48/100
☆ 第48話 神様
「お願いします、助けてください」
私の元を訪れる人々は、口を揃えて懇願した。
私は何も答えず、ただじっと訪問者を見つめ続ける。
愚かで安直な人間たちには、その行動が試されているように感じるらしい。何度も何度も願いの文言を唱えられ、眠気が湧き上がってきた。
とはいえ、あくびも許されない不自由なこの身。必死でかみ殺したあくびで、口の端がピクリと動いてしまった。
「おおっ!」
私の反応に喜びの声が上がる。
願いが聞き届けられた合図と勘違いしているのだ。
――ある方の身代わりに座らされているだけなのに、全くおめでたい奴らだ。
腹の底で毒づき、二度と動かぬようにと自らを戒める。
どうにかして愚民どもに教えてやることはできないだろうか。
本当の神様はこの神殿の手前にある石段で物乞いをしている爺さんだ。あの人に物を恵んでやれば、それ相応の幸福がもたらされるというのに――。
 




