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☆ 第33話 ピース
ザラザラザラザラ……――。
音と共に箱の中のジグソーパズルのピースが流れていく。
二千以上あるこのピースの、どれか一つでも欠ければそれで絵は完成しなくなってしまう。そこで世界は終わるのだ。
人間はどうだろう。
幾らでも替えのきく社会に生まれ、必要がなくなれば切り捨てられる。
一つ一つのピースの存在意義がない。重要な幾つかのピースさえ無事であれば、あとは些細な歪みすら生まれ得ないのだ。
誰もがその事実を知っている。
知ってなお、自らが切り捨てられる日をびくびくしながら待っている。
本当に無力だ。
だから、僕はピースを壊す。
いつ人間の世界が破綻するのかを観察しながら。
けれど、どんなに壊したって人間界という地獄絵図は壊れない。
これこそは、というピースを壊しても、すぐに替えのピースがその穴を埋めた。
あまりに柔軟な対応力に、思わず舌を巻いてしまう。
しかし、それ故に。
「人間って、本当に可哀想」
僕は、ついさっき壊したばかりのピースを見つめながらそう呟いた。




