表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/100

  ☆  第28話 祖父の好物

 おはぎを作ったから食べにおいで、とお彼岸の朝におばあちゃんから電話が来た。

 おばあちゃんはお彼岸になるとたくさんのおはぎを作ってくれる。あんこをもち米で包んで、それをさらにあんこでくるむ特製のおはぎだ。私が生まれる前に死んだおじいちゃんも、このおはぎが大好きな人だったらしい。

 私もお彼岸が待ち遠しくなるほどおばあちゃんの作るおはぎが大好きだ。


 お彼岸の日は、最初におじいちゃんのお墓参りをする。写真で見たおじいちゃんは怖そうな人だった。おじいちゃんに怒られないように心をこめてお墓を掃除して、しっかりと手を合わせる。

 その一連の行事を終えてようやくおばあちゃんの家に向かうのだ。




 おばあちゃんの家についたらすぐに仏壇に手を合わせる。お線香の匂いは苦手だけど、お供えしてある三つのおはぎを見た瞬間にワクワクが勝った。


 お土産のおはぎをタッパに詰めてもらって、それとは別にお茶と皿に乗せたおはぎももらう。満面の笑みでかぶりつく私を、おばあちゃんは嬉しそうに見ていた。


「お仏壇のも持ってきて食べていいよ」


 私の食べっぷりを見たおばあちゃんがお供えしてあったおはぎを持ってきてくれた。ラップを掛けてあるから乾いているということはない。

 さっそく箸で半分に割って、不満の声を漏らした。


「おばあちゃん、これ中身ないよ」


 私が見せたおはぎは、中のあんこだけがなかった。真ん中が空洞になっているのだ。

 他のおはぎも割ってみると、どれも中身が消えて空洞になっていた。


「じいちゃん、あんこが好きだったから……。あんこだけつまみ食いしたのかねぇ」


 遠くを眺めて呟いたおばあちゃんの声が、妙に印象に残った。

お彼岸を題材にしたものを、というリクエストをいただき、書いてみました。

お彼岸と聞いておはぎが浮かぶ辺りに隠しきれない食い気が…(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
応援よろしくお願いします。小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] おじいちゃん(・・、)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ