、あの公園に遊びに行った娘が大泣きして帰ってきたのがきっかけで記憶が一気に蘇ったのだ。
娘は、砂場で遊んでいたら何かに足を引っ張られたのだという。公園にはその時娘一人しかおらず、驚いて逃げ帰ってきたらしい。
泣きじゃくる娘の足首には、子供の手のような形の痣がくっきりと残っていた。
その手のあとを見た時、ふっと記憶が蘇ってきたのだ。まさか、あれはまだ砂の中にいるというのだろうか。
それから半月、弟と連絡を取る機会があり、思い出話ついでにあの落とし穴の話をした。
「だから、違うって言ってるだろ」
弟が苛ついたように指摘したのは、二軒隣の男の子のことを言った時だった。
「あれは俺たちの弟だ」と弟は言い張るのだ。
しかし、きょうだいは私と弟の二人きりだ。お互いに譲らず話は平行線になりかけたが、その認識にずれがあった他は記憶が一致した。
やはりあれは現実にあったことなのだ。
ただ一つ残るわだかまりは、私も弟もあの子の名前を聞いた覚えがないことだった。
私たちは本当に、一体何をあの穴に落としてしまったのだろうか。




