☆ 第60話 ハンドスピナー
小学生のいとこたちが収集し、無心で回し続けていたハンドスピナー。色、形、材質、重さ。キャラクターのデザインがされたものや、光るものもある。それぞれがぞれぞれに個性を持っているが、遊び方はただ回すだけ。宿題そっちのけでひたすら回し続けていれば当然飽きるだろう。
叔母が捨てるつもりだったそれを、僕はほんの気まぐれから引き取ってしまった。
しかし、こんなにも沢山あったとは。机の上に並べると、改めて数の多さを実感した。
気まぐれに一つ、二つと回してみる。全てが回っている光景はきっと壮観だろう。期待しながら回していくが、見るからに安っぽいものはすぐ回転力が弱まって止まってしまう。どうやら回す順番も重要らしい。
両手を駆使して金属製のものから順に回していく。ここまでで約半数。このままのペースで回り続けてくれれば、すべてが同時に回ることも不可能ではない。
希望を見出したその時だった。指先に鋭い痛みが走る。スピナーの一つがガタガタと揺れながら他のスピナーに衝突し停止した。
緊張が緩んで手がぶつかったのか。理解した僕の視界に、赤い液体が映った。
――血だ。でも、なんで。
混乱しながらも指を見遣る。スピナーに当たった指は切れ、血を滴らせていた。
止血しているうちにしらけてしまい、スピナーはすべて元の袋へ乱雑に放り込んだ。そこへ、叔母から電話が入る。
「うちの子ったらおもちゃにミキサーの歯を混ぜたかもっていうのよ。悪いけど確認してもらえる?」




