☆ ☆ 第50話 手向ける少女
ある日の学校帰り、僕は赤黒い色の花束を抱えた小学校低学年くらいの女の子と出会った。彼女は薄紅色のワンピースを身にまとい、満面の笑みで跳ねるようにこちらへ向かってくる。
友達の誕生日会にでも行くのだろうと微笑ましく眺めていると、交差点に立つ電柱の横で足を止めた。
女の子はおもむろに屈みこむと、花束を供えて手を合わせ始めた。
ここで事故があったという話なんて聞いたこともない。どういうつもりだろうと女の子を凝視し続けた。
女の子は一心に黙祷を捧げていると見え、微動だにしない。
そして、気が済むと屈み込んだ時と同じ唐突さで立ち上がった。僕に気付いて、女の子が駆け寄ってくる。
――その手には、先ほどの花束があった。
気味の悪さに、僕は逃げるように走り出した。
その時。
身体を引き裂くようなブレーキ音と巨大な影が飛び込んできた。
トラックだと気付いた時には、僕は宙を舞っていた。
全身の感覚がなくなり、死が近いことを知覚する。
薄れゆく意識の中、僕の腹の上に花束を乗せる女の子の姿を捉えた。
「……あーあ、また死んじゃった。新しいお兄ちゃん探さなきゃ」




