☆ ☆ 第37話 鍵と穴
あれは、私が小学生の時のことでした。
小学校の校庭で遊んでいると、小さな鍵を見つけたのです。初めのうちは友達の中の誰かが自転車の鍵を落としたのだろうと思っていたのですが、そこに居た友人たちは皆、それを知らないと答えます。
先生たちの所へ届けに行こうという話になったのですが、友人の一人がその前に行ってみたい場所があると言いました。
渋々彼女についていくと、そこはウサギ小屋と校舎の隙間でした。よく見てみれば、子供一人がようやく通れるかどうかという幅の隙間の中に、丁度その鍵と同じくらいの大きさの穴が開いた板が埋め込まれています。
彼女は何とかそこへ潜り込み、手を伸ばして鍵を穴へ捩じ込みました。そして、手をひねると、思いのほか簡単に鍵の開く音が聞こえます。鍵は開いたのものの、ノブもついていないそれを動かすことはできません。
皆で口々に「不思議だね」と言い合いながら帰路についたのですが、鍵はその穴に刺さったままでした。
翌日、友人の一人が酷い下痢をして学校を休みました。私が見舞いに行くと、その子はおむつをしてベッドへ寝かせられています。
その様子があまりに滑稽なので思わず笑ってしまいました。友人はどうにも止まらないので仕方がないのだと言います。心当たりでもあるのかと聞くと、机の引き出しから一本の鍵を取り出しました。昨日のアレです。
彼がどうしてもその鍵を閉め直してきてくれと懇願するので、私はそれに従いました。
すると翌日、彼は嘘のように元気になったのです。
あれが何の鍵だったのか、どうして鍵を開けた子ではなく抜いた子がたたられたのか、謎ばかりが残ります。




