表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/100

 ☆ ☆ 第46話 扉

 甲高い音を立てながら防火扉が開く。きっと、誰かがいたずらでもしたんだろう。

 私は足早にその場を離れようとした。


「ちょっと」


 私を呼び止める声。振り向けば、先生がいた。


「どうして扉を閉めたり注意したりしないの」


 先生は鋭く責め立てる。

 周囲の生徒だって見てみぬふりをしていたのに、どうして私だけ……。

 呆然とする私に、皆の笑い声が突き刺さる。


 ――そうか、皆は私を悪者にしたいんだ。私をつるし上げて、笑いたいんだ。


 不信感と恐怖が渦を巻き、鉛のように胸の奥に沈殿した。

 教室の扉が開くたび、下卑な笑みが私を責める。誰も何も言わないが、思っていることは同じなのだろう。


 扉が開く。笑われる。扉が開く。笑われる。扉が――。




「駄目ェッ! 開けないでッ!」


 どうせ私を馬鹿にする気なんでしょ?

 皆見てるんでしょ? 私のこと見て笑ってるんでしょ?

 知ってるから、開けないで。私、もう嫌なの。


「ちょっと……どうしたのよ? ご飯持ってきたから食べてちょうだい」


 嫌よ。誰なの、アンタ。母さんのフリして戸を開けさせようなんて、そんな手には乗らないんだから。

 絶対に開けさせない。


 合鍵なんて使っちゃって、開けたら私、死んでやるんだから。

 私の叫びは届かず、鍵が開く。それを合図にカッターナイフを首に突き立てる。

 女の甲高い声が耳をつんざいた。


 ――……アンタ、いつまで母さんのフリしてんの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
応援よろしくお願いします。小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] 統合失調症の類でしょうか。 思い込みや過去の体験のトラウマは怖いですね。 事が起こる前に適切な対応ができなかったものかと悔やまれます。ここまで追い込まれる"私"のような人がきっと多くいるのだ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ