☆ 第57話 映画
一週間という長期休暇を持て余した私は、映画好きな友人からオススメのDVDを借りることにした。
大量のDVDの山から、適当なものを選び取る。聞いたことのないタイトルだ。
再生してみると、カップルが仲睦まじくデートを重ねるだけの単調な作品だった。素人の私から見ても撮影技術がそう高くないことは明白で、それでいて演出が悪趣味だ。
公園を散歩するシーンでは全身黒ずくめで手足が針金のように細長い男。海辺のデートでは手招きをするように海面から伸びる無数の青白い手。帰りに通ったトンネルには赤いワンピースの女が佇んでいた。
極めつけはラストシーン、二人の結婚式。最後の最後にブーケトスをするが、ブーケを受け止めようと集まった女性たちの後方で鎌を持った骸骨がじっと花嫁を見つめていた。
その後、エンドロールが流れることもなく映画は終了した。
ホラーではないようだが、どうにも後味が悪い。
この作品を勧めた意図を友人に連絡して聞いてみた。すると、そんな映画は観たことがないという。
インターネットでタイトルを検索するが、該当するものは見つからず、代わりにひとつのサイトがヒットした。
そこは心霊スポットをまとめたサイトだった。国内外関係なしに、乱雑に写真を掲載しているらしい。その中に、見覚えがある景色があった。
気になって色々なページを調べてみると、映画に登場した公園や海辺、トンネルはもちろん。結婚式場や、その映画に登場したすべて場所がそのサイトに掲載されていた。