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☆ ☆ 第49話 節穴
クラス替えで割り当てられた私の新しい席は、他の子たちの机よりも古びれていた。
天板の角はささくれ、制服の袖が擦れるたびにパリパリと繊維が千切れる音がする。おまけに穴まであった。
直径一センチほどのその穴は、天板の右手前側にあった。節穴か何かだろうか。
シャープペンの先で穴をつついてみれば、ボロボロと何かの塊が出てきた。前にこの席に座っていた生徒が消しカスでも詰めたのだろう。
授業中に手持ち無沙汰になった私は、穴の中の消しカスを掘り出すのに熱中していた。
ひだすらにシャープペンで穴をつついていると、ついに手ごたえが変わった。
ぼこりと大きな塊が外れ、その奥に空間が現れる。驚いて覗き込むと、こちらを見つめる瞳と目が合った。
驚きながら反射的に穴にシャープペンを突き立てる。
その瞬間。目に激痛が走った。
悲鳴を上げて仰け反った私に、何事かと教室がざわめく。
病院に担ぎ込まれた私は、右目の失明を告げられた。
ペンのようなもので突かれた傷が原因らしい。




