☆ ☆ ☆第39話 春夏秋冬
残酷な描写があります。苦手な方はご注意ください。
『イジョーキショー』って知ってる?
サンタがサーフィンをしている絵だったり、北海道が雪に埋もれている頃に沖縄や九州の方では桜が咲いたりする。それが『イジョーキショー』だと思ってた。
でも『キタハンキュー』と『ミナミハンキュー』では季節が逆になるって先生が言ってたんだ。沖縄は『ミナミ』の方にあって、北海道は『キタ』の方にあるんだって。
『キタ』は寒くて、『ミナミ』は暖かいらしい。つまり僕の思っていた『イジョーキショー』は『イジョーキショー』じゃなかったらしい。
本当の『イジョーキショー』は急に大雨が降ったり大雪が降ったり、逆にちっとも雨や雪が降らなくなることらしい。
ママには、「日本の『シキ』がなくなっちゃうかも知れないよ」と言われた。「『シキ』って何?」って聞いたら、「春、夏、秋、冬のことだよ」って教えてくれた。
春がなかったらママが好きな桜が咲かないし、夏がなかったらキャンプに行けない。秋がなかったら栗拾いができないし、冬がなかったら雪遊びもできない。
そう思ったら悲しくて、涙が止まらなくなった。そしたらママは、「『カンキョー』を大事にしてたら『シキ』はなくならないよ」って言った。だから僕は『カンキョー』を大切にするようになったんだ。
にこやかに、かつ自信満々に語るガキが腹立たしく、俺はそいつを蹴飛ばした。久しぶりに会うあいつのガキは、前にも増してうるさかった。
他人の子なんてこんなモンかとそいつの頭を思い切り壁に叩きつけたら、悲鳴をあげて、それから動かなくなった。
俺は部屋の中に貼られた『カンキョーを守ろう』というガキの落書きを丸めて捨てた。